「さようなら」
そう会釈をして、先輩が去って行った。
そんなに親しい間柄でも無い。
特に意識した人でも無いし、同じ空間に居たと言うだけの人だ。
でも最後はきちんと挨拶をした。
定年を待たずに、退職だ。
ありきたりの言葉を交わした後、誰かに見送られるでもなく去って行った。
これで縁は切れた・・・はずだった。
しかし年賀状などの挨拶が数年続く。
こうした関係で通り抜けて行った人は、もう何千人いるだろう。
もっといるのかもしれない。
今更道であっても、思いだせない人も多い。
1度だけ言葉を交わした人も含めると。
ただその先輩は、数年後に俺のところに尋ねてきた。
「君とは約束してたからね。私が本を書き上げると君に届けるってね」
こちらは社交辞令で話しただけだと思う。
まったく記憶にも残っていない。
だが断るわけにもいかない。
自費出版の本。
お金を払うと言っても、受け取らずに去って行った。
2年ほど読まずにいた。
埃を被った状態で、本棚の奥に眠っていた。
その先輩が癌で亡くなったと人伝に聞いて、なんとなく手にしたその本の5ページ目。。。
たぶん俺のことなんだろう。書かれてあった。
「K君という笑顔をいつも向けてくれる後輩がいる。特別に言葉も交わすこともないが、どの位置からでも彼の笑顔は目を引く。
辛い時や落ち込んでる時に、何度彼の笑顔に癒されただろう。
ただ一度、、、私が社を去る時だけ、彼の笑顔が消えていた。
私のために。。。
彼の笑顔は絶やさないでほしい。人を幸せにする笑顔。君だけにできることだから」
こんな文章に黄色の蛍光ペンが塗られてあった。
人はどこで誰に見られているかわからない。
こちらでは記憶はなくても、相手には大きな印象を与えている。
今一度、背筋を伸ばして生きて行こうと思った。
そう会釈をして、先輩が去って行った。
そんなに親しい間柄でも無い。
特に意識した人でも無いし、同じ空間に居たと言うだけの人だ。
でも最後はきちんと挨拶をした。
定年を待たずに、退職だ。
ありきたりの言葉を交わした後、誰かに見送られるでもなく去って行った。
これで縁は切れた・・・はずだった。
しかし年賀状などの挨拶が数年続く。
こうした関係で通り抜けて行った人は、もう何千人いるだろう。
もっといるのかもしれない。
今更道であっても、思いだせない人も多い。
1度だけ言葉を交わした人も含めると。
ただその先輩は、数年後に俺のところに尋ねてきた。
「君とは約束してたからね。私が本を書き上げると君に届けるってね」
こちらは社交辞令で話しただけだと思う。
まったく記憶にも残っていない。
だが断るわけにもいかない。
自費出版の本。
お金を払うと言っても、受け取らずに去って行った。
2年ほど読まずにいた。
埃を被った状態で、本棚の奥に眠っていた。
その先輩が癌で亡くなったと人伝に聞いて、なんとなく手にしたその本の5ページ目。。。
たぶん俺のことなんだろう。書かれてあった。
「K君という笑顔をいつも向けてくれる後輩がいる。特別に言葉も交わすこともないが、どの位置からでも彼の笑顔は目を引く。
辛い時や落ち込んでる時に、何度彼の笑顔に癒されただろう。
ただ一度、、、私が社を去る時だけ、彼の笑顔が消えていた。
私のために。。。
彼の笑顔は絶やさないでほしい。人を幸せにする笑顔。君だけにできることだから」
こんな文章に黄色の蛍光ペンが塗られてあった。
人はどこで誰に見られているかわからない。
こちらでは記憶はなくても、相手には大きな印象を与えている。
今一度、背筋を伸ばして生きて行こうと思った。