Kajitama News

同志社大学法学部梶山ゼミの連絡板です。

ます判例から…はやめましょう

2023-11-18 15:24:00 | 学習支援
昨日は2時間目が2年次演習。
キックオフ課題を終え、民法の事例問題に取り組んでいます。
「請求をする側」「請求を拒む側」それぞれが発表しました。

3時間目は大学院演習。
「留保所有権者の撤去義務に関する平成21年判決を素材とした修士論文を書く」という想定で、受講生2人にあれこれ調べてもらっています。
修士論文執筆作業を「体験」してもらうのが狙いです。何を調べてくるかは受講生にも考えてもらいますが、「思いつかなかった」部分は私のほうで誘導します。

そして、その後、論文指導。
ダブルディグリーのため、中国と日本で修士論文を出さなければなりませんので、このところ、テーマ選びのための作業を続けています。

昨日の3つの授業であらためて痛感したのは、「みんな、すぐ判例に飛びつくなぁ…」。

私が学生のころ、判例を調べるのは容易ではありませんでした。
データベースがありませんでしたからね。
教科書や論文で引用されている論文を手掛かりにしたり、「法律判例文献情報」や「判例体系」、その他の検索ツール(いずれも紙媒体です)を使ってリストを作り、これを一つずつ、判例集や雑誌のバックナンバーから探し出してコピーを取る…何時間もかかる作業です。

ところが、今は、データベースがありますから、キーワードを入れると、ざっと関連判例のリストが出てきます。全文もその場で読めます。
本学では、有斐閣のデータベースも使えますから、判例百選もすぐ見られます。
「◯◯白書」などの官公庁発行のものだけでなく、最近は、大学紀要もWEB公開しているものが増えましたので、そうした資料も、わざわざ図書館に行かずに読むことができます。

だからダメなんだ、もっと汗をかけ…なんて野暮なことは言いません。
便利なものは使えばいい、私も重宝しています。
ただ、便利なだけに、何を調べるにも、まず「検索」から始めがちなんですよね。
そう、だから、「判例に飛びつく」のです、いきなり。前提知識や説明なしに。

たとえば、昨日の2年ゼミのレジュメには、両班ともに、日常家事債務に関する判例を並べていました。
日常家事債務って何?なぜ、この事案でそれが問題になるの?
なんのために、そういう規定があるの?
どのような要件があれば、どんな効果が認められるの?
そうした説明は一切すっ飛ばして、似たような事案の「下級審判例」を持ってきて、「だから…」と結論づける…
もちろん、私から「ちょっと待った!」が入り、レジュメの作り直しになります。

似たような事案の判例がないと、「判例がないから、分かりません」「判例がないんですけど、何を調べたらいいですか」となるのも、データベース導入後の「法学部生あるある」です。
いや、学部生ばかりではありません。
悲しいかな、一部の大学院生にも、そうした傾向が見られます。

判例以外の参考文献はというと、「インターネットで手に入る資料」。
コンビニで売られている素材だけで、レシピもなく、調味料や調理具の使い方も知らず(かつ、調理具もそろっていない)、料理を作りましょうっていう感じですもんね。
まともな報告(料理)はできないんじゃないかな、と私は思います。

そんなわけで、昨日は、ゼミ+大学院演習等なのに、ほぼずっと「講義」をしていました。
帰宅後にぐったりしていたら、訃報や離婚、閉店、そして、本学の学長選挙の結果など、次々、「えっ、そうなの…」というニュースが飛び込んできました。
しんどい1日でした。


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