Kajitama News

同志社大学法学部梶山ゼミの連絡板です。

ついた火を消さないように…

2024-11-09 09:31:00 | 学習支援

2年ゼミは先週から、事例問題に取り組んでいます。

…といっても、2年生だから、そんなに複雑な事例ではありませんし、論点も明らか。
「取得時効と登記」の話です。
 
他ゼミのことはよく分かりませんが、
報告→討論方式なら、1回で終わってもおかしくない課題です。
でも、まぁ、そこはうちのゼミですから(笑)、私が「これってどうなん?」などと揺すぶって、少し掘り下げてもらいます。
揺すぶっても、教科書や授業レジュメ、今なら、ネット情報を読み上げるだけで終わってしまう学年もありますが、面白がり、「火がついた」状態になってあれこれ自然に展開する学年もあります。
昔は(…なんて言葉を使うとダメなんですが笑、それでも敢えて「昔は」といいます)、わりと、後者が多かったんですが、いつの頃からか、前者が増えました。
 
火がつかないなら、つかないなりに、通常の「講義科目」のように、淡々と必要なことを学べばよいだけです。
最初の頃はなかなか火がつかなくても、急に火がついて…という展開もあります。
ま、稀に、その逆もあって、それはもう、私の運営のまずさを反省するしかないんですが…
 
さて…
火がつくかどうか、あちこち展開するかどうかは、学生たちの成績と直接関係があるわけではありません。
ただ、その問題に関する基礎知識がある、つまり、「準備」してきていることは前提で、かつ、「意欲」には大いに関係があります。
成績が抜群によくても、試験に必要な知識を効率よく身につけたい、教員の仕事は「答え」を教えることだと思っている人は、調べること、議論すること、判例や有力学説以外を知ることに意欲がありません。むしろ、「答え」のない問題を提示されることに、不満を持つでしょう。
「そんなことやって、意味あるんですか?試験に役立つんですか?」
ま、そうやよね笑…
 
と、ダラダラ書きましたが、今年の2年生、28期生は、少し揺すぶると、いろんな意見が湧いてきます。
昨日は、たまりかねて、ホワイトボード前に出てきて説明する人と、「ホワイトボードがよく見えない」という理由で前に出てきた人が2人で議論し、なぜだか2人は「合意」したんだけど、他の人たちが納得できず…とまぁ、にぎやかで、90分があっという間に終わってしまいます。
各班に論客がいるという、あの「班わけ」効果もあるのかもしれませんねぇ。
 
ゼミが終わり、教室を出たところで、「あんなこと、よく思いつくよなぁ…」などとゼミ生同士が話していました。
彼らは、にぎやかなやりとりを見ていた側なんですが、毎回刺激を受けるらしく、「すごく面白いです」。
そりゃ、よかった…
 
学生が持ち寄った「点」の知識をつなげて「線」や「面」にしていくのが、教員の役割だと思っています。
何度か紹介していますが、私の理想の授業はこれ。
 

理想的な授業 - Kajitama News

クリスマスイブです。皆さん、どんなクリスマスを過ごしているのでしょうね。私は、昨日、息子に付き合って、京都大学総合博物館のイベント「生命の歴史の立体絵巻を作ろう...

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せっかくついた火を不用意に消してしまわないよう、見守ります。



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違憲判決が出ました

2024-07-03 20:31:00 | 学習支援

昨年、26期生が取り組んだ問題について、今日、最高裁が判断を示しました。

旧優生保護法のもとで、障害のある人などに強制不妊手術が行われていた問題です。
 

【更新中】旧優生保護法は憲法違反 国に賠償命じる判決 最高裁 | NHK

【NHK】旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが国に賠償を求めた裁判で、最高裁判所大法廷は「旧優生保護法…

NHKニュース

 
最高裁は、旧優生保護法が違憲であることを示しました。
一応?!民法ゼミですから、26期生が
検討していたのは旧724条の「除斥期間」のほうでしたが、これも適用なし…なんと、あの平成元年判決が変更されました。
 
ということで、早速、ゼミのチャットに送ったら、26期生から、いいね!がいっぱいついてました。
だって、26期生は途中から、立場を分けての討論をやめて、「どうしたら、請求が認められるか」を探り出したもんね(笑)…
そりゃ、いいね!ですよね。
 

今日は葵祭…のはずが… - Kajitama News

5月15日は葵祭。普段、下鴨神社のそばを通って大学に行くので、この日はルートを変えなければなりません。前日から、「明日は北大路から烏丸に抜け、烏丸通を南下して&helli...

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さて、朝ドラでも、今朝は憲法適合性が話題に…
尊属殺重罰規定に関する最高裁昭和25年判決です。
主人公を法曹へと導いた穂高先生こと穂積重遠は、真野毅とともに違憲を主張しますが、多数意見は合憲、
中高の教科書に載っている違憲判決が出るのは、23年も先の話です。
 
ところで、朝ドラを見ていて、登場人物のモデルも把握している人は、改めて、昭和48年判決の裁判長名を見て、「あ!」と思うかもしれません。
そう、たぶん、ドラマでも、この違憲判決は取り上げるんじゃないかと思うのです、たとえ今は少数であっても「声をあげること」が変化をもたらす例として…
 
昨日の朝ドラでは、最高裁初代長官の星先生(モデルは三淵忠彦)の言葉が胸に沁みました。(法職講座のXで紹介しています)
いわく、
改正されたばかりの家族法は、現実の生活より進んだものを取り入れているから、
それが社会に定着するには工夫や努力が要るし、時間もかかる、人が作ったものだから間違いもある、古くもなる、と。
戦後、民法改正によって、新しい家族の形が示されました。
今、「家族」の形はさらに変わろうとしています。
今週からの学年共通テーマ、じっくり考えて欲しいと思います。

(追記)7月3日21時半
裁判所ホームページに、判決文が出ました。

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あぁ、そういうことか!

2024-06-11 12:06:00 | 学習支援

昨日、卒業生と話していたとき、
仕事の傍ら、法律の勉強をしていて「あぁ、そういうことか!」と思うことがあり、今更ながら法律の面白さがわかってきた…という話が出てきました。
ええ話です。

 
法律学って、面白さに気づくまでに少し時間がかかる学問のような気がするのです。
準備運動が長く、かつ、一つ一つの動作がやや複雑すぎて、準備運動だけで疲れてしまうというか、準備運動を覚えることが目的になってしまいがち、というか…
複数の動作にはひたすら、一から丸覚えしようとすると大変だけど、
「あぁ、これは脚の筋肉を動かすんだな」とそれぞれの目的と結びつけながら、
「そもそも、筋肉を動かすための動作には何パターンかあって、部位によって動かし方は異なるけど、基本は同じだな」などと法則性を見出したりして、
「あぁ、そういうことか!」と仕組みに気づくと、丸覚えより楽に覚えられるうえに、
「ちょっと、ここを鍛えたいんだけど、その場合だと、こうすればいいのかな」と推測がつき、応用できるようになります。
 
この「あぁ、そういうことか!」は、経験上、人から一方的に与えられる(教えられる)だけでは身につかない…
自分で「これはどういうことなんだろう」とあれこれ考えてみて、「あぁ、そういうことか!」にたどり着く、
そうでなくても、自分でしばらく考えたうえで、誰かの説明を聞いて「あぁ、そういうことか」となる、
タイパ・コスパが悪いように見えるけれど、「あぁ、そういうことか」と自分の中で腑に落ちたものは忘れにくいですから、長い目で見れば、効率がよいようにも思います。
 
そういうわけで、私の授業では、基本的に、教室での質問を受けないことにしています。
 
分からない!→すぐ答えを聞いてスッキリしたい、という学生さんは、きっと不満でしょうね。
そもそも、大学の授業で扱う問題には万人が納得するような「答え」がない場合も少なくないわけですが、とりあえずの「答え」を今すぐ知りたい、という気持ちはわかります。
ただ、授業中はきっと話を聞いたり、メモをとったりすることに忙しく、
よほど能力が高い人でないと、自分で考えながら聞くことは難しいと思います。
レジュメが配られたり、板書やパワポが使われたり、非常に分かりやすい、多色刷り・図表入りの教科書があったりと、
初学者への配慮は格段に向上しているのですが、それでも授業を受けた直後に「全部わかったー!すっきりー!」なんて思うはずがなく(そうだとすれば勘違いです!)、
たいていは、「ちょっとモヤモヤする、分かったのか分かってないのかも分からない」状態で、その後(超真面目な人はその日の夜、多くの人はテスト前に)、牛のように「反芻」しながら、情報をゆっくり消化していく、
その過程でどうしても消化できないものが出てきたときに質問し、疑問を解消すると、「あぁ、そういうことか!」となります。
 
メッセージで質問しようとすると、面倒くさいし、正直、回答する側も「授業時間外」の対応になりますから、少し負担が重くなる…大量の質問が送られてきて、アタフタすることもあります。
でもね、文字にすることによって頭が整理されます。
もしかしたら、レジュメを見返しながら書いているうちに「あぁ、そういうことか!」と気づくかもしれない、それなら、それでいいわけです。
私も、回答を書くなかで、「あぁ、この順序で説明したほうが伝わりやすいかも」とか、「この情報を付け加えると、知識が広がるかも」などと気づくことがあります。
教室の限られた時間でのやりとりでは、難しいことです。
 
ちなみに、私の「民法概論」では、数年前から、授業中に「発展」と言う問いをいくつか用意して、数日後に「解説」を出す、という形で、「あぁ、そういうことか!」体験をしてもらっています。

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図書館ホームページのリニューアル

2024-02-23 15:30:00 | 学習支援
2月21日に、図書館のホームページがリニューアルされました。

ホームページトップから、データベースのタブが消えているので、「ん!?!」と戸惑うかもしれません。
法学部生は、WestLawなどのデータベースをよく利用していますからね。

現在の仕様では、データベース直結のタブが見当たりませんので、
データベースにアクセスするには、
トップページでデジタルライブラリーを選び、

この説明文にある、電子資料一覧のリンクを開いてください。
そうすると、一覧が出てきます。
アルファベット順に並んでいるのですが、この中から探すのは面倒なので、

「目的で絞り込む」のところから、「判例・法令を調べる」を選びましょう。
そうすれば、いつものとおり、判例データベース等にアクセスできます。
この電子資料一覧をブックマークしておくといいですね。


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ます判例から…はやめましょう

2023-11-18 15:24:00 | 学習支援
昨日は2時間目が2年次演習。
キックオフ課題を終え、民法の事例問題に取り組んでいます。
「請求をする側」「請求を拒む側」それぞれが発表しました。

3時間目は大学院演習。
「留保所有権者の撤去義務に関する平成21年判決を素材とした修士論文を書く」という想定で、受講生2人にあれこれ調べてもらっています。
修士論文執筆作業を「体験」してもらうのが狙いです。何を調べてくるかは受講生にも考えてもらいますが、「思いつかなかった」部分は私のほうで誘導します。

そして、その後、論文指導。
ダブルディグリーのため、中国と日本で修士論文を出さなければなりませんので、このところ、テーマ選びのための作業を続けています。

昨日の3つの授業であらためて痛感したのは、「みんな、すぐ判例に飛びつくなぁ…」。

私が学生のころ、判例を調べるのは容易ではありませんでした。
データベースがありませんでしたからね。
教科書や論文で引用されている論文を手掛かりにしたり、「法律判例文献情報」や「判例体系」、その他の検索ツール(いずれも紙媒体です)を使ってリストを作り、これを一つずつ、判例集や雑誌のバックナンバーから探し出してコピーを取る…何時間もかかる作業です。

ところが、今は、データベースがありますから、キーワードを入れると、ざっと関連判例のリストが出てきます。全文もその場で読めます。
本学では、有斐閣のデータベースも使えますから、判例百選もすぐ見られます。
「◯◯白書」などの官公庁発行のものだけでなく、最近は、大学紀要もWEB公開しているものが増えましたので、そうした資料も、わざわざ図書館に行かずに読むことができます。

だからダメなんだ、もっと汗をかけ…なんて野暮なことは言いません。
便利なものは使えばいい、私も重宝しています。
ただ、便利なだけに、何を調べるにも、まず「検索」から始めがちなんですよね。
そう、だから、「判例に飛びつく」のです、いきなり。前提知識や説明なしに。

たとえば、昨日の2年ゼミのレジュメには、両班ともに、日常家事債務に関する判例を並べていました。
日常家事債務って何?なぜ、この事案でそれが問題になるの?
なんのために、そういう規定があるの?
どのような要件があれば、どんな効果が認められるの?
そうした説明は一切すっ飛ばして、似たような事案の「下級審判例」を持ってきて、「だから…」と結論づける…
もちろん、私から「ちょっと待った!」が入り、レジュメの作り直しになります。

似たような事案の判例がないと、「判例がないから、分かりません」「判例がないんですけど、何を調べたらいいですか」となるのも、データベース導入後の「法学部生あるある」です。
いや、学部生ばかりではありません。
悲しいかな、一部の大学院生にも、そうした傾向が見られます。

判例以外の参考文献はというと、「インターネットで手に入る資料」。
コンビニで売られている素材だけで、レシピもなく、調味料や調理具の使い方も知らず(かつ、調理具もそろっていない)、料理を作りましょうっていう感じですもんね。
まともな報告(料理)はできないんじゃないかな、と私は思います。

そんなわけで、昨日は、ゼミ+大学院演習等なのに、ほぼずっと「講義」をしていました。
帰宅後にぐったりしていたら、訃報や離婚、閉店、そして、本学の学長選挙の結果など、次々、「えっ、そうなの…」というニュースが飛び込んできました。
しんどい1日でした。



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