十代の頃、
あいするものを失うのが
怖さに物をあいした
そんな思いのまま
娘が一歩、をあるいたとき
すでに
別れをしった
近所に剥製のような小型の老犬がいて
近頃みかけなかったが
晩秋になり
やっと
ちいさな敷地の
敷物のうえでひなたぼっこをしている
その家族達の老犬への愛を)
(老犬のおだやかな表情から知る
時がたち
娘が家を去った時
生まれて初めて 自分の犬を探した
あいするものは
いつか 失う日がくるのだが、
失う時までは
ともに/在りたいとねがう
吹き寄せるようにつどった家族も
いつか 消え去る
身内だけにうしなつた者の思い出が残る
身内が消え去れば、
思い出の 肖像さえきえる
が、
歴史に残らない
多くのひとびとが
私も
たった
それ、だけの 人生であっても
あるとき
だれかと、
ともに/在ったということは、
だれに知られずとも
花が燃えるように
謐かに
かゞやいている
語り継がれなくてもよい
ひっそりと 生きた
命も
命も、
必ず
煌煌とかゞやいている
H15.10.27