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#何度も読んだ絵本:ママは何でも知っている/ちいちゃんのかげおくり、鴨

2024年03月26日 16時30分46秒 | 書評のコーナー

 

何度も読んだ絵本

 

         

福岡県大牟田市唐船地区に残る大東亜戦争時の

敵機迎撃対空砲のトーチカ跡

 

>竹槍でB29は落とせない?
>そうでもなかったの、鴨。

 

B29の空襲は「こちら側がボコボコにやられたワンサイドゲーム」では必ずしもなく、そう、例えば、主な出撃基地のマリアナの部隊では27000ソーテイ(機体×出撃の数)に対して400機を失っています。特に、日本本土を攻撃した米陸軍第20空軍は、B-29、485機を失っています

而して、1945年8月15日までに延べ33000機(ソーテイ)のB29が約380の爆撃ミッションを行ったけれど、その間、512機のB29が失われ、乗員の戦死者は3000名弱ーーちなみに、ブリテン島から爆撃に出撃したアメリカのB17とB24は、ドイツの降伏までに4100名の乗員を失っています。その距離、800キロ-1100キロ。東京から山口、長崎、熊本程度。がんばって、鹿児島?ーーこの生還率については撃墜されたものより帰路洋上に落下したものが多いとされている。

 

Never in the field of human conflict was so much owed
by so many to so few.

(人類の戦いの歴史において、今に至るまで、かくも大きな恩恵を、かくも多くの人々が、而して、かくも限られた少数の人々からほどこされたことはかってありませんでした。――違いますか? ならば、国王陛下の英国空軍に栄えあれ❗ by  W. Churchill )

 


蓋し、これはひとえに「竹やりでB29を落とす!」という人々のいる地域に向けて、かつ、長時間かけて往復する--読者のあなた、あのー、今でも、乗客としてもですよ「成田―グアム-成田」往復は辛くないですか?--プレッシャーがB29の乗員に課した疲労のためと私は考ています。つまり、マクロ的には「竹やりでB29を落とす!」は効果がなかったわけではないということ。

 

[再掲]戦後責任論の崩壊とナショナリズム批判の失速

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/eb5f9dd62bb13f021d085909baf4d1d2

韓国併合の法的理解と日本の現在の指針――大沼保昭「歴史認識とは何か」にヒントがあった、鴨。

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/84e9d40e25185e0048eddf7d828db673

 

完版:保守派のための海馬之玄関ブログ<自家製・近代史年表>みたいなもの

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/a3221c77ea0add17edf737d21088cf96

 

「外交の失敗だぁー」というリベラル派の無根拠で無内容なフレーズについて

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/1d450289e5880dc28411dbc354f8bf9f

国連は「主体」ではなく「舞台」ですから🐙

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/1c0c5992d8aa4018b148fa23520e0934



ブログですからたまには<ブログ>らしい毒にも薬にもならない記事もいいかと。そう思い、お気に入りの絵本を紹介します。といっても、両著ともその筋では、各々「古典」に属するものらしいので、詳しいあらすじ(?)とかは割愛。KABUの感想だけを書いておくことにしました。






◆ママは何でも知っている
・作者:ジェイムズ・ヤッフェ(1927年-)
・早川書房(1977年);原作は1952年および1968年に発表。ただし、原作が発表されたアメリカでは単行本にはなっておらず、単行本は日本語版が世界初とのこと。実は、本書の英文テキストを全部読んだわけでないので、紹介するにも「エイヤー」の度胸が必要でした。🍎

・内容(早川書房のサイトから転記)
毎週金曜日にブロンクスのママの家で開かれる夕食会は、殺人課刑事のデイビッドにとっては貴重な夜だ。なにしろママときたら、警察を何週間もきりきりまいさせている難事件を、話を聞いただけでいとも簡単に解決してしまうのだから――安楽椅子探偵〈ブロンクスのママ〉登場。表題作ほか七篇の本格ミステリ短篇を収録。

・コメント
事件解決の鍵が、ロシアからの亡命ユダヤ人*であるママがニューヨークの、低所得者層がそれでも活気溢れる日暮している日常の<人間>との交流のなかでママが身につけた、人間理解と人間の観察眼であること。それが、地方の農村の暮らしの中でそれらを身につけたミス・マープル(アガサクリスティー)と通底していること。このことは多くの評者が指摘していることにせよ、読む者として(とんでもないところから問題解決の「水戸黄門の印籠」や「魔法の杖」が取り出されるのと違い)フェァーだし、説得力に富むものだと思います。

 

*現在、アメリカに在住しているユダヤ人の大多数は、1880年前後から20世紀の初頭に帝政ロシアと現在のポーランド東部で吹き荒れた「ポグロム:ユダヤ人に対する大量虐殺」を逃れて大西洋を渡ったユダヤ人の人々とその子孫とされている。その30年あまりの間のユダヤ人移民の数は200万人を越えることは間違いないとも。

KABUが、しかし、なによりこの「ママは何でも知っている」に引き込まれたのはその(事件や事件解決の証拠や理路とは一応関係の薄い)ディテールのことども。つまり、ママのママが「13才のときロシアでユダヤ人大量虐殺事件にあって、戸棚に2時間隠れて難を逃れた。だから、彼女はどんなときでも動揺するなんてことはない」とか、主人公である息子には「医者か弁護士という専門的かつ知的な職業について欲しい」とママもパパも願っていたとか、ママより3歳年長の同じロシアからの亡命ユダヤ人であるパパはアメリカに来てからもしばらく英語が全然話せなかったとか・・・。そいうディテールがさりげなく、ストーリーに織り込まれているのが素敵でした。

これにくらべれば、そういう要素だけを顕微鏡で拡大して読者に見せつけるような作品。例えば、『ソフィーの選択』(1979年)などはためにするあざとい/悪趣味な作品でしかない。と、そう私は考えます。やはり、『風姿花伝』の言う如く「🌺秘すれば花🌺」なの、鴨。そう、『流れる星は生きている』の方がはるかに心に響く。






◆ちいちゃんのかげおくり
・作者:あまん きみこ(1931年-)
・あかね書房(1982年)

・内容(あかね書房+ある読書サークルのサイト+Amazonから転記)
夏のはじめのある朝、小さな女の子のいのちが、空にきえました。悲惨な戦争の中に幼い命をとじた女の子の姿を、静かに描く。

戦争のために、ちいちゃんはお父さんを軍隊にとられてしまいます。お父さんが残してくれたのは、「かげおくり」(自分の影を10数える間見つめ、空を見上げると影が目に焼き付いて空に影が映る)という、遊びでした。ちいちゃんは、おにいちゃんと一緒にかげおくりをして遊びます。けれど、空襲のせいでちいちゃんはお母さんとおにいちゃん、どっちとも亡くしてしまいます。小さい子供が、戦禍の中生き残れるはずもなく・・・、ちいちゃんはかげおくりを家族のみんなとしながら昇天してしまうのです。

お父さんが出征する前の日のことです。先祖のお墓参りに行った帰り道、ちいちゃんのお父さんは家族に「かげおくり」の遊びを教えてくれました。影法師をじっと見つめて10数え、数え終えたらすぐ空を見上げると影がそっくり空に映って見えるというのです。 ちいちゃんとお兄ちゃん、お母さん、お父さんは4人で「かげおくり」をしました。影法師は、まるで記念写真のように空に映りました。

第2次世界大戦の悲惨さを描く物語。ちいちゃん一家の戦争が、やさしく悲しく描かれます。体の弱いお父さんを戦争に送り、家族3人の暮らしが始まったある夏のこと、ちいちゃん一家は空襲に出会います。空襲で焼け出されたちいちゃんは一人ぼっち。空腹に絶え、生きながらえようとする姿は、多くの戦争孤児たちの姿そのものでした。家族4人のかげおくりが、胸に深く焼きつきます。小学3年生の教科書に掲載されている作品。戦争がどんなものなのか、話し合うきっかけになるでしょう。

・ちいちゃんのかげおくり-朗読
 http://youtu.be/_1iBi5M0rmY



・コメント
この「ちいちゃんのかげおくり」は小学校低学年の国語の教科書の定番集録作品ということで、特に、コメントは不要でしょう。

ただ、上の「ママは何でも知っている」と同じような切り口で書き添えれば、例えば、野坂昭如『火垂るの墓』(1967年)のこれでもかこれでもかと悲しいクライマックスに至る経緯をねちっこく書き連ねた作品に比べれば、「ちいちゃんのかげおくり 」の方が、<戦争>ということ、<家族>ということを読者によりストレートに考えさせる作品であるとは確かに言える。というか、人間の<実存>ということにストレートに思いを誘う作品、鴨。

畢竟、英国の平和主義者、ジョン・ラスキン(John Ruskin;1819年-1900年)が喝破した如く、「戦争はすべての技術の基礎なのだ。というのも、戦争が人間のあらゆる高い徳と能力の礎だという意味でもある。この発見は、私にとって何とも奇妙で、非常に怖ろしいことだったが、けっして否定出来ない事実に思えた・・・。簡単にいえば、偉大な国民はみな、その言葉と真実と思想の力を戦争で学ぶこと、戦争に養われ平和に消耗させられること、戦争に教えられ平和に欺かれること、戦争に鍛えられ平和に裏切られること、要するに戦争で生まれ、平和で息を引き取ることがわかった」(よって、戦争を直視すること、すなわち、戦争を含む非常事態が惹起する恒常的蓋然性から目を背けるべきではなく、それに常に備えるべきなのだ)という認識がそう満更間違いではないとすれば。

 

<アーカイブ>戦争は人為か自然か?

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/12e35adec21e0d689538584e3663348b

 

(再論)ゲーム理論から考える「不幸な報復の連鎖」あるいは

「不毛な軍拡競争」という言葉の傲慢さについて

http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/a8c23f9010e428e55539ee8d2c1cdf84

 

而して、日教組教師の如く、「ちいちゃんのかげおくり 」を読んだ児童生徒に対して、「だから二度と戦争をしてはいけないのです」などの非論理的な帰結をおしつけるのは論外。蓋し、少なくとも、「次に戦争するときには勝たなければならない」「次の戦争の際にはその勝敗は置いても、とにかく本土が攻撃を受けないように、最低でも核武装を日本は急ぐべきだ」、そして、「それでも、戦争の惹起は人智を超えており、かつ、戦の勝敗が時の運だとするならば、ときの為政者は「ちいちゃんのかげおくり」を幾度も反芻しながら戦争に打って出るか否かを熟慮かつ即断して欲しいものだ」とは、その読後感として論理的にも言えるのではないかと思います。

 

[再掲]コラム:「左翼」て何なの-教職員組合を例にとって

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/40427fd974fca7cde4ddaf33a42ced46

 

しかし、いずれにせよ、そんな賢しらな「感想」を述べるより、健気な小さな命への<共感>を心の中で反芻するのがなにより本筋のような・・・。

あまんさんの他の作品、『おはじきの木』(あかね書房・2000年) は内容的に言えば、本書で、お母さんお兄ちゃんと死に別れたちいちゃんが防空壕で過ごした幾日かを<拡大>したものですが、しかし、その部分の印象も本書『ちいちゃんのかげおくり』の方が鮮烈のような。而して、それはおそらく、<共感>の反芻を誘う契機の出来映えに収斂するの、鴨。

 

蓋し、その契機とは、例えば、岡崎二郎『時の添乗員 1』第3話/交換日記, ビッグコミックス・2000年;単行本・2002年)の最終頁、70年近く前に二人の少女が綴った交換日記の現物を文字通り抱きしめながら、主人公の老いた経営者にして10代の少女時代の彼女が第二次世界大戦勃発の前、日本から故国ドイツに帰った女子校時代のユダヤ人の親友との思い出と彼女の運命に思いを馳せ<共感>を抱きしめる場面と通底するもの、鴨。と、そう私は考えます。

ちなみに、KABU家のピグワールドのキャラクター(住人ピグ)に、
「ちいちゃん」がいるのは言うまでもありません。


 

次点

だいすきなパパへ
▽ジェシカ・バグリー作
(日本語版の翻訳-なかがわちひろ)
▽あすなろ書房
▽2015年7月30日発行

BOATS FOR PAPA
▽Jessixa Bagley
▽Roaring Brook Press
▽Published, June 30, 2015


・マクミラン(←出版社のサイトよりこちらが情報が豊富でした)
 http://us.macmillan.com/boatsforpapa/jessixabagley

・あすなろ書房
 http://www.asunaroshobo.co.jp/home/search/index.html

 

日本語版でも見開きを入れて40頁の小品。

φ(。。;)・・・40頁?

だって、<絵本>なんですもの。
でもね、<絵本>侮り難しですよ。

 

・英語の絵本--マイブーム紹介--
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/bf8988ec0bd52b282caa054c00122649


・図書館には英字新聞と英語の絵本を
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/1b63943ffc859507edd6165a843d4881

 

本書「だいすきなパパへ--BOARTS FOR PAPA」は、
この書き出しではじまります。

バークリーと ママは、うみべの ちいさな いえに すんでいました。
つましい くらしでしたが、バークリーには ママが、ママには 
バークリーが いました。

Buckley and his Mama live in a cozy cabin by the ocean.
He loves to carve boats out of the driftwood he finds on the beach nearby.

・・・
・・・
・・・

【涙・涙・涙】←多分
【めでたし、めでたし、めでたし】←多分


 

著者のJessixa Bagleyは、アメリカの西海岸、あのシアトルマリナーズの本拠地、シアトルがあるワシントン州のすぐ南の州、オレゴン州は--盛岡市って感じの、州唯一の<都市>である--ポートランド出身。騒がしくはないがお茶目で聡明なアフリカ系アメリカ人の才女。ワシントン大学(University of Washington≒アメリカの東北大学?)を経て、その三つのちっこいキャンパスがシアトル近傍に点在するCornish College of the Artsの卒業生です。

б(≧◇≦)ノ ・・・ポートランド、懐かしい~♪

 

と、著者の略歴紹介で字数を稼ぎましたが、
本書のストーリーの紹介は割愛します。

だって、<絵本>なんですもの。
しかし、<絵本>だけれども・・・。

日本語版でも表紙を入れて42頁の絵本なのだけれども、本書は--海馬之玄関ブログもまたそれを称揚・希求してやまない--アメリカの健全な保守主義の世界観に貫かれたすぐれた<哲学書>でもあると思います。

もちろん、絵本の紹介ということもあり、「アメリカの健全な保守主義」なるものについては下記URL記事に譲り割愛します。而して、おそらくアメリカではどちらかと言えばリベラル、そう、著者のJessixa Bagleyは、多分、「民主党支持者=デモクラット」でアメリカの社会の中ではリベラル派に属する人物かもしれない。しかし、Jessixa Bagley女史も(←著者サイトに「ファーストネームの「x」は「c」みたいに発音するねんで」と本人が書いていますから、これ以降、著者をファーストネーム(笑)でジェシカと呼びます)、私のいう意味ではまさに「アメリカの健全な保守主義」の体現者にして信奉者と言える、鴨。

温故知新:「あしながおじさん」を貫くアメリカ保守主義の精神
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/dc30651b55d86bc227fc7a651a74dfca

「あしながおじさん」を貫く保守主義の人間観
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/fec9cef04c2df7543851e834dc5a2a41

 

 

P/S 

ご来訪いただいている皆さまへ。

KABU家です。

 

最近、ウクライナがこんなときに英語とアイドルさんの記事ばかりですか?
と、同志の数名から問い合わせがありましたので、同志のみなさんに
共通のコメントさせていただきます。

 

ウクライナの話は情報が信用できない。

日本語のものはもともとみないのですが、

左右とも英語のものドイツ語のものもあやしい💀

 

よって、プーチン先生が核兵器を使う可能性が極めて高い。

ウクライナの大統領はかなりいかがわしい。

国際機関は権限をこえる政治的発言をしている。

アフリカと中南米の少なくない国がロシアを支持している。

というくらいしか自説は作れません。

 

よって、ウクライナ関連ネタはもうしばらくは「黙秘権」

行使させていただきます。わからないのに書くのわが家は嫌ですから。

 

はぁー、プーチンさんを支持するのですか?

そげんかこつわなかろうもん❗ 

そんなわけあるかいなー❗

そういうことはないのです❗

 

以上

 

今後ともよろしくお願いいたします。

 

資料記事紹介+感想:西側のエリートさんとメディアはなぜロシアに勝てると思ったのか?

↪️孤立しているのはどっち?

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/327f61c14e6ba8a9ea350128b89d31b5

 

第三次世界大戦=a third world war, これが「the third world war」にならないことを祈ります

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/cd9f371eb4328bbc3997bab87c00b07b

 

ブログの像:記事内容と関係なさそうな「食べ物やお料理さん系」が

少なくないことの理由はなんだろう?

https://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/4e03beafbd5b690bed61fda9e978db7a

 

 

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