醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1423号   白井一道

2020-05-29 10:30:49 | 随筆・小説



   前黒川弘高等検察庁長官辞任について 


 
 前黒川検事長が麻雀好きであり、賭け麻雀の常習者であることを政府官邸首脳は知っていた。評論家の佐高信氏は早野透氏、平野貞夫氏との『3ジジ放談』で述べていた。さもありなんと、『3ジシ放談』を聞いて思った。前文科省事務次官であった前川喜平氏が新宿歌舞伎町の風俗店に通っていたことを政府官邸官僚に呼び出され注意されたことを話していた。この事は後に新聞に出た。この事を思い起こすと前黒川検事長が賭け麻雀をして検察情報を産経新聞記者と朝日新聞記者に漏らしていたことを政府官邸は知りぬいていた。検察庁の高官が新聞記者と賭け麻雀をするということは、新聞記者たちが麻雀に負け続け、金を支払い続け、黒川氏との雑談を通して検察情報を得ていたということだ。それで良いと政府官邸は思っていた。警察官僚出身の政府官邸官僚は前川氏を呼び出し、注意したように黒川氏も呼び出され、注意をされたのかもしれない。こうして黒川氏は政府の意向に沿った検察を行った。
 例えば、国会で、甘利明前経済再生担当相の秘書らが都市再生機構(UR)に対して口利きをした問題が取り上げられ、高級自動車「レクサス」を“おねだり”していた音声データが公開されるなど、大物政治家とその秘書の「権力をカネにする」という出来事があった。「口利きの有無」というあっせん利得処罰法など、犯罪に関わる部分と無関係なことから、ほとんど取り上げられなかった。
 又、小渕優子前経済産業相(41)の関連団体の政治資金収支報告書に嘘の記載をしたとして、政治資金規正法違反(虚偽記載・不記載)の事件について東京地検特捜部は嫌疑不十分として小渕氏を不起訴とした。
 森友学園に国有地を8憶円値引きして売却するに当たって公文書を改竄したと訴えられた元佐川理財局長は起訴されることなく、退職し、退職金もほぼ満額貰っている。
 愛媛県今治市に加計学園グループの岡山理科大学獣医学部新設計画をめぐって問題が起きたがいつのまにか雲散霧消してしまっている。
 「桜を見る会」に安倍後援会員を多数招き、公費で接待した問題もいつのまにか誰も問題にしなくなってしまっている。
 東京検察庁は特に動くことがなかった。動くに値しない問題であったのだろう。特に東京検察庁が動く必要がないという法的論理を創ったのが前黒川高等検事長だったのかもしれない。
 このようなことから前黒川検事長は安倍内閣の守護神と拝められるようになった。私は法の精神に則って前黒川検事長は検察業務をこなしていたのだと思っていたが実はそうではなかったのかもしれないと思うようになった。賭け麻雀をしていることを前黒川検事長は政府官邸に知られていることを承知の上で今回も五月一日と十三日に麻雀をした。にもかかわらず今回に限ってなぜ週刊誌に漏れたのか。政府官邸がリークするはずがない。どこから漏れたのか。週刊文春記者に情報をリークしたのはもしかしたら、新聞記者なのかもしれない。
 産経新聞記者の中には高級官僚とずぶずぶの関係を持って記事を書く記者に対して快く思っていない記者がいて、この記者が文春記者に情報を漏らしたのではないかと想像する。否、そうではなく、朝日新聞記者の誰かがリークしたのではないかという憶測もあるようだ。検事総長は黒川ではないと予想し、そちらを主な取材対象にしていたのが朝日新聞だという。この朝日の記者がリークしたという。
 週刊文春記事が出て以降、官邸内には黒川氏を続投させることも可能だという主張もあったようだ。しかし黒川氏は辞任する意向を直ちに表明したので、官邸も慰留させることはできなかった。世論の大きな反発が予想されたからかもしれない。結果的には現稲田伸夫氏が後任の検事総長に推薦していた林真琴氏が東京検事長に就任することになり、行く行くは林氏が検事総長になるのかもしれない。安倍官邸の意図は挫けてしまった。
 この人事の成り行きによって現在広島で行われている2019年夏の参院選・広島選挙区(改選数2)での公職選挙法違反事件で、関与を疑われている自民党の河井案里氏(同区選出)と夫の克行氏(前法相、衆院広島3区選出)が、「国会議員として絶体絶命の窮地」に立たされることになった。広島地検が案里氏の公設秘書らを買収罪などで起訴、その後も河井夫妻や周辺関係者の捜査を集中的に進めているからだ。河井氏の事件が安倍晋三氏の政治生命にどのような影響が出て来るのか。大きな政治ドラマが今起ころうとしている。