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ビジネスマンじゅんごろうのONとOFF

ビジネスマンならではの視点で趣味やビジネス、社会について論じます。

書評「ハーバード白熱日本史教室」

2012-07-16 19:24:46 | 読書
自分より年下の日本人女性がハーバード大学で教鞭をとっている。しかも年々履修者を増やすなど評価を上げている。そんな誰もがあこがれるキャリアを築いている北川智子氏の著作である。
日本人が海外で成功するサクセスストーリーかという先入観をもって読みはじめたが、ハーバードで教鞭をとるに至った経緯や大学での講義内容、さらにキャンパスライフまで生の大学の情報が具体的に書かれていたので、自分が学生に戻ったような錯覚を持ちながら読み進めることができた。
特に興味深いのはいわゆる「寮生活」である。本書にも出てくるが基本的に学生は寮生活を送っている。寮はいくつかの建物に分かれており、それぞれ名前がついている。多くは卒業生からの寄付によるものらしい。面白いのは自分が住む寮に異常なほど愛着を持っており、寮の間で競争意識が芽生えているのだ。
短い間であるが私もアメリカで寮生活を経験したのでこれはよくわかる。「サイバード」という寮は優秀な学生が多いとか、確か女性専用の寮があったりする。日本と明らかに異なるのは女性専用であっても男子学生の出入りが自由だし、ほとんどの学生はボーイフレンド、ガールフレンドがいるのが当たり前なのだ。
この寮生活を充実するために学生のプロフィールを学生用のウェッブサイトで共有することになったのがあの「FACEBOOK」の始まりと言われている。

さて話を日本史の教室に話を戻そう。北川氏の授業の評価が高い理由はコンピュータを使って日本史を体験させることにある、と書いている。つまり16世紀の秀吉の時代をテーマにグループプレゼンやポッドキャスト製作、そして映画の製作まで課題として与えるというのだ。
アメリカの大学はこのように学生同士が協力して作業するというのが当たり前のようになっているのだ。比べて日本の大学は作業は個人で行い、正解を目指して勉強するというスタイルが基本となっていることは今も変わっていないと思う。
このような教育を受けて社会に出てきた若者にいきなり「顧客を説得するプレゼンをしなさい」などといわれても難しい話となるのではないか。
大学の現場も変わっていると思うが、学生に知ってほしいと思うのは社会に出たらアメリカの大学の授業で行われている、仲間と協力して「無から有を作り出す」ことが求められる場面が多いということだ。

そして作り出す過程で知識を習得して「なぜそうなるのか」を突き詰める論理思考を鍛えることになるのだ。このプロセスは重要だが机上で悶々としては身につかない。

書評:「政治家の殺し方」

2011-11-27 21:50:21 | 読書
「政治家の殺し方」とは物騒なタイトルだが、書店では手に入らないほど人気が高い本なので、中田宏氏の著作を知らない人はもはや少ないかもしれない。

3週間ほど前、徳島マラソンに参加したとき前日の夜を落ち着いて過ごすために購入した。この本の存在は中田宏氏のtwitterをフォローしているので、随分前から知っていた。著書の内容の多くは、氏が市長時代に経験した、抵抗勢力からの「攻撃」(これは私の表現)について赤裸々に描いている。
実は私も当時横浜市民だったが関心も薄く、300万もの人口を抱えて観光やビジネスの魅力が大きい横浜に大きな問題があるとは思っていなかった。中田氏が週刊誌に書かれていたことはうっすらとそんなこともあったかな、くらいの印象しか残っていなかったが、ビジネスで結果を残す人はそれくらいの元気がないと勤まらないだろうというくらいで流してしまっていた。
この本を読むとわかるが、横浜市は膨大な借金を抱え、ご他聞にもれず既得権益に群がる役人がたくさんいる。中田氏はその「甘い汁を吸っている」利権にメスを入れたことにより、予想もしなかった方法で攻撃を受けることになったのだ。もちろん破廉恥な記事はすべてデッチ上げ、裁判で中田氏の主張が全面的に受け入れられている。

この本を読んで改めて思うのは、マスメディアの報道する内容、コメンテーターのコメントについて知らず知らずに影響を受けていたということだ。繰り返し報道されると、よくわからないけどそれが正しいと思うようになってしまって、その印象は簡単に払拭されない。何より自分の頭で判断するということが大切ということだ。

話は変わるが、ちょうど夏から住んでいる大阪で「ダブル選挙」が開催された。橋下氏のtwitterもフォローしているので、彼の「大阪都構想」については彼のつぶやき、というよりは演説でいやというほど聴かされてきた。ちょうど選挙前に中田氏と同様に週刊誌に書かれたが、橋下氏の場合は中田氏とは違って政治活動とは異なる親族に関するものだった。結果的に有権者の判断に影響はなかったわけだが、ここでもマスメディアの体たらくを露呈する結果となったのだ。

ジャーナリズムが本来果たすべきは、彼の大阪都構想を深堀し、それが本当に大阪のためになるのかどうかを真っ向から問わなければならない。新聞紙上では「形から入るのはよくない」、「二重行政の弊害が本当にあるのか」と高校生でもできるようなコメントが並ぶ。結局候補者同士の討論も開かれず議論はかみ合わないままだった。
今回私も一票を投じられると期待していたら、なんと有権者名簿に載るためには3ヶ月以上必要らしい。歴史的な選挙に参加することはできずに終わってしまったが、結果は橋下氏の圧勝。知事選に当選した松井氏の対抗馬は「橋下氏の亡霊にも負けた」と敗者の弁を語っていた。大阪はしばらく熱を帯びそうだが、この先市民のためになる政治を期待しつつもウォッチしていくことも有権者の責務であろう。

書評「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」

2011-02-13 20:23:56 | 読書
ランス・アームストロングという人を聞いたことが
あるだろうか?
アメリカのサイクリストであり、たぶんアメリカではタイガーウッズと
並ぶくらいの知名度がある人だと思う。

という私も彼を知ったきっかけは2年前自転車のイベントに出たときに
黄色いリストバンドをもらったことだ。
知人に聞いたところ「Live strong」というランスが始めた、売上を
癌治療施設に寄付をするという取り組みだという。

ランスは1999年から2005年もの7年連続で総合優勝を果たした。
しかも癌を克服してからの記録というから驚きである。

この本はランス自身による、生い立ちから癌の発覚、克服、そしてツールの
総合優勝に至る半生をプライベートの部分も含めて詳細に書かれている。

最近は日本でもアスリートの著作が出てきているが、
この本を読んで改めて、ビジネスでの成功との類似性について気づかされた。
自転車競技、それも山岳を含む条件のなか何日間もかけて駆け抜ける
過酷さ、奥の深さが文面から伝わってくる。
勝つためには肉体のトレーニングだけでは絶対に果たせないことがわかる。
チームプレー、勝負どころ、リスクテイキング、このようなキーワードが
思い浮かんだ。

また米国人がヨーロッパで活躍するということについても、
随所に触れられている。ヨーロッパというと洗練されて、人も街も懐の深いところ
があると思っていたが、復帰後のドーピング疑惑などは日本のマスコミと
大差はないなと思わせるところもあった。

本を読んだ後、ランスのことをネットで調べてみた。
この本では人工授精により長男を授かり、プライベートでも絶頂を思わせて
いたが、2003年に離婚していることがわかった。
癌復帰後に妻とともにヨーロッパのツアーに参加したが、雨のレースで途中棄権。
そのまま自宅に帰り、もう自転車は辞めると言い出した。
妻は母国から移住するつもりで現地で語学学校に通って生活を築こうとしている
矢先だったという。
だが、彼女はランスを尊重し、一度は母国に戻ることに同意する。

このような理解のある女性だったが、
我慢のならないようなことがあったのだろうか。

ランスはその後何人かの女性と噂があるようだ。
ここだけは貧しさから成り上がったアスリートに典型なのか。。

「走ることについて語るときに僕の語ること」

2010-08-01 22:08:59 | 読書
以前も紹介したことのある村上春樹氏の著作。
文庫化されているのを偶然本屋で見かけて即買した。

以前立ち読みしたときは、サロマ湖100キロを走った様子に
興味をもったのだが、他の章を読むとランニングだけでなく
小説家になった経緯であるとか、アメリカでの生活の様子など
人間味のあふれる雰囲気が伝わってくるものである。

その中のひとつに興味深い記述があった。
「誰かに故のない(と少なくとも僕には思える)非難を受けたとき、
あるいは当然受け入れてもらえると期待していた誰かに受け入れて
もらえなかったようなとき、僕はいつもより少しだけ長い距離を
走ることにしている。」という。

「自分に能力に限りのある、弱い人間であることをあらためて認識する。」
ためだという。

このエピソードは自分にとっても共通するものがある。
ただし、弱いことを認識するためではない。

仕事でうまくいかないもやもやしているときは特に多めに体を
動かすことで気晴らしをするだが、肉体を酷使しなくても弱いことは
わかっている。

仕事に傾きすぎた振り子をプライベートに戻そうと無意識に行動している
んだろうと思う。
私だけではないが、仕事にエネルギーを費やさないといけない時期は
夜眠っても夢の中にも仕事に関連したものが出てきて、朝悪い目覚めで
おきることになる。

村上氏でも弱さを意識するのか、、と思うとこんなエピソードも出てくる。

ボストンのチャールズ河をジョギングするとハーヴァードのロゴのついた
シャツを着た女の子たちに次々と抜かれるそうだ。
彼らは人々を抜くことに慣れているといって、
「それに比べると僕は、自慢するわけではないけれど、負けることには
かなり慣れている」という。

この気持ちもよくわかる。
ランナーというのはみんな同じような気持ちなのだろうか。

それにしても村上氏の走る距離は、普通の市民ランナーを越えている。
ニューヨークシティマラソンに向けて夏から秋にかけて月間300キロを
超える距離を走っている。

自分は、今までの人生の中で最高でも月間200キロを超えて練習したことはないと
思う。10キロを毎日走れば300キロにはなるが、並大抵ではない。

それだけの距離を走る理由、つまり小説家としての「健康」についても
著作に書いてある。
基本的に正直な人なんだろうと思う。

著作を読んでいて、人柄には好感をもつことができた。

Dormant

2010-05-23 22:55:08 | 読書
先日、ビジネス英語を聞いていたら、
懐かしい用語がひとつ。
「Dormant」、日本語では眠ったというような意味がある。

もともと、フランス語から派生した単語で、
dormant volcano休火山のような使われ方をするらしい。
なぜこの用語に懐かしさをもったかというと、学生時代
自分が書いたスピーチ大会の原稿をネイティブの先生に
チェックしてもらったとき、この単語に直されたのだ。

スピーチの内容は才能を眠らせているというような意味を
表現したかったんだと思う。
単純にsleepではなく、dormantを使ったほうが深みが増すと
思われたのだろう。

ビジネス英語を聞いていると、本当にこんな表現使われているのか?
と思うことが多かったが、実際自分になじみのある用語を目にすると
なるほど、こういうときに使うのか!と思ったりするのだ。

英語の上達の伸び悩みの理由のひとつは語彙力があると思う。
やっぱり地道に単語を覚えるというのは案外間違いな方法ではないかも
しれない。

キーとなる用語を知らないだけで、会話や文書全体が理解できないことは
しばしばある。逆にその用語を知っていれば、あらかたどんな内容か
想像がつく場面も多いからだ。

書評:生命保険のカラクリ

2010-02-07 21:05:28 | 読書
突然だが、私は30半ばを過ぎたが、未だに生命保険に入ったことは
ない。入る予定もないが、最近考えなければならないかな、と思い始めて
いた。

ライフプランを考える時期というだけでなく、いくら健康に気を遣っていても
体にはいつか「ガタ」がくるのは明らかだし、それに備えていくことは賢明であろう
と思うからだ。

その答えが生命保険なのかわからないが、とりあえず知識は蓄えようと
この本を本屋で手に取った。

著者の本は以前読んだことがあった。
東大、ハーバードMBAを修了した、「超エリート」である。
そのエリートが保険会社の仕組みを比較的わかりやすく解説しているという
だけでも一読に値すると思ったことも事実である。

定期保険、養老保険、終身保険の違いや保険料の内訳などは
興味深く読ませてもらった。
本を読んだ結果としては、やはり自分は生命保険に入る必要性は
薄いと改めて実感した。

理由は以下の通りである。
死亡保険はそもそも必要ないこと
医療保険も公的な保険である程度カバーしてくれること
将来の蓄えのためには保険よりも有効な運用手段があること
タバコなどリスクを高める生活習慣は(今のところ)ないこと

著者は保険の必要性をリスクの観点から整理するとわかりやすい
と説く。
長生きするするリスク、収入がなくなるリスク、病気などの出費がかさむ
リスク、資産が毀損するリスクである。

こう考えると私だけでなく、多くの人がリスクを抱えているようには
思えないが、実際はほとんどの会社員の人たちは何らかの生命保険に
加入している。
親類や友人などによる勧めにより加入するケースが多いのだろうか。

実は私も外資系の有名保険会社の男性外交員から勧誘を受けたことがあった。
以前のクライアント先で当時タバコをすっていたエリアで、女性外交員が
勧誘をしているところに出くわしてしまったのだ。

そのときは断ったのだが、後に同僚との雑談で「何も入っていないので
保険には興味がある」と口走ってしまったのだ。
同僚はそれを聞き逃さず、大学の同期で元大手総合商社に勤めていた
という男性からその日の夜には電話を受けるハメに陥ったのだ。

仕方なく一度会って話を聞くことにした。
彼は最初雑談ぽく話を始めた。
保険についての印象を聞かれたのだと思うが、最初に私は
「貯蓄と保障は別だと思っている」という保険の本質に関わることを
伝えた。
彼は何も反応せず平静を装っていたが、その話題に触れることは
なかった。

彼はやたらと私に「xxさん、なぜxxだと思いますか?」
と質問攻めにした。
「xxですかねえ」と気のない返事を繰り返した。
話の中盤で伝家の宝刀を抜いてきた。
以下はそのやり取りである。

「あなたにとって大切な人は誰ですか?」
「家族ですかねえ」
「ではあなたが重度の障害にあって働くことができなくなったら、
誰があなたの医療費を払うのですか?」
「家族だと思います」
「先ほどあなたにとって大事といった家族に迷惑をかけることに
なるんですよ!それでもいいんですか!」

私は心の中でつぶやいた。
「恐怖を売るというのはこういうことか」

その後、彼に私は医療保険になら興味があるといったところ、
こう言ってきた。
「医療保険なんてその辺のインターネットとかで安いのがいっぱい
ありますよ。うちはそんなものとは違うんです」
などと暴言を吐いてきた。
たぶん契約する気がないことを察したんだろうと思う。

さらに彼はこう言ってきた。
「私はxxという資格を持っていて、このような資格を持っている人と
話せる機会なんてあまりないでしょうから」
と腹立たせるセリフをいいつつ、こう言った。
「誰か保険に興味のある人紹介してもらえないですかねえ」

本書でもあるが、このセリフは本当に誰にでも言うらしい。

保険屋さんと出会ったら、「恐怖を売る人」ということを肝に銘じて
望むことを強く勧めたい。
あとは外交員とはいえ、相手はプロだから保険について中途半端に
論争を挑まないほうがよいだろう。
話をそらされて、うまくまるめこまれること必至である。

書評:裸でも生きる2

2009-10-17 15:14:19 | 読書
30歳も半ばを過ぎてくると、自分よりも年下なのに
ビジネスの世界で活躍している人を多く見かけることになる。
ビジネス書の著者が年下だったりすると、自分よりもビジネス経験の
年数が少ないはずなのに、、と最初のころはそんな気持ちがよぎったもの
だが、最近は成功するのに年齢なんて関係ないんだなあと思えるようになった。

「裸でも生きる2」の著者の山口絵理子氏はまだ20代。
マザーハウスというバッグを生産・販売するビジネスを立ち上げた。

この本を書店で手をとったのは、偶然からだったが、
彼女の大学を卒業してからビジネスを立ち上げ、困難に立ち向かう
姿がリアリティをもって描かれていて得るものがあったと思う。

なんといっても、バングラデッシュやネパールという最貧国を生産国として
選んでいて、しかも現地の素材を使うことにこだわっていることに人が真似を
できないと思わせる特異性を感じられる。

しかし本を読むとわかるが、ところどころでビジネスの本質に関わる
ところに強くこだわっている。

・直営店で売ることにこだわり、自社製品のこだわりを消費者に直接
伝え、吸い取ることを意識する
・「かわいい」デザイン
・素材を大切にする

こうしてみていくと、現在絶好調のユニクロに通じるところがあることがわかる。
直営店は初期投資が大きくリスクのあるビジネスだと思うが、メディアへの
影響力をうまくビジネスに結び付けていると思う。
しかも純粋さが伝わってくるので、応援したくなる気持ちをもつ消費者も
多いのではないだろうか。

タイトルに反応して手に取った自分を反省するばかりである。。

書評:日本カフェ興亡記

2009-06-14 22:36:06 | 読書
ビジネスマンとカフェとはきっても切れない関係にあるといえるだろう。
出勤前のひと時、あるいは、初めて訪れる都市での時間つぶし。

私もカフェで時間を過ごしながら読書をするのは好きなひと時である。
さて、この「カフェ」をテーマにした本がこの本である。

ドトールコーヒーやスタバの比較などは興味深いものがある。
スタバなど米国流を日本に持ち込む上で重要なのは「提携相手」である
そうだ。

スタバは日米の飲食事情に詳しい角田氏がサザビーと組んで事業展開した
ことが成功要因だったと紹介している。

これは外資系企業にとって含蓄のある言葉であると思う。
日本人は海外のものにある種の憧れを持つわけだが、自分のライフスタイル
にあわないものには根付かないのだろう。

ただスタバがここまでブームになったことは驚きである。
注文した後、商品がすぐに出てこないで、「ランプの下からお出しします」
などといわれて、今でも待っている間は手持ちぶさたである。

さて、スタバについての研究本はほかにたくさんあるのだが、この本は
コメダ珈琲など地方の有名喫茶店にも目を向けている。
意外と駅から離れた不便なところにも平日の昼間でも客が絶えないカフェ
が存在するという。
私の近くにもよく雑誌などで取り上げられる有名なカフェがあるが、
そういえば、なんとなく雰囲気がいいなあ、と思ったりした。

ほかにもカフェでもてなす食品についてや、タバコ問題など興味深い
テーマがあり、カフェについて再考したい方にはお勧めできるほんである。
日本カフェ興亡記

書評:会社に人生を預けるな

2009-04-29 12:51:10 | 読書
久々に勝間和代氏の著作を読んでみた。
その名も「会社に人生を預けるな
新書なので軽く読めてしまうが、この本はいわゆるノウハウ本ではなく、正しい考え方(リテラシー)
を身につけましょう、と最良のリスクとリターンを見つけようと感度を上げる
ことを説いている。

リスクの考え方を終身雇用など現代社会の問題だけでなく、第二次世界大戦や
ガラパゴスの例など豊富なエピソードがちりばめられているところが、勝間氏
らしいというところだろうか。

実態として、多くのサラリーマンは快適とはいえない労働環境にもかかわらず、
新卒で入った会社に勤め続けている。その原因は一度職から離れると再び正社員
に戻ることが難しくさせる、という終身雇用制である、といわれている。

終身雇用制がリスクに対する許容度を下げるという主張はなるほどと思う。
正規社員をクビにならない・できない仕組みのため、経済環境に応じて雇用を
調整されない、つまり過当競争になる構造となるというのだ。

この本を読んで自分なりに、共通する考え方だと思ったのは、会社員のリスク感度
の低さは「マイホーム指向」にも通じるものがあるな、というものだ。

おそらく多くの会社員は終身雇用で守られていることにむしろ「リスクは
低い」と感じていると思う。
マイホームを購入した人もしかりである。
自分の「城」が確保されていれば、仮に職を失っていても売ったり、賃貸に出す
という選択肢もある、と考えている。

しかし一戸建ての家ならまだしも分譲マンションは過剰供給され、数十年後の
価値がいくらになるかまともに計算している人はほとんどいないだろう。
ずっと住み続けることが前提だから、現在価値がいくらなのか計算する意味その
ものがないということだ。

有事がなければそれでもよいと思う。
有事とは大地震などの災害や家族構成の変化により、すみ続けられない状況の
ことである。
このような「リスク」を考慮した上で意思決定しているかどうかが問題である。
『想定の範囲外』の状況が発生したときにリカバリ不能にならないように、
リスクをヘッジできていることが重要であるのだ。
具体的には駅近くの物件を購入したり、転売を想定して価値を保つようにきれい
に使うということだ。

リスクの感度を上げるための最良の方法は実際に市場に入り込むことだと思う。
住宅であれば売買を実際にやってみるのだ。
または賃貸住宅であれば引越しを定期的に行い、相場とリスクの肌感覚をつかむ
のだ。

一度住み慣れた住宅から出るのは勇気がいる。
ただその「続ける」ことも選択肢の一つであり、ときにその決断は変えることより
も大きなリスクを負っているかもしれない。

今年更新となる部屋で、「転居活動」→「居活」をはじめようかと思い始めた
のだった。

『もったいない』から考える

2009-03-29 20:56:13 | 読書
3月も最終週となるのに最高気温が10度そこそこの日が続く。

この冬自分の中でヒットしたのは、湯たんぽならぬ、湯ペットボトル
である。
寝る前にお湯が70度くらいになるまで沸かして、ペットボトルに入れて
布団の中へ。足をいい感じで温めてくれる。
真冬だと体が温まるまで寝付けないことがあるが、この湯ペットボトル
をはじめてからは、その悩みが解決した。

実家に帰ったときに親から寝る前に渡されたことがきっかけだが、
そのときは寝ている間にこぼれたりするのではないかと心配したが、
それなりの強度があり、形は変われどもれることはない。

しかも温かさは朝まで続くのだ。

さて、これからが本題だ。
朝起きた後にペットボトルに入ったぬるま湯をどのように使うかが
ポイントである。

多くの人は顔を洗うのに使ったり、洗濯の水の足しにすることが
多いと思う。
最初は私もそんな使い方をしていたが、あるとき食器を洗った後の
流し水に使おうと思いついた。

一人暮らしなので、朝食に使う食器など限られている。
ところが、驚くことにペットボトル1本では足りないくらいなのだ。
もちろん使い方を工夫すればよいのだが、普通に使うとと3リットルは
使っていることがわかる。

たかが水道水と思うかもしれない。
だが、もし突然断水にでもなったら、貴重な水をどのように配分したら
よいか考えなければならない。
このような経験があれば、おおよそ、それぞれの家事で必要な水の量を
見積もることができるだろう。自分が思っているよりもはるかに多くの
水を使っているのだ。

一人暮らしの多くは水道代を最低料金の3,500円程度を2ヶ月おきに払っている
ことくらいで、何リットル使っているかなど考えたこともないと思う。

突然そんなことを思いついた理由は本日手に取った新書に似たエピソード
が書かれていたからだ。小山薫堂氏の「もったいない主義」である。

小山氏は先日アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したおくりびとの脚本を
書いたことでも有名であるが、この本にはそのエピソードも書かれている。

断水にかかわるエピソードは特に印象的である。
普通は予告もなしに断水にでもなったら、苦情をまくしたて、補償を求める
人も出てくるかもしれない。
小山氏はそんな状況をむしろ非日常と捉えて、普通と違う発想をする。

「ネガティブスィッチを切り替える」と呼ぶこのような発想はぜひ
ぎすぎすした現代の東京人に学んでもらいたいものだ。