Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

Intensivist第4号もうすぐ刊行

2009-10-28 04:53:14 | 集中治療
東京大学の山口先生、慶応大学の香坂先生の多大なるご尽力のおかげで、Intensivist第4号の編集も大詰めを迎えています。遅くなり申し訳ありません。

現在、編集部の方の献身的な作業中です。11月20日頃発行を予定しています。

勉強の秋も後半ですが、是非一度はまじめに不整脈について勉強してみて下さい。不整脈に関する永久保存版のような内容になりました。

ハンドアウトは必要?

2009-10-07 23:07:45 | 集中治療

ちょっと前に、スティーブジョブスから学会発表のことに話がとびましたので、それに引き続いてふと思うこと。

昨今、何らかの講義をするたびにハンドアウトを要求されるケースが増えました。

私がふと思いついた疑問は、ハンドアウトが講義を受ける方の単なる安心材料になっていないか、というものです。講義の瞬間、瞬間で理解が不十分なことでも、ハンドアウトに書いてあるから後で見ればいいやと思い、かえって講義に対する一期一会精神が失われ、結局どのみちあとでハンドアウトを見返すこともなく、そのままホコリをかぶることはないでしょうか。

一方で、ハンドアウトの出来がひじょーに素晴らしくて、こちらもあとあと家宝のようにことあるごとに利用(自分自身の復習やレジデント講義に利用)する場合があります。自分で一期一会精神なんかもたずに気軽に聞いたどなたかの講演でも、のちのちそのハンドアウトを利用し続けることもありますから、考えてみれば生かすも殺すも講義をする人(=ハンドアウトを作る人)の熱意の結果としての「よいハンドアウト」が大切、講義をする人(=ハンドアウトを作る人)が良いハンドアウトを作ることが要求されている、と言うことになります。時間がたりずに講義で話すことができない内容を補足すると言う意味も付加することができるでしょう。

しかしながら、ハンドアウトがどんなに素晴らしくても、プレゼンテーションの内容とハンドアウトの内容にずれがあったり、講義のスライドとハンドアウトのスライドの並んでいる順番がちがったりすると、「あれ、今のこの講義されているスライドはハンドアウトのどのスライド?」と紙をめくる音だけが耳につく場面も少なくありません。ハンドアウトを読むことに忙しくて講義に集中できなくなることもあります。結果的に講義を聴くために座っているのか、ハンドアウトと講義の一致を確認するために座っているのか、聴衆として自分のやっている行動がアホらしくなることも稀ではありません。それを避けるには原則ハンドアウトは講義終了後に配る、という姿勢がよいのかもしれません。

ハンドアウトは必要か不要か結論がでないので、以下、無理矢理の私見ですが、講義をする人、講義を受ける人、双方とももっと気楽に構えたらいいのではないでしょうか。100%を伝えよう、100%を得たい、という肩こりのモトは止めにするというか。たとえば、どんなにがんばって講義を受けてもせいぜい頭に残るのはその2割ぐらいだろうと気軽に構える。講義をする人は講義を受ける人に言いたいことの2割を是非持って帰ってもらえる講義をする、受ける人も2割は必ず絶対に何としても持って帰る、つまり全部は所詮無理だ、という姿勢から始めれば、逆に頭に残してもらいたいもの、頭に残したいものが大切になってこないですかね。

乱暴に自己分析すると、昔、高校、大学と授業を当てにしてこなかった(要は怠け者でさぼりまくっていた)既往の影響で、本来学習は自分で本を読んでするもの、ひとのしゃべることばは所詮しゃべることば、だまされやすいしだましやすい、裏付けが弱い、「話半分で聞く」という信念が強かった影響でしょうか。米国でプレゼンテーションの名人芸を目の当たりにして、更生したつもりだったんですが、やっぱり三つ子の魂百まででしょうか。

おっと、この考えはハンドアウトの有無の是非と直接関係がないですね。失礼しました。むしろ内容の2割を講義で十分強調するために残りの8割はハンドアウトに任せた、という割り切り方も成り立ちます。結局、結論が出なかった(仕事が減らなかった)、残念。

講義をされるかた、講義をお聞きになるかた、みなさんどうされていますか?


欠点は日本語?

2009-10-03 11:46:39 | 集中治療
ベッドサイド回診こそが研修医教育の最良のツールであると確信して疑いませんが(単に自分がそう教わってきたからです)、最近回診で時間が足りないと思うと、ついつい「Intensivist第X号の◯◯を見てね」という反則ワザを使ってしまう場合があります。

例1:

研修医:尿が出ないのでボリュームが足りず腎前性の腎不全と考えて輸液をしました。

指導医:ボリュームが足りない証拠は何かある? 腎後性、腎性でないという証拠は?必要な検査は何?

研修医:........

指導医:それはね。まず........(途中略。問答式に解説をした約10分後に最後に)Intensivist第3号をよく読んで復習してね。

例2:

指導医:(シミュレーショントレーニング風に)それでこの敗血症性ショックの患者さんがもし容量負荷と血管作動薬に反応がなかった場合、他にどのような治療手段がある?

研修医:ステロイドですか? 

指導医:ウン。では何をどのように使う? その根拠となる文献は?

研修医:えーと、ヒドロコルチゾンですが、量はえーっと........

指導医:それはね。まず........(途中略。問答式に解説をした約10分後に最後に) Intensivist第2号のステロイドのところで復習してね。

例3:

指導医:この患者さん呼吸器ウィーニングできる?

研修医:えーっと、ガスもいいですし、呼吸回数も多くないですし、...... まずはPSを少しずつ下げていきます。

指導医:SBTって知ってるか? SBTの基準は?

研修医:........

指導医:それはね。まず........(途中略。問答式に解説をした約10分後に最後に) Intensivist第1号の座談会のところがよくわかるよ。

という具合です。

これって「指導医の怠慢を自ら認めることではないか」、「非常にずるい逃げだ」と猛省します。しかし、そうでもしないと回診に昼過ぎまで時間がかかり、昼のカンファレンスして、そうこうしているうちに入室があって夕方のワークラウンドになってしまい、「一日中回診している」ことになってしまうので、止むなしと確信犯的に逃げることもあります。

気づいた方はたくさんいらっしゃると思いますが、Intensivistは「いままでになかった」凄い雑誌です。「知りたかった」臨床上の疑問に答えてくれます。第2号、第3号は、内科系、外科系を問わず多くの非集中治療医に役立つ内容です。日本語版だけなので、研修医の英語力養成の邪魔になるということが最大の欠点かな、と思うこともしばしばです。

これ以上は嫌みになりますので止めておきましょう。

ps:第4号も遅れていますが、かならず皆様のもとにお届けいたします。