Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

医療界の八百長?

2011-02-19 16:18:58 | 集中治療
少し前になるが、1月19日の新聞記事に

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気管支ぜんそくのたんを切る武田薬品工業の消炎剤「ダーゼン」の効果を再確認する試験で、期待される効果が認められなかったことが19日、厚生労働省の医薬品再評価部会で報告された。

効かないことが確定すれば、承認が取り消される可能性もあるが、同部会は有効性をさらに検証する必要があるとして、継続審議することを決めた。

ダーゼン(一般名セラペプターゼ)は1968年に承認された、医師の処方が必要な飲み薬。慢性副鼻腔(びくう)炎などの炎症を抑えるのにも使われ、年間約67億円(2009年度決算ベース)を売り上げる。

同社が2000~09年、慢性気管支炎の患者311人のうち156人にダーゼン、155人に偽薬を2週間投与して効果を比較する試験を実施したところ、いずれも6割以上の患者で症状が改善し、差がなかった。
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というものがあるらしい(m3.com カンファレンス http://medqa.m3.com/doctor/showMessageDetail.do?messageId=48344 )

ご存知のように我々の世界にも再検証したい薬はたくさんある。その結果、「効果なし、むしろ害が多い」などという結果が出れば、国民を騙し続けてきた医療界の八百長が暴かれることになる。

なぜ今回「ダーゼン」がやり玉にあがったのであろうか。

そこが知りたいと思う今日この頃です。

「人工呼吸管理に強くなる」発行です

2011-02-09 11:56:48 | 集中治療
とうとう出ました。「人工呼吸管理に強くなる」(羊土社)。

http://www.yodosha.co.jp/medical/book/9784758106979/index.html

レジデント、専門医を目指すドクターばかりでなく、看護師、臨床工学技士にももちろん目からウロコが落ちる内容です。

臨床に役立つ呼吸生理、代表的病態の初期設定、呼吸器ごとの設定法の図解,グラフィックの見方、不同調の原因と対策、アラームの理解と対処、鎮痛と鎮静、VAP、呼吸筋疲労、呼吸器ウィーニング法、NPPV、ARDSなど、広い範囲に渡ってその基礎を解説しました。

章末に演習問題もつけました。

自信作です。

またひとつ神話が.....

2011-02-02 13:22:33 | 集中治療
動脈グラフとはイイ、イイって聞いて育った元心臓麻酔科医としては寂しい限りですが。

Goldman S, Sethi GK, Holman W, et al. Radial artery grafts vs saphenous vein grafts in coronary artery bypass surgery: a randomized trial. JAMA. 2011 Jan 12;305(2):167-74. (Original) PMID: 21224458

冠動脈バイパス術(CABG)に使用する橈骨動脈グラフトと伏在静脈グラフトでは1年後のグラフト開存度に差がない、という結果が出ました。米国の退役軍人用の政府系の病院チェーンで行う予定かつ初回のCABG患者733人に、左内胸動脈を左前下行枝に繋いだうえで、そのほかの必要なバイパスとしてランダムに橈骨動脈グラフト群と伏在静脈グラフト群に分けた。開存度は橈骨動脈グラフトが89%(95% CI, 86%-93%)、伏在静脈グラフトが89%(85%-93%)adjusted OR, 0.99; 95% CI, 0.56-1.74; P = .98と同一であった。

5年後、10年後の結果も知りたいものです。

内胸動脈グラフト、とくに左内胸動脈を左前下行枝に繋ぐのは確立され歴史もありますが、「動脈グラフト命」と言った時代はすでに過ぎ去ったのかもしれませんね。