Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

JSEPTICセミナー「呼吸器離脱」終了しました

2012-12-16 14:52:08 | 集中治療

年末のお忙しい中(注1)、150名近くの方にご参加いただき、ありがとうございました。

一言で言うと、個人的にもかなり勉強になった会でした。

東京ベイ市川浦安医療センターCEの木下先生の講義はわかりやすく、とくにレジデント、コメディカルの方には非常に良い知識の整理の機会になったと思います。

横浜みなと赤十字病院の武居先生の経皮的気管切開に関するレクチャーは、プロの技、工夫を伺い知ることができました。自分のプラクティスとは違う部分があって、「次回試しにやってみよう」と思わせる部分も複数ありました。

札幌の平成会病院の岡村篤先生のお話も、「長期人工呼吸病院」として日本のトップを走って来た自負と、少しでも患者さんを良い方向に導こう、そのためには研究、工夫し、そのデータを取って、改善していく、という患者のための臨床研究者およびその実践家としての活動をご紹介いただき、感心しました。

大阪府立母子保健総合医療センターの竹内宗之先生の「呼吸仕事と呼吸筋疲労」は、とっつきにくいテーマに関して非常にわかりやすいうえに、定見がない臨床的な疑問に対して誠実にお答えいただきました。一聴の価値があります。

最後の私のクリッカーを使った症例ベースの呼吸器離脱総論はどうだったでしょうか。Intensivist「呼吸器離脱」のポイントを駆け足で網羅しつつ、臨床家としての本で表現できない「現場でどうするか」のエッセンスを加えた双方向の講義にしたつもりです。個人的には、クリッカーによる質問の回答から驚愕の事実も明らかになり、「考える材料」にもなりました。

ご都合が悪くていらっしゃれなかった方は、是非「JSEPTIC Club」にご加入いただき、動画でご覧下さい。アップされたらMLでお知らせします(私も密かに動画で復習したいと考えています)。

次回は2月23日に「急性冠動脈症候群」をテーマに行います。詳細が決まり次第ホームページでお知らせします。

 

その後のJSEPTIC忘年会ではあちこちで様々な会話が勃発し(注2)、盛り上がりました。ご参加くださった皆様ありがとうございました。Intensivist「呼吸器離脱」に関して初めてナマの感想もいただき、ちょっと嬉しかったです(注3)。 

最後になりましたが、事務局のコンパスのみなさま、MEDSIのみなさま、今年も一年お世話になりました。

 

注1:まくらことばですね。年末だからとくに仕事が忙しいか、という疑問を自分に投げかけてみると、医療業界では「別に」と思う方が多いのではないでしょうか。でも、「あ、もう今年も終わりか。元旦に立てた目標がちっとも達成できてない」と嘆くという意味で、気持ちがせわしなくなる方は多いかもしれません。

注2:「老眼に対するレーシックはあるのか」「グーグルで“ 老眼 小柳ルミ子 ”と入れるとすぐ出てくるよ」などの会話です。

注3:感想は、最初から読み進めて行って、疲れて途中で「解説」を読みにいったら、「.....この「解説」を最初に読む要領のよい読者や、読んでいる途中で気分転換にこの「解説」に立ち寄ったcasualな読者も.....」(851ページ)と書いてあって、あまりに図星でドキッとしましたよ、先生、すごいですね、というものでした。それに対し私は、Intensivist「呼吸器離脱」は厚くて、真っ向から格闘すると読みきれないだろうな、という予測が当たってちょっと嬉しいが若干複雑、かつ随分マニアックな反応で「そこにくいつくんですね、キミこそすごいね」と思いました。


簡単アンケート「人工呼吸器の設定と離脱」サブグループ解析結果

2012-12-05 12:16:12 | 呼吸

10月25日に終了した簡単アンケートの「人工呼吸器の設定と離脱」サブグループ解析を行いました。

医師、ナース、CEで人工呼吸器の設定と離脱に関して見解がどのように違うかみたかったからです。

まず以前お知らせした 全体結果でも

  1. PC好きが多い(質問2~5)。
  2. SIMV好きが多い。初期設定でも(質問2、3)、離脱を考慮したときにも(質問7)。とくに自分で設定する時よりも施設のプラクティスがそうなっている(質問2と3の比較、質問6と7の比較)。
  3. ARDSでは初期設定からBIPAPやAPRVなどの特殊モードを用いることが多い(質問4、5)。
  4. SBTよりもPSVによるウィーニングを用いるコトが多い(質問8、9)。

などの特徴が浮き彫りになりました。今回の職種別サブグループ解析でわかったのは、

  1. ナースにはSIMV好きが多い(質問2、6)。
  2. CEには比較的A/C好きが多い(質問2、4)。
  3. ARDSの初期設定でBIPAPやAPRVを使用したいのはナースに多い(質問4)。

ちなみに、全体の人数比は 医師:ナース:CE=4:2:1 でしたので、職種別の傾向が全体に強い影響を及ぼしたという印象はありません。

このような日本の人工呼吸器設定の傾向は、

Intensivist 2012年第4号 呼吸器離脱の拙文「6ml/kgとSBTの間には」の抜粋

  • 実際に、米国のARDS networkと呼ばれる多施設研究グループによる2008年の報告では、2005年の段階で、ARDSの初期モードとして80 %以上の症例で従量式のA/Cが用いられ(この研究ではA/Cと単純に呼ばれた)、同期式間欠的強制換気±圧支持(SIMV±PS)、従圧式のA/C(この研究ではPCVと呼ばれた)を合わせると、90%程度に調節換気モードが用いられていることがわかった。
  • また、調査年が2000年と古いが、北米、南米、スペイン、ポルトガルの412のICUにおける術後患者を含む一日調査(66%の患者が急性呼吸不全)でも、A/Cが47%、SIMV±PSが31%、従圧式の調節換気が7%、PSVが15%であった。
  • さらに、急性呼吸不全ばかりでなく、術後を含む55箇所の内科系・外科系ICU患者を対象とした2009年の豪州・ニュージーランドの一日調査(80%の患者が急性呼吸不全)では、従量式のSIMV+PSが41%、従圧式の調節換気(SIMV、A/C、BIPAPを含む)が17%であり、残り41%はPSVが占めた。
  • ちなみに、この研究では、急性呼吸不全の患者、重症度が高い患者では、従量式にくらべて従圧式の調節換気が用いられるオッズが高かった(それぞれのオッズ比4.7、1.7)。このように地域によって違いはあるが、急性期には調節換気が用いるのが標準的であることを裏付けるデータである。

でわかる世界の呼吸器設定事情に比べると、かなり異なることがわかります。

今回の結果は、個人的には「CEにA/C好きが多い」(なんか、少し嬉しい)以外は予想通りで、驚かされて面白かったというより、予測が的中し(ただけにいろいろなことを考えさせられ)て面白かった、のが第一の感想でした。