Dr. 讃井の集中治療のススメ

集中治療+αの話題をつれづれに

「臨床に直結する集中治療のエビデンス」正誤表

2013-03-21 20:46:09 | 集中治療

臨床に直結する集中治療のエビデンス(文光堂)をすでにお買い上げのみなさま、以下の誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

http://www.bunkodo.co.jp/pdf/book/1114.pdf

 

それにしても最も恥ずかしい間違いは

trough feeding(誤)→trophic feeding(正)

です。これは私自身が完全にそう思い込んでいたからです。

ICUで十分な経管栄養を与えたいにも関わらず、患者が重症過ぎて投与できない場合、最低限の持続投与を行う場合があります(20cc/時間など)。これを「腸粘膜を栄養(= trophic)する」という意味でtrophic feedingと呼びます。

私は、てっきり薬剤の血中濃度が一日のうちで最低になる時点の濃度をtrough濃度と呼ぶことから(troughは(波と波の間の)くぼみ、谷、という意味)、 「最低限の投与量を投与する」という意味でtrough feedingであろうと10年間勘違いしていました。

ちなみに、trough feedingでgoogle imageすると、家畜にエサをやる写真が出てくる、出てくる。この場合のtroughは、(家畜の飼料・水などを入れる細長い)かいばおけ、槽 の意味です。

なぜこのような堂々とした勘違いが続いたか言い分けさせていただくと、trophic feedingは米国で耳から覚えた単語だったからと思います。つまり、日本人としての悪い耳でtrough feedingと覚え、それをそのまま日本人としての悪い発音でしゃべってもやさしい米国人の間で通じてきたからです。今あらためて、ネイティブの発音を聞けばおそらく聞き分けられると思いますが、当時は修正できるチャンスはあったのでしょうが、そう固く信じてしまったためでしょう(リスニングは耳の良し悪しも大切ですが、基礎知識、状況把握が(ときに遥かに)重要な所以です)。

で、ついでに思い出した話。Masa。

ファーストネームがMasamitsuなので、当時、短くしてMasaと呼んでくれと自己紹介していました。すると、ときに「masterに聞こえてあんまり気持ちのいいものではないから他に呼び名はない?」と聞かれました。すぐさま、「オマエはオレのmaster(=ご主人様)ではないからな、はっはっは」と明るく補足してくれた人もいましたし、米国の過去の歴史を思い起こさせるから、と理由を説明してくれた人(白人)もいました。

以上、耳には同じに聞こえるが間違えるとただ事ではない例でした。

この手の誤解、通じない英語、通じやすい英語の話は腐るほどあって、またの機会に(ずるい、話をうまくすり替えて逃げたな)。


集中治療最新文献厳選55 サマリー集がDLできます

2013-03-15 23:27:34 | 集中治療

「集中治療最新文献厳選55 ─論文を批判的に読んでみたい人のために─」のサマリー集が、第40回集中治療医学会学術集会HPからダウンロードできるようになりました。

http://www.convention.co.jp/40icm/index.html

http://www.convention.co.jp/40icm/pdf/Journal55_JSICM2013Resume_all.pdf

2012年の最低限知っておくべき論文55件を、その気になれば(つまりは斜め読みするとか、結論だけ拾い読みするとか)30分で読み通すことができます。

すでに学会員の方には別経路でお知らせが届いていると思いますが、非学会員の方に是非どうぞ。

2月28日から3月2日まで長野県松本市で開催された第40回集中治療医学会学術集会は、昨年とほぼ同様の5000人以上の参加者がいらっしゃったそうで、大成功だったと伺いました。信州大学救急集中治療医学講座の岡元和文教授を会長とする事務局の皆様のおかげと思います。

また、このような専門医を目指す若い先生が、最新の文献を一気にレヴューでき、しかもその分野のエキスパートの論文に対する批判的吟味も聞けるという機会は貴重です。来年以降も続いて欲しいですね。


松本市に敬意を表して

2013-03-04 01:20:07 | 集中治療

集中治療医学会は、主として長野県松本市の奥座敷、浅間温泉の文化会館で2日間たっぷり過ごしました。

個人的には松本はちょっと苦くて酸っぱい思い出のある地(21年前に実家を飛び出して1年間住んでいたアパートがまだありました)なので、いつ訪れても悪い気はしません。

岡元和文学会長のご厚意で私が企画させていただいた二つのワークショップにご登壇いただいた演者の先生がたやコメンテーターの先生がたには、あらためて感謝申し上げたいと思います。「M&M文化を尊重しよう: 良いM&Mカンファレンスのコツ」はスライド作成ならびにのべ4回の打ち合せ(前日も夜0時まで駅前のガストでリハーサルしました)、「集中治療最新文献厳選55 ─論文を批判的に読んでみたい人のために─」はレジュメ作成とスライド準備、お忙しい中ありがとうございました。メイン会場から距離があったためか空席が目立ったので残念でしたが、audience response system(クリッカー)を使ったアンケートでは高評価をいただきました。「M&M」は図らずも中毒について基本を再学習する素晴らしい機会になったはずですし、「文献55」は一年間の不勉強を取り返したい方、2012年のメジャー論文に対するエキスパートの評価、批判を聞きたい方にとっては他にない機会になったのではないでしょうか(ご参加できなかった方のためにレジュメを学会HPからリンクしてもらうようにお願い中です)。

個人的な明るいニュースは、編集した本が何とか学会に間に合って、売れ行きも良好(ダントツ!)だったとうかがったことでした。厚くなってしまってその分値が張るので心配したのですが、胸を撫で下ろしました。しかし、スペルミスのご指摘を受けました、ああ、ごめんなさい(詳細は次回に)。

臨床に直結する集中治療のエビデンス(文光堂)

http://www.bunkodo.co.jp/book/detail_1114.html

学会って何だろう、JSEPTICって何だろう、ソバ喰いたかったのに時間がない、などなど思いながら、ドタバタとシャトルバスを降りてあずさで帰路につきました。