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B―RTO(バルーン下逆行性経静脈塞栓術)

2014年12月18日 08時35分07秒 | 回顧
 食道静脈瘤の内視鏡的治療が進み食道静脈瘤の治療が行きわたるようになると、今度は胃穹隆部静脈瘤(図1)の問題がクローズアップされるようになりました。しかし高瀬らによる方法(食道静脈瘤硬化療法)では胃穹隆部静脈瘤を治療することができませんでした。
そこに現れたのが私と当時ペアーを組んでいた金川博史を初めとした若い医師たちでした。彼らは1990(平成2)年はじめ胃穹隆静脈瘤が静脈へ流れていることに気づきました。(流出路の発見)。
つまり胃静脈瘤の流出路(出口)に注目したのです。最初の例はアルコール性肝硬変で、何回もの食道静脈治療後胃穹隆部静脈瘤から大出血した症例です。この症例の出口は腎静脈に流れていました(図2のType1 )と判断し、金川らは右股静脈から風船のついたカテーテルを流出部まで入れ、そこでバルーンを膨らませ、出口を塞ぎました(図3a)。更に逆行性にエタノルアミンオレート(食道静脈瘤のとき使用したのと同じ血液の硬化剤)をいれバルーンを24時間留置しました。これで胃穹隆部の治療は終了でした。その後4日目のCT画像では胃穹隆部静脈は潰れ、4週後の内視鏡検査では消失していました。




 この方法ですべての胃穹隆部は腎静脈に流れていると思った矢先、思いもよらないことがおこりました。50代の女性が胃穹隆部静脈瘤破裂による胃からの大出血で緊急入院しました。
何せ緊急なことで腎静脈を中心に流出路(出口)を探しましたがついに見つからず、残念なことに出血死と言う結果になり、救命できなかった患者さんのことをいまでも思い出します。
 緊急な場合術者も出血が止まらないと焦りますから、その後はできるだけ予防的に行うことにしました。時間をかけて探すうちに流出路(出口)も下横隔膜静脈から下大静脈にもあることが解りました(図2のTypeⅡ)また私たちのチームには医学部6年間で3年かけて解剖学の単位を取った青年医師がいました。
彼は血管や筋肉などの起始部→停止部(はじまりから終わりまで)を嫌という程たたき込まれていたのでした。彼らの努力でTypeⅡが見つかりました、またTypeⅠやⅡやルートも発見され、カテーテル(図3a,b)もそれぞれにあうものが開発されました。   
英文論文に公表される直前にTypeⅢのルートも発見できました。このルートは胃静脈から心嚢静脈に流出路(出口)あるもので、極めて希なものです。
これは英文雑誌に公表される直前に発見されました。
日本では英文論文発表後B-RTOの技術は抵抗なく肝臓学会でも受け入れられ全国に広がりました。


具体的な症例です。
CT画像で矢印の示されたのが胃穹隆部静脈瘤です。


B-RTOでエタノールアミンオレートに造影剤を入れて造影したものです。
いかに大きな胃穹隆部静脈瘤かが解ります。


B-RTOの4日目のCTでは胃穹隆部静脈瘤は
潰れています。また内視鏡では4週目で胃穹隆部静脈瘤は消失していました。

3代にわたって継続開発された腹腔鏡検査、食道静脈瘤硬化療法、肝動脈塞栓術、マイクロ波やラジオ波治療、B-RTOは引き継がれいま札幌緑愛病院肝臓チームによって花開いている。


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