Dr.mimaが医原病を斬る!

C型肝炎の解決を目指し、国の責任を追及するため闘っています。

11.食道静脈瘤の内視鏡治療

2014年11月20日 20時08分22秒 | 回顧
一昔までは食道静脈瘤が破裂するとどうだったでしょうか。
肝硬変が比較的軽く、余力のある場合は命をかけて外科的治療を行いました。しかし、外科的治療に耐えられない肝硬変の場合には、食道にSBチューブを入れて止血しました。
SBチューブというのは、丸い風船と細長い風船が二つ付いた管です。これを出血後すぐ飲んでもらい、先端の丸い風船を胃の中で膨らませて、チューブが抜けないように外から引っ張ります。次に、細長い風船に空気を入れて食道を内側から圧迫することにより止血するのです。食道を内側から圧迫するため、胸の苦しさは想像を絶するものです。
これを繰り返しているうちに、肝臓の働きも悪くなって、肝性脳症になり、黄疸が出現し、血まみれで帰らぬ人となりました。
しかし、福音がもたらされました
昭和56年(1981年)秋、筑波大学外科の高瀬靖広先生が“内視鏡的食道静脈瘤塞栓療法(EIS、硬化療法)”をはじめたのです。これは累々と赤く腫れあがった食道静脈瘤に食道カメラ(ファイバースコープ)を使って、直接針を刺し、静脈瘤のなかを流れている血液を固めるという治療法です。
針を刺せば血が噴き出すはずの静脈瘤に、注射して血液を固めるーまさにコロンブスの卵でした。血液を固めるエタノールアミンオレイトという薬を注射すると、赤く腫れあがった静脈瘤はみるみる青くなり、更に白く変色し、最終的には静脈瘤が消えたのです。
私たちの肝臓内科(勤医協中央病院)でも高瀬先生の直接指導で、昭和58年(1983年)2月以降、この方法を導入しました。
それから食道静脈瘤の処置は一変しました。治療後3時間で歩いてトイレに行けるようになります。食事も治療当日から取ることができます。
このように食道静脈瘤の外科的治療でも、肝硬変の状態に変わりありませんから再発します。
当然内視鏡的治療でも再発することはありますが、何度でも手軽にできるのが強みで、命をかけるという悲壮な覚悟もなくなりました。外科的治療は終焉しました。
ところが術者が熟練しないと食道静脈瘤外に入り食道壊死になり、術後死亡した症例を2例経験しました。更に安全性を高めるため食道静脈瘤にインジゴカルミンを注入した後、食道静脈瘤であることを確かめた上で治療薬と造影剤を共に入れています。こうすれば安全です。技術はこのように積み重
ねられるものです。

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