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地味鉄庵

鉄道趣味の果てしなく深い森の中にひっそりと (?) 佇む庵のようなブログです。

ハノイ懐旧鉄散歩 (5) 中国国鉄25系客車

2012-04-02 00:00:00 | 中国の鉄道


 ダークグリーン天国の観があるハノイ北東郊の要衝・ザーラム駅。但しベトナム及びベトナムに国際列車を走らせている隣国の中国が計画経済の沈滞の淵にあった時代は遠く昔に去り、市場経済化とともに自ずと生じた商売っ気を受けて、カラフルな車両も当然のように留置されています。その中でもひときわ注意を引くのは……白いボディにオレンジ濃淡の帯が印象的な、新幹線サイズ・約25mの大型車! 中国・広西チワン族自治区の区都である南寧とここザーラムの間で毎日1往復運転されている国際列車に使用されている、中国国鉄の「紅皮車」です。
 ベトナムと中国のあいだには、1970年代末の中越戦争真っ盛りの頃はいざ知らず、長年国際列車が運転されておりまして、その最も代表的なものは毎週2本ある北京~ハノイ間の列車。しかし、この列車はメーターゲージ線路しかないハノイ駅まで行く関係で、ベトナム側のドンダン(同登)~ハノイ間はベトナム国鉄のメーターゲージ車両に乗り換え(改めて記事にします)。したがって、純粋な国際列車であるかというとやや難があるのですが、いっぽうこちら、2009年から運行され始めた南寧~ザーラム間の列車(何故かCNR全国時刻表の国際列車コーナーには記載無し! 京広線ゾーン・南寧~憑祥[中国側の国境駅]の欄に、特快T8701/8702として記載。国際列車としては大っぴらに宣伝せず、客が少ない場合にはこっそり「停運不開車」と宣う策略か……?)は、中国側が用意した標準軌の大型車5連+罐(罐は国境で交換)で運行されています。



 というわけで、駅舎から直接見えない位置で(余り駅舎から近いところで露骨に構内に入ると公安がすっ飛んで来ます……)そろりそろりと近くまでお邪魔しますと、をを~この紅皮車は1990年代テイストな25系といっても、窓がほとんど開閉しない多数派・25G系ではなく、当初ダークグリーンで製造されたと思われる2段窓車・25B系ではありませんか! しかも、タマ数がそもそも多くないと思われる25B系の軟臥車が4両も連結されている……! 
 いっぽう、ハノイ側に1両だけ連結された硬臥車は、なな何と!そもそもレアなYW22の冷房車 (80年代末か90年代初頭、北京~上海間などの「直達特快」用として製造されたもの、または非冷房車が圧倒的多数なYW22を何らかの理由で冷房改造して25系と混ぜ地方の優等列車に使用したもの)ではあるという……!! くぅぅ~、YW22に接近して写真を撮れなかったのが悔やまれます。この後、列車に乗って隣駅のイェンビエン(安園)に行くべく(その理由は別の記事で記します)、切符を買って正規に構内に入ったのですが、撮影に丁度良い位置は乗る列車が入ってくる線路の上ということで、駅員に「ここから先に出るな」と硬く戒められましたし……。結局こんなカット(2枚目)しかありません。
 それにしても、メーターゲージ主体のベトナム国鉄にあって、標準軌を採用しているのは北部の一部路線のみであり、とくにザーラムと国境のドンダン(同登)の間は御丁寧にも三線軌条を採用していますが、これもまた1960年代までの社会主義友好の時代の遺産と言うべきでしょうか。偉大なる中国の恩恵をベトナム人民にも及ぼすためにも、中国に通じる区間のドンダン~ザーラム間、及び枝分かれする資源輸送路線に標準軌を採用させ援助し、今でもこうして毎日1本「大中国」の体面をデカい車体及び側面の国章に体現させた客車を直通させているという……。いっぽうベトナム側は、そんな国際列車を受け容れつつも、とりあえずロンビエン橋は渡らせず(とゆーか現実的には、渡ったら重量オーバーでヤバそう ^^;)、こんな感じで近郊の駅の片隅に日中放置することで、中国の意図をしたたかにスルーしているようにも見えるのは興味深いところです (笑)。
 ※1……日本人がベトナムでノービザ待遇を得られるのは、空路出入国かつ帰りの航空券(またはEチケットをプリントアウトしたもの)を所持していることが前提ですので、国際列車or陸路での出入国の場合には予めビザが必要です。
 ※2……この記事は車両の所属に従って「中国の鉄道」カテゴリと致します。


 嗚呼! はるかカザフ草原の阿拉山口、モンゴル高原の満洲里、あるいは釜山から続く(都羅山と開城のあいだは一応レールがつながっています)標準軌は、南へ向かってここに尽きる……。
 それは同時に、帝都東京から昭南島(=シンガプラ)まで弾丸列車を通そうとした往年の日本人の野望も、とりあえずここで尽きていることを意味します。東南アジア諸国を縦断する将来の鉄道は、果たして標準軌とメーターゲージのどちらになるのか、そしてその勧進元は何処の国になるのか……?

中国の貨車を撮る@2006年・北京北駅

2011-09-16 00:00:00 | 中国の鉄道


 中国ネタでついでにもう一つ。最近中国の鉄道といえば、やれパクリだの事故だのといった理由でCRH・和諧号に強い関心が集まっていますが、これは所詮カネにものを言わせて外国から手っ取り早く技術を買ってきた底の浅いものに過ぎませんで、むしろ長年中国国鉄と付き合ってきた物好きなファンの視点からみれば、むしろ地味に走り続ける機関車や一般客車・貨車こそ中国国鉄の真髄であることに変わりはないと思う次第です。しかし、実際に中国で鉄道に乗り、あるいは時間を見つけて撮り鉄活動に興じるとしましても、デカくてイカツい罐や実際に自分が乗る客車に注目が行きこそすれ、罐に牽引されている貨車につきましては、余りにも茫漠として(そして大量にあり当たり前すぎて)逆に注意が向かないものです。



 しかし、恐らく本邦における中国&朝鮮半島貨車研究の第一人者にして、当ブログにもしばしばコメントを頂いておりますSY1698様がこのたび個人出版された『中国貨車論叢』(お台場での販売後、現在神保町書泉で販売中。700円) は、そんな漠然とした中国貨車の世界(そして中国国鉄そのもの)に歴史的視点から切り込んでおられ、車番の振り方や車両分類といった基本的なポイントは勿論のこと、貨物シーンから中国(そして北朝鮮)という国の本質や日中関係の曲折が浮き彫りにされています。傍目には最高にマニアックな世界ですが、ご関心をお持ちの方には大いにオススメです……。私も神保町で購入後、田園都市線の車内で一気に読了してしまいました (50050でしたが……汗)。
 とくにツボにはまった論点としましては、
*車両&鉄道技術輸出における日本の国家戦略の欠如
 (それを統計的に明らかにしている点が見どころ)
*今や中国全土を覆い尽くしている25系客車も基本的に日本技術の
 固まりであること(→しかし中国は日本に設計図のみ吐き出させて
 国有企業で製造。約20年前のRF誌に載っていた内容とのことですが、
 当時私は非鉄につき、このたび初めて知った次第……)
*日本の近年の鉄道技術輸出における中国の比重は激増する一方で
 あるゆえ、安易に関係を切れないこと。
*何にでも思いつきで口を出して現場を翻弄させ、結局経済建設の墓穴を
 掘りまくりな金日成のアホぶり。
……などなど。そして、偶然の目撃から資料を掘り起こされたという大連・甘井子埠頭のレポートは、何とも凄まじいスタイルの石炭積み電車にメロメロです (笑)。
 というわけで、激しく濃いぃ読後感も醒めやらぬうちに、自分のPCの中にある画像を漁ってみたところ、5年前に北京北駅にて撮影した貨車の写真が出て来ました (^^;)。上は何と検量車ですが、何故ウルムチ常備の車両が北京にいるんだろう……と (汗)。下はごくありふれた軽油用タンク車ですが、1車のみポツンと草むした線路に放置されているシーンは何故か絵になります (^_^)。

香港地下鉄・直流モーター車の悦楽

2011-09-15 00:00:00 | 中国の鉄道


 時計の針を5年前から再び半年前に戻しまして……震災直後、ネパールを訪れたついでに飛行機乗換のために訪れた香港では、主に東鉄線(九広線)に重点を置いて乗り・撮り鉄をしたのですが、そんな東鉄線をも合併して今や香港各地を股にかける香港鉄路公司 (MTR) はもともと地下鉄網(香港地下鉄)が母体。その実力を見せつけるかのように、香港の地下鉄は人の流れに合わせて稠密なサービスを展開しており、観光客は総じて2階建て路面電車・バスやスターフェリーに乗って移動したいと思うのをよそに、多くの香港住民は移動距離が近い場合を除き、あるいはルート選択上バス利用の方が便利であるという場合を除き、速く安く快適な地下鉄を大いに利用しているように見受けられます。そして、東鉄・西鉄線(西日本鉄道ではありません ^^;)や地下鉄線の主要駅にはバスターミナルが併設されており、さらなる郊外や団地へのアクセスも周到の極み。まさにイギリス的な合理主義がとことん応用されることで、恐ろしく過密な香港の都市交通が実にシステマティックに出来上がっている……と感嘆せざるを得ません (*^^*)。



 そんな香港の地下鉄、最も眼を惹くのは香港島とランタウ島(大嶼山)の空港及び東甬市街を高速で結ぶ機場快線/東甬線でしょうか(終点付近を除きほとんどの区間を共有し、機場快線は専用のデラックス車両を使用し停車駅も限定)。駅間が非常に長く、巨大な吊り橋などのダイナミックな構造物を通過し、最高速度も130kmを超えますので、並行して走る空港バス (系統番号にAが付きます) に乗車中あっという間に抜かれるたびに爽快な屈辱感(何じゃそりゃ)が全身にみなぎりますが (^^;)、いっぽう5扉ロングシート車が地下線内で激しく突進する光景も何やらSFチックな未来都市の乗り物という雰囲気があり、個人的には結構好きです (笑)。
 しかし、それ以上にそこはかとない親しみを覚えるのは、フツーの地下鉄路線で活躍するフツーの直流モーター車♪ 1994年に初めて香港を訪れた際には「ふーん」としか思わなかったのですが (^^;)、その後ロンドンを訪問して以来、側面の雰囲気が「ロンドンのSurface Lineっぽくてシブい♪」と思えるようになりましたし (Surface Lineとは、当初蒸気鉄道として建設された、地表近くを走る地下鉄路線のこと。車体断面は深部を走るTubeと異なり一般的)、何と言っても今や古くなった分だけ車内の雰囲気も落ち着いたものに感じられます。加えて走行音も直流モーターですので、「真面目に走ってます」感がひときわ強く感じられます……。最近中華人民共和国で雨後の筍のように増殖している地下鉄が如何にも安っぽい車体のVVVF車である分、余計に香港の英国紳士的な地下鉄車両がダンディに見えるのかも知れません……。

広州~九龍「直通車」を新界で撮る

2011-05-01 00:11:00 | 中国の鉄道


 広州と深センの間に和諧号CRH1が登場して以来、途中深センでの徒歩越境を含んでも広州~香港間を2時間半少々で移動できるようになっており (空いている場合)、次から次へと列車がやって来ることによる時刻表要らずな時代の到来によって、広東省と香港を結ぶ交通は大幅に強化されたかの感があります。とは言え、やはりボーダーや深セン駅での階段の上り下りは面倒であることも否めません。
 そこで、広州と香港の間をダイレクトでラクに移動したい向きには、客車列車で運行されている広州~九龍直通列車(広九[城際]直通車と呼ばれています) がオススメ。編成構成は、大陸持ち編成が一等車のみ、香港持ち編成 (時刻表では「九広通」と表記) が特等と一等の二種となっており、運賃は特等が香港ドル230元、一等が同190元。和諧号CRH1と東鉄線電車を乗り継ぐ場合と比べ、運賃は香港ドルで60元以上余計にかかり、乗車時間も2時間 (+広州東駅と紅磡駅でのイミグレーションに要する時間) ということで決して速くはありませんが、とにかく快適でラクであることは断言出来ます。



 そんな広九直通車ですが、近い将来には広州~香港をダイレクトに結ぶ新幹線を建設する計画があるようで、それが完成すれば消える運命……。まぁ、中国鉄道省の前トップが汚職で逮捕され、中国高速鉄道網をめぐるイケイケドンドン政策が大幅に修正されつつあるようですし、既に広州と深センの間に和諧号用の新線も存在する以上、香港までもう1本高速新線を造る必要があるのか?という批判とともに建設が中止となることも考えられます。とはいえ、香港という場所を中国からみれば、「イギリス帝国主義から取り返した、神聖なる祖国の統一を維持する象徴」でもある以上、意地でも採算度外視で建設する可能性あり……。
 というわけで、如何にもベッドタウンを行く近郊鉄道という雰囲気が漂う香港の東鉄線内で、突然場違いな (?) 客車列車が現れるシーンを激写するのも今のうちかも知れません。あるいは、客車列車を止めて和諧号CRHなどEMU・DMUによる運行に改められるとしても不思議ではありませんので (以前も一時期、一部列車が「新時速」なるEMUによって運行されていたようですが、何故オール客レに戻ったのかは不明)、興味のある方はお急ぎを。急ぐ必要がないに越したことはありませんが。
 今回はとりあえず、CRH1を観察したのち午後2時半過ぎに香港側に戻り、「そういえばそろそろ直通車が来る頃だなぁ……」ということで某駅にて待ち構えたのですが、電車を追い抜くことが出来ず性能を完全に持て余しまくりな韶山8型[※1]+25K系客車がノッソリと接近するシーンに「をを~、5扉電車が頻繁運転する路線に客レが現れる違和感、何とも言えないのぉ~」とニンマリ (^^;)。欲を言えば、1970年代末に登場し、世界最貧国のひとつであった当時の中国では破格の豪華さを誇った初代の「直通車」用車両・東風4型DL[※2]+初期型RZ25客車が現役で使用されていれば狂喜乱舞モノですが (私が1995年に初めて直通車に乗った際にはこの編成でした……遠い目)、今や初期型RZ25は第一線を退き、広東省周辺の短距離列車などに連結されて余生を送っているようですので、まぁムリか……。
 その後もうしばらく撮り鉄しておりますと、今度は牽引機こそ同じ韶山8型であるものの、客車は豪華な軟臥車ばかりの25T系 (2枚目)! この列車は北京西・上海南との間をそれぞれ隔日運転で結んでいる長距離列車であり、出入境手続は始発・終着駅で行うため、途中駅で機関車を付け替える等の目的で停車時間が設定されているとしてもホームに出ることは不可というシロモノ (汗)。北京・上海と香港の間は飛行機の便が頻繁にありますので、この列車はもっぱら安いツアー御用達の感があるようですが、出来れば高級軟臥車を1部屋貸し切って乗ってみたい気もします。

[※1]韶山=毛沢東の故郷。中国の国産交流ELが長らく名乗ってきた形式名。
[※2]東風=「東風 (社会主義) は西風 (資本主義) を圧する」という往年のスローガンに由来。中国国産電気式DLが長らく名乗ってきた形式名。

中国広深線「和諧号」CRH1に乗る

2011-04-18 12:00:00 | 中国の鉄道


 今回の香港訪問では、ついでに4年8ヶ月ぶりに中華人民共和国のフツーのエリア (特別行政区ではなく、中国共産党の完全な独裁下) に入ってみることにしました。まぁ東鉄線の釣掛に乗ったついでに落馬州から徒歩で深セン[土+川]に入り、17年ぶりに深センの街を眺め、深セン駅前から再び徒歩で香港側の羅湖に戻るというだけの、超安直で短時間な日帰りツアーに過ぎませんが、何はともあれ4年数ヶ月のうちに「凄まじく経済発展した」という中国が本当にそれに見合った変化をしているのかどうかを感じ取るには、たとえ速攻ツアーでも行かないよりはマシだろうということで……(^^;
 というわけで、まずは境界の川を渡って深セン側の出入境事務所に入りますと、無駄に巨大で安普請なハリボテビルの中、出入境管理官がニコリともせずノービザ訪問スタンプを押してくれまして、「ぬほっ♪この《中国の特色ある》雰囲気、昔と何も変わっとらん」と思わずニヤリ。さらに無駄にデカい空間を通って地下鉄4号線の福田口岸 (口岸=ボーダーの意) 駅に行きますと、片道切符は硬貨がないと買えず、ICカード「深セン通」は10元札以下では買えず、ホームに下りる階段の間隔と水平はメチャクチャ、ホームドアが完備されたホームの構造物も歪みと隙間多数……。「《最も先進的な経済都市》の、開通したばかりの地下鉄でこの超テキトーさである以上、たとえGDPが日本を追い越してどれだけデカくなろうとも、この国に職人魂や「匠」の精神なんて根付いているわけないぜ! 日本の科学技術は震災でどれだけ傷つこうとも世界に冠たるものではないか?」とつぶやきつつ、ボンバルディアの技術供与を受けた電車に乗って1号線の起点・羅湖 (深セン側) に向かいますと、出口の先には17年前にも眺めたCNR深セン駅ビルが! 17年前には駅周辺の巨大建築と言えば駅ビルと出入今日事務所の建物のみでしたが、今や駅前広場の周囲を高楼大厦が取り囲み、駅前広場も多層化されて浦島太郎気分に……(^^;
 深セン駅からは中国各地へ向かう長距離列車も出発していますが、今や深センを発着する列車の大多数は、ここ4~5年のうちに急激に整備・増発された電車 (動車組=Multiple Unitと通称)「和諧号」が占め、しかも約10分間隔で広州との間を頻繁運転していますので、この「和諧号」と東鉄線を乗り継いで広東省と香港の間を往来する客が常に深セン駅と出入境事務所の間に満ちています。そんな光景を眺めているうちに、ふと「このまますぐに香港側に戻るのではなく、ちょこっと話のタネとして和諧号に乗ってみたい」という欲求がムラムラと……。私が4年8ヶ月前に北京を訪れた際には未だ北京~天津間の和諧号は登場しておらず、いろいろな意味において巷で話題の和諧号の何たるかを直接見聞していなかったため (汗)、「時間にも少々余裕があるのでここらでひとつ、百聞は一見に如かず」と思った次第です。



 そこで早速、深セン駅の和諧号専用切符売場・待合室に向かい、広州まで往復すると時間を相当食ってしまうことから途中の東カン[くさかんむり+完]まで一等車の切符を購入したのですが、とりあえずこの1往復で得た印象を総合しますと……「車両のハード面はそれなりに。しかしその他諸々の設備やサービスは《?》がいっぱい」といったところでしょうか。

◎ボンバルディアの基本設計によるCRH1の走行性能や乗り心地自体は十分快適。
◎線路も標準軌+重軌条の完全新線 (貨物・客車列車と分離) で、増発への余力あり。築堤や堀割が多く、他の中国高速鉄道新線のような高架線ではないため、軌道は割と安全?
◎最高時速は200kmという触れ込みながら、100数十kmで流しているのだろうか?と思う区間が多い? とは言え昔に比べれば十分過ぎるほど速く利便性が高いのは確か。
◎深セン駅の和諧号待合室でミネラルウォーターを無料配布していたのは良し。

●しかし何故……一等座車でも窓と座席の「割り」が合わない集団見合い席で、回転もリクライニングもしないのか? 2+3列の二等座車と比べごく僅かに高い一等運賃は、所詮「2+2列ゆったり料金」を上乗せしているに過ぎないのかも……。
●和諧号専用待合室と改札口は、出来て間もないにもかかわらず狭くてボロい。しかも列車ごとに相当ギリギリにならないと改札を行わないため、客が狭い待合室にあふれ気味。改札が始まる前にはいつもの中国らしく、先を競う客が狭く密集し殺気ムンムン (滝汗)。こんな雰囲気でどこが「和諧」だよ……と(-_-;;)。
●深センでは発車直前にようやくホームに入ることが出来、しかも他のホーム入口には立入不可のロープが張られているため、ロクに駅撮り出来ない……。
●東カンにて、発車まで余裕がある直近の深セン行・一等座車の切符を購入しようとしたところ、即座に「没有!」と言われ、出て来たのは3本後の二等座車の泣く子も黙る《無座》切符……。しかしその列車に乗る際、一等座車が満杯であるようにはとても見えず……。単にキーボードを叩くのが面倒だったために売らなかったことが想像され、「中国の特色ある」「人民のために服務」しまくりなサービス態度発動! (-_-;;) あるいは別の可能性も……(以下をご覧下さい)。
●では、3本後の無座切符しか買えないほど全ての列車が満席だったのかと言えば、決してそんなことはなく……。3本後の列車が来るまで、見かけ倒しの暗くてボロい待合室でくすぶるよりも、さっさとホームに入って撮り鉄したいと思い、1本目の改札の際にムリヤリ素知らぬ顔で入ってしまったところ、乗車率には余裕がありまくり (怒)。恐怖の「無座」と切符に表記するくらいなら、単に「自由席」という扱いにしてくれよ……と思うものの、そういえば中国において「自由」は政治的に敏感すぎる言葉であることを思い出しました (爆)。また、1本目の発車間際には、ホームの駅員に「お前乗らないのか?!」と言われ、「私の切符は3本後のもの。写真を撮りたいからさっさと入った」と返したところ、「その切符で乗っても構わんぞ!どうする?早くどちらかにしろ!」と叫び返される有様 (-_-;)。車内では検札をしているわけでもないため、どうやら途中駅からの利用客には原則として無座しか売らず、指定された列車に関係なく勝手に乗って良い……ということが見えて来たのですが (それとも不可なのでしょうか? 教えてエライ人! ^^;)、それにしても何故3本後を売ったのか?……全くナゾ。広州東駅を当該列車が空席ありで発車した直後、東カン駅に「んじゃー今からその列車の無座を○枚売って良し!」という電話連絡でもあるのでしょうか?? 長距離列車の切符が今でも駅ごとの割当制になっている一方、和諧号は全てコンピュータ仕掛けで販売しているのではないのか?と思うのですが、どうやら未だそこまで完璧なシステムではないらしい……。
●東カン駅での撮り鉄は、線路と線路の間にヤケに高い柵があるだけでなく、ホームの駅員が如何にも「お前何しに来た?」と言わんばかりの突っ慳貪な態度につき (しかも広東語なまりで聞き取りづらい……)、極めてやりづらし。「我是喜歓中国火車的日本游客!」と叫んでムリヤリ撮影 (汗)。

……というわけで、旧来のテキトー・ちぐはぐで利用者のことを余り考えていない建築・システム・サービスのため、折角の車両の印象が薄れて何やら感じの悪い、「和諧」(ハーモニー) とはほど遠い「和諧号」になってしまっているのではないか……と思った次第です。
 そんな「和諧号」、CNRはもとより中国政府・メディアを挙げて「時速350kmを国産技術で実現させた我が国の高速鉄道技術は世界に冠たるもの! 北京~上海開業のあかつきには時速380km実現! 日本のパクリ批判はただの嫉妬」などと騒いでいたものですが、最近の報道 (とくに、リンク頂いております『中国鉄道倶楽部』ボーゲン様のブログからリンクされていた中国『火車票網』記事が詳細)を見てみたところ、北京~上海開業に伴う全国ダイヤ改正では「安全上の余裕を確保し、沿線サービスを図る200~250km/hの列車を混ぜてダイヤを組むため」、北京~上海を含む基幹路線でも最高速度を300km/hに抑えて営業するとのこと (既に350km/hを実施している路線を含む)。恐らく、安普請な突貫建設に伴う巨大なリスクを考慮せざるを得ず、かつ技術を供与した日本等外国企業の批判や警告を無視して強引に350~380km/h運転を行うことの弊害も顕在化しているのかも知れません。
 その裏に横たわるもう一つの大問題としては、超イケイケドンドンで高速鉄道網拡張に邁進した劉志軍・前鉄道相が、その裏で巨額の汚職をやらかして共産党員資格停止・全ての公職解任という処分を食らっている事実を考えてみなければなりますまい。共産党幹部の天文学的数字にのぼる汚職に対しては、中国一般庶民からの批判が常に沸騰していますので、この先裁判が開かれれば、恐らく見せしめで死刑判決が出る可能性が大 (執行猶予が付くかどうかは分かりませんが)。そこで、汚職にまみれているだけでなく、今後巨額の累積赤字や手抜き工事 (豆腐渣=おから工事と通称されます) に伴う大事故を生む可能性がある高速鉄道網については、これ以上センセーショナルにアピールすることなく、出来るだけ堅実な経営に徹しなければ様々な面でまずい……という政治的判断もあるのでしょう。いやはや、日本の新幹線を推進した十河国鉄総裁は今でも立役者として顕彰されていますが、中国の高速鉄道を推進した鉄道相の名は永遠にNGワードになるとは……。これもひとえに、何事も《中国の特色ある》という、国際標準や普遍的価値との摺り合わせを拒否して自らの狭い価値観や既存の社会的弊害に閉じこもることを良しとするかのような、共産党は大真面目のつもりでも思わずプッと吹き出さずにはいられない形容詞抜きでは語れないテキトー中国らしさの発露であるのかも知れず、高速鉄道も例外でないとは……(苦笑)。勿論、日本も油断すればこうなるわけで、他山の石とするべきではありますが。