--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

安全講義

2005-12-10 | しらせ便り
今日は安全講習のメールが届きました。
4日から行われていたということは「しらせ大学」と平行して行われていたということ?
なかなか忙しいんだー。
この日の夜8時の気温は1.0℃
ずいぶん寒くなりましたね。

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2005年12月9日(金) 曇り 「安全講義」

観測隊では夕食後の時間を利用して安全講義が行われる。
これは南極活動中の隊員の安全を守るため、様々な分野から注意点を喚起し、対策などを伝え、作業を円滑に進めるために行われるのだ。
4日は一般的な事故例を白石隊長から。
事故例の紹介は全員集合の時にも行われたのだが今回も数例紹介された。
一回の説明だけではなく必要なことは何回も何回も紹介される。
これは事故例だけでなく、全てのことがそのように感じられる。
専門以外は素人集団である観測隊では、話を何度も何度も聞くことによって深層に焼き付けておく効果があるからなのだろうと思う。

5日は勝田さんの輸送、森山さんの車両等の取り扱いについて。
輸送は輸送の役割と段取り、車両等の取り扱いでは安全に関する約束事等が示された。
独特なものとしては、
警笛を1回鳴らして最低3秒待った後エンジンスタート、
2回鳴らして最低3秒待って前進、
3回鳴らして最低3秒待って後進、がある。
もちろん目視は必須なのであるが、雪上車は後方視界が特段に悪いのでこのような約束事ができているのであろう。

6日は神蔵さんの夏作業についてと、原ドクの応急医療について。
夏作業についてはヘルメット、安全長靴の着用が必須だ。
またそれほど高くないところからの飛び降りにも要注意とのこと。
油断することもあって、これに起因する事故が多いという。
医療については応急処置方法が示された。
また擦過傷については閉鎖治療をすることが示された。
あまりなじみがないかもしれないが、近年では閉鎖治療(湿潤治療ともいう)が勧められていると医療関係の友人から聞いていた。
これまでの知識では、消毒の後ガーゼを当てるというのが順当な治療法だと思う。
ところが、この方法だと自然治癒力をも殺してしまい、かつ治癒しかけた傷もガーゼを取るとき剥いでしまうのだ。
南極で閉鎖治療が行われるようになったのは46次隊からだとのこと。
また低体温症の場合、軽度なら暖めるが、中度なら保温程度にとどめなければならないらしい。
急激に体を暖めると末端の冷たい血液が心臓に到達して危険を招くようなのだ。
また今回からAEDも装備したとのこと。

8日は三浦さんの野外活動一般についてと、中本さんの通信について。
野外活動一般では最悪の事態を予期した準備および行動と、
単独行動の基本的な禁止がkeyと思われる。
常に強風が予測されるためキャンプの配置にも注意が必要だ。
風で飛ばされた物資がテントを直撃しないよう、テントは一番風上側に設置する必要があるのだ。
通信では通信方法の概略が示された。
近距離はVHF、中遠距離はHFが主で、イリジウムがサブ。
なんといってもHFは同報通信であるので、会話はワッチしている全ての人に聞こえる。
全体の行動の上では都合が良いのだ。
ただしHFは安定性に劣るとのこと。
通信状態が悪い時にはイリジウムを迷わず使ってくれとのこと。
なによりも定時交信の大切なのだ。
音信普通だと本部は捜索隊を出さなければならず、その場合隊全体に多大な影響を及ぼすのだ。

そして最終日9日は、成田さんの気象についてと、安藤さんの環境保全。
気象は日焼けに関する注意や、強風など天候が急変することがあるということ、環境保全では分別処理の徹底や、野外活動中の廃棄物の処理についての説明がなされた。
詳しく紹介できる機会は後々あるだろうと思う。


1306UTC +700 南緯60度09分 東経106度36分 自針255度 対水速度16.8kt
天気曇り 気温1.0度 真風向100度 真風速10.5m/s 相対風速6m/s

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今日は昭和基地での安全講習会のことを記事に用意していたのですが、しらせのなかでも安全講習が行われていたのですね。
それも連日(7日はなかった?)行われていたとは。
確かに、昭和基地に着いたらすぐに作業や調査が始まりますから、みんなで集まってしっかり講習するには「しらせ」の中がうってつけですね。

安全講習の中身が多彩なので、どうしようかな。
まず5日目の車両等の取り扱いについて。
雪上車自体が大きくて視界が悪いという以外にも、風雪でウインカーやブレーキランプが見えないことが多いようなのです。
南極で1年4ヶ月生活したあとに街に戻って車を運転した際に、ついクラクションを鳴らしてしまったなんていう元隊員さんの記事を読んだことがあります。
身についているってすばらしい!
でも、他の車はびっくりしたでしょうね。
1度でなく、クラクションが2回鳴ったり3回鳴ったりするんですものね。

6日目の湿潤治療(モイストヒーリング)の話、これは私も個人的には3・4年前から仕事では一昨年から本格的に取り入れています。
医療関係の友人から聞いていたというのは私のとこかな?
そういえば、昭和基地では閉鎖療法やってるのかな?っていう話をしたおぼえがあります。
46次隊から取り入れているとのこと、実践者としては大賛成です。

傷は消毒するとケガをした以上に痛くて嫌だし、かわいそう。
傷は消毒しなくても水できれいに洗っておけば自然治癒力で治る。
傷は乾くと痛い。かさぶたは割れるとすごく血が出る。
そこで、出会ったのが湿潤療法という考え方でした。
さっそく実践してみての利点を挙げてみます。
消毒しないので痛くない:水でもいいけど、生理食塩水だともっと痛くないです
傷が乾かないので痛くない
何といっても治りが早い!!
どうすればいいかは、乾かなければいいだけなので、ラップを巻いたりドレッシング剤で密閉したり、場合によってはワセリンを塗っておくだけのときもあります(必ずしも密閉の必要はないです)。
心配な人は市販のハイドロコロイド「キズパワーパッド」がお薦めですが、お値段が高いんですよね。
ですから、私はサイズが豊富な「マメ・靴ずれ用ブロック」(外反母趾用とかもあります)を使います。
傷に使用するな(滅菌処理をしていないだけだと思います)と書いてはあるので、子どもには使いませんが、何の問題もないです。
あ、こんな話をしていると終わらないのでやめておきますが、私が参考にしているサイトを紹介しておきます。
「新しい創傷治療」
はじめて知る人には目からうろこかもしれません。

8日目の通信について。
これは観測隊では命綱なのだと、いろいろな場面で感じます。
私は無線の資格を持っていないし知識もないのですが調べながら疑問も交えて書いてみようと思います。。
違っていたらどなたかチェックを入れてください。
VHF(Very High Frequency 超短波)はテレビの一般チャンネルのイメージなのですが、あってるかな?
アマチュア無線でも近距離の通信に使われているようです。
UHF(Ultra High Frequency 極超短波)は観測隊では使われていないのですね。
HF (High Frequency 短波)海外をはじめ遠くの局との交信ができると書いてありました。
うまくすれば日本のたんぱ放送が昭和基地でも聞けることがあるのでしょうか?
航空交通管制通信(ATC)から航空機へはVHF無線電話、HF無線電話が使われているとも書いてありました。

イリジウムについては衛星電話の認識でよいかなと思います。
かつては日本でも取り入れられた衛星電話ですが、いつの間にか撤退していました。
でも、今年6月より日本国内での使用ができるようになったとのこと、山ヤさんには朗報ですね。

イリジウム衛星システムは、地球上空約780kmを低軌道で周回する、北極から南極にまたがる6つの軌道上に11機ずつ66個の衛星を利用して、それぞれの衛星が通話をリレーし、地球上の全ての地域をカバーする衛星移動体通信なのだそうです。
インマルサットなどの衛星船舶電話に比べると、低い軌道上を飛んでいるとのこと。

当初、77機の人工衛星を打ち上げて携帯電話の基地局としようとして、77という数字にちなみ、77番目の元素と同じ名前「イリジウム」と名付けられたそうですが、実際には66機なので「ジスプロシウム」のほうがよかったりして。
参考サイトの一部
イリジウムオフィシャルサイト(英文)
イリジウムについて

長くなってしまったので、今日はこの辺で終わりにします。
昭和基地の「安全講習会」の記事はまた後日。

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