--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

夜間氷上輸送(1)

2007-01-04 | 南極だより・作業
帰ってきて年賀状を見ると、出してない人から続々きていました。
職業柄予測していたこととはいえ、年明けに60枚も年賀状を書くのは(しかもパソコンに住所が入っていない人ばかり)年末の忙しさを思い出すようです。
といいつつ、友人と遊びに行ったりしてまだ書いていないのですが。
昭和基地でも、年賀状書きをはじめている頃でしょうか。
忙しい夏作業の合間をぬって年賀状を書くのは大変だけれど、「しらせ」が出港するまでに書けばいいので、ちょっとだけ猶予がありますね。
4月に届く年賀状もなかなかいいものです。
それでは、渡井さんからの南極だよりです。
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2007年1月3日(水)快晴 夜間氷上輸送(1)

しらせと昭和基地の間は離れているので、ヘリコプターや橇を使って物資を輸送する。
ヘリに載らない長大物や重量物は氷上輸送するのだが、特に重量物は氷上が安定している夜間に行うのだ。

持ち帰りの氷上輸送が昨晩から始まった。
持ち込み氷上輸送は海氷上が48次担当、島内が47次担当であったが、持ち帰り物資は全て47次の担当だ。

しらせ側の作業時間が2100から430頃までなので、それに合わせた日課となる。
前日は午後に仮眠を取る人も多かったようだが、自分は観測作業があるので、日勤の続きで夜間氷上輸送に突入した。

2000にトラック置き場に集合し見晴らしに移動。
海氷との境目にラフターを備えつけ、トラックで運んできた物資を橇に積み替える。
それをSM40で引っ張ってしらせの左舷につけ、前方のクレーンを使ってハッチに格納する。

自分の担当はSM413の運転。
冬季とまったく氷上が異なっているのがわかる。
しらせの付近にはパドルのできかけも見え始めているし、たいていの場所では雪がぐしゃぐしゃで、特に見晴らしの荷揚げ場付近は砂のようだ。
アクセルを吹かしても雪を掻いてしまうのがわかる。
こういう時はある程度スピードをのせてテンパーを当てながら走ると走りやすい。
砂漠を走っている感覚を思い出した。

が、荷を積んでいる時はそうはいかない。
氷上で荷物を橇から落下させてしまったらその回収は大変だ。
2速でじわりじわり、ゆっくりと橇が平らな箇所を通るようにトレースを選んだ。

夜半から吹き出した10m/sを超える風は、物資の橇への固定には非常に辛い条件となった。
久しぶりに手がかじかむ。

持ち帰り物資の主なものは廃棄物。
今日輸送したのはリターナブルパレット40個弱とスチコン50個前後、それに古タイヤが入ったかごパレット8個だ。
皆、これだけ長い時間一緒に過ごしていると相手の行動もわかってくる。
てきぱきと作業が進み、思いのほか作業が早く進んだので、予定していた3日の作業を2日に縮めることができそうだ。


#ここから作業が始まります。

#雪はザラメ状になってしゃりしゃりです。

#この雪上車は渡井さんの運転したSM413と同型

#リターナブルパレットを囲んでしらせからクレーンが下りてくるのを待っているようです

#北を頭にした「しらせ」の左舷に斜め後ろ(南西)から陽が当たっていて、夜の作業だということが分かります

-----1月3日本日の作業など-----
・氷上輸送(SM413で見晴らし<>しらせ)
・月例報告
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・氷上輸送(SM413で見晴らし<>しらせ)

<日の出日の入>
日の出 なし  
日の入  なし  
<気象情報>
平均気温0.3℃
最高気温3.1℃(1752) 最低気温-3.4℃(0419)
平均風速4.2m/s
最大平均風速10.9m/s風向E(0240) 最大瞬間風速16.0m/s風向E(0442)
日照時間 23.9時間

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昨夏はできなかった念願の?氷上輸送をすることになったのですね。
雪上車が行き来するのが、私の中では当たり前になってしまったのですが、海氷は海の表面が凍ったもの。
数mの厚さがあるとはいえ、船が氷を割って入ってくることができるくらいなのですから、不安定なのですよね。
白夜の南極ですが、夜中になれば太陽が低く気温が下がるようです。
この時期は昼間はおおよそプラス気温で、夜はマイナスになるようです。
今回の氷上輸送があった2日の21時から3日の7時までも気象庁webで調べてみると、やはりマイナス気温になっています。
それでも、昼間の太陽にさらされた雪はどんどん溶け、日本でもよく見るようなザラメ状の雪になってしまっているようです。
スキー場でも午後のザラメ雪はとても滑りにくく歩きにくいのですが、雪上車も同じような感覚なのでしょうか?
渡井さんのように砂漠をバイクで走った経験はないので、どういう感じなのか・・そういえば、砂浜にワゴンを乗り入れで抜け出すのに苦労した経験があったのでした。
そういう感じなのですね(しみじみ納得しました)。
また、パドルができはじめているとのこと。
パドル(綴りは「pudlle」でそのまま「水溜り」という意味)とは、海氷上に積もった雪が解けて水溜りになったもの、さらには海氷そのものが溶け始めたものと説明してあるものが多いです。
海氷上に出るときは、靴の裏の泥をよく落として泥や砂を持ち込まないようにしなければならないというのがよく分かります(雪を溶かしたいときには砂を撒いてアルベド(日射の反射率)を小さくしていました)。

そんな中、氷上輸送で運んだものはリターナブルパレットの重さと、スチコンの写真を参考にざっと考えると、100t近くあるでしょうか。
私の車でいえば100台近くになる重量(運んだ荷物の概算があたっていれば)。
運ぶのは人力ではないとはいえ、積み替えや固定もあり、しかも夜中の作業ということで、生活リズムが崩れてしまい、大変だったと思います。
みなさん、お疲れさまでした。

この日、夜中に強い風が吹いたとのこと。
ニッカンのブログでも、Pテンが飛ばされそうになった記事が出ていました。
気象庁webの時間ごとの風速を見てみると、午前3時から6時までの間は10m/sほどの風が吹いていたようです。
また、渡井さんからの南極だよりの「気象情報」を見ると、最大平均風速10.9m/s風向E(0240) 最大瞬間風速16.0m/s風向E(0442)となっており、やはりこのくらいの時間帯にかなりの風が吹いたのだということが分かります。
冬時期の過酷な気候に比べ、風も天候も穏やかな昭和基地周辺。
そういえば、昨年の今頃も観測のために4-5m/sくらいの東北東の風待ちをしていたのを思い出しました。
冬になればこの寒さもまだ序の口なのでしょうが、47次隊はもう強烈な寒さを体験せずに帰ることになるのですね。

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