--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

ナンキョククリオネ

2005-12-09 | しらせ便り
「進め!しらせ」や赤字の「自針」から、ほぼまっすぐに南下を続けていることがわかります。
時差日本との時差も5日以降1時間広がった-2時間のままですし(日本と昭和基地の時差は-6時間です)。
8日の午前11時過ぎに南緯55度を越えたということでした。
南極収束線のただ中にいるのですね(今日あたりは60度を越え、南極地域に入ったかもしれません)。
そんなことを窺わせるような渡井さんからのしらせ便りが届きました。

※南極収束線:南緯50度から60度付近にある南極海流と亜熱帯海流の境界。
       この境界をはさんで水温が2~3℃異なり、塩分濃度も急激に変化する。
       プランクトン量も海中のCO2量も劇的に違ってくるそうです。

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2005年12月8日(木) 曇り 「クリオネ」


停船観測は順調に進みSt.4まで進んだ。
メインの観測は南北線に沿った観測であるので明日のSt.5を過ぎれば一山越える。
そこから進路を西にとるのだ。
今日の観測ではノルパックネットにクリオネが引っかかった。
海の妖精などとも呼ばれ日本ではオホーツク海で見ることができる。

数年前流氷を見に厳冬期の紋別を訪れたことがある。
港近くの水族館で飼育?されているクリオネを見ることができたのだが、 海水がにごっていていまいち鮮明ではなかったのだ。

今回引っかかったクリオネは体長2cmほど。
立派である。
ところがビンに入れて保存しておいたところ元気がなくなってしまった。
ビンは部屋の中においてあるので少しずつ水温は上昇する。
暖かい海水の中では生きていけないのだ。
通常は冷蔵庫に保存し観察する時には部屋に出すことにする。
こうすれば長い間見ることができるであろう。

しらせ乗員の方々もクリオネは珍しいようで、 代わる代わる海洋生物観測室である第5観測室を訪れる。
5観はこれまでにないほど賑わったのであった。

夜は5観の盛況を祝って海洋観測グループの方々と祝杯をあげる。
今航海初めての宴でもあった。


1351UTC +700 南緯56度33分 東経109度20分 自針186度 対水速度12.9kt
天気曇り 気温3.2度 真風向50度 真風速3.2m/s 相対風速5m/s

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南極にもクリオネがいるんだー!
知らなかった。
調べたところによると、正式名称はナンキョクハダカカメガイというらしい。
オホーツク海に流氷とともにやってくるクリオネ(ハダカカメガイ)とはほとんど同じなのかな?なんだか不思議ですよね。
だって、クリオネって赤道を越えるとは思えないから、それぞれの海で同じような発生があったか、海が暖かくなった時に北と南に分断されたかどっちかなわけでしょう?
その2種類のクリオネがこれから会うことなんて想像もつかないし、長いあいだに色も少し変わってしまったみたいだから、お互い会っても仲間だと気づくかどうか分からないし(←全然科学的でない発想)。
調べていたらちょっと心配なことが書いてありました。
地球上の二酸化炭素の増加によって、およそ50年後には南極海で炭酸カルシウムが溶け始める海域が現れ、続いて北太平洋亜寒帯域で影響が出ると予測されるのだそうです。
海洋生物が作る炭酸カルシウム(CaCO3)には、動物プランクトンの1種である翼足類(翼足といわれる羽のような器官を用いて浮遊することができる貝類のひとつ)やサンゴの殻や骨格のもとになっているアラゴナイトと植物プランクトンの円石藻や動物プランクトンの有孔虫の殻のもとになっているカルサイトの2種類の結晶があって、アラゴナイトのほうがカルサイトより溶けやすいのだそうです。
今後も大気の二酸化炭素濃度が上昇し続ければ、今世紀末までには、南極海全体と北太平洋の一部の海域でこれらの生物が殻を育てることができないくらい溶けやすくなるのだという研究がされているというのです。
2100年に予測される酸性化した条件で海洋実験をした結果、アラゴナイトでできている殻はわずか48時間で明らかな溶解を示したとなっていました。
クリオネも翼足類の一種です。
成体は殻を持っていませんが、幼生はアラゴナイトの殻を持っているため、やはりこの危機にさらされるといっていいのでしょう。
この記事はここから


ん?クリオネって動物プランクトンなの?
そんなこと考えたこともなかったけれど、確かに浮遊している・・。
ということはノルパックネット(プランクトンネット)に引っかかったというのは、実に当たり前のできごとだったのか。


そうそう、私が網走に行ったとき、クリオネを見ました!
それも今回の記事と同じくビン詰めです。
クリオネはうまく写っていませんが、この写真のようにボウルに氷水を入れてその中にクリオネ入りのビンをつっこんでありました。
クリオネはとってもご機嫌そうにゆらゆらしていました。
5観でも部屋に出した時はそうすればいいのにー。

「しらせ」乗組員の方たちが作っている毎朝の番組「グッドモーニング!しらせ」(見てみたーい)というのがあって、それによると昨日はペンギンちゃんも見ることができたのだとか。
イルカのように跳ねていたということでした。
このあたりでも常に鳥が見られるようです。
ミズナギドリの仲間らしいのですが「陸上からは相当離れているのだけれど、海に浮かんで休むというわけでもなさそうだし、ずっと飛び続けているのだろうか(渡井さんのメールより)」
海に浮かんで休んでいるカモメとかよく見かけるからときどきは休んでいるんではないかな?と私は思うのですが、どうなんでしょうね。
確かにキョクアジサシみたいに北極から南極まで2万キロくらい飛んでくる鳥もいるくらいだから、少々陸地がないくらいだったら休まず行ってしまう可能性もあるかもしれないけど。
私のお気に入りのユキドリもミズナギドリの仲間。
まだ、ユキドリには会えてないかなぁ?

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