--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

インテルサット回線減速工事

2006-09-05 | 南極だより・作業
今日はまだ、通信が復旧しないと思っていたのだけれど、予定より早く復旧。
ということで、ちゃんと南極だよりが送られてきました。
それでは、さっそく渡井さんからの南極だよりです。
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2006年9月4日(月)雪 インテルサット回線減速工事

9月3日にグランドフィナーレを迎えた南極展は入場者数も20万人を超え、予想以上の人気だったようだ。

南極展の一つの目玉である昭和基地と南極展会場を結ぶライブステージのために、一時的に増速されていたインテル回線の減速工事が、石井さんと蓮池さんによって行われた。
この工事では一時的に2Mbpsに増速されていた回線を1Mbpsに落とす。
折角上げた回線速度を落とす理由は、インテルサットを運用している会社に払う経費を削減するためだ。

工事はインテルシェルタに石井さん、通信室に蓮池さんがスタンバイし、お互いPHSで連絡を取り合いながら行っていた。
減速に伴うおおまかな作業は、送受信のシグナルの周波数を代え、さらに出力レベルを調整するとのこと。
これを山口のKDDI通信局との間でも調整しながら行うのだ。
昭和での作業時間は0800-1700ほどで、対応する日本での時間は1400-2300と時差がある。
どうするのか思ったが、日本側は勤務がシフト制なので24時間対応可能であり問題ないとのことだ。

今回初めてインテルシェルタに入ったのだが、思いのほかコンパクトに機器が纏められていた。
メインの機器は4つのラックに納められている。
それぞれが機能毎にユニット化されているのだが、すべてのユニットに「現用」と「予備」がある。
回線が途切れることは絶対に避けなければならないので、こういう仕様になっているのだろう。
ただ残念なことにこの切り替えは全て手動で、ユニット裏の配線を一個一個繋ぎかえるらしい。
全自動でできる装置もあるとのことだが、石井さんの見立てによると極研の予算がなかったに違いないとのこと。
ちなみに9/15-16に現用機と予備機の入れ替えが予定されている。

さて4つあるラックは、左から送信用のハイパワーアンプ(HPA)、次が送信用および受信用の周波数変換コンバーターである。
インテルサットではCバンドの周波数を使用しており、送信用(UPLINK)では70MHzから6GHzへ、受信用(DOWNLINK)では4GHzから70MHzに変換している。
その下にあるのは送信用のコントローラーだ。
インテルシェルタと通信室との間では信号を光ケーブルでやりとりし、通信室で変調または復調しているのだ。
左から3番目のラックは各機器のモニタシステムだ。
一番右はアンテナの制御部。
ビーコンのやりとりから衛星の位置情報を割り出し、1時間に一度アンテナの向きを微調整しているとのことだ。


-----9月4日本日の作業など-----
・論文
・データバックアップ
・新聞取材&発行
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・炭素同位体比分析用大気採取
・二酸化炭素精製
・温室効果気体濃度分析用大気採取

<日の出日の入>
日の出  7:28
日の入  17:16
<気象情報>
平均気温-21.3℃
最高気温-19.5℃(1315) 最低気温-23.8℃(0355)
平均風速6.4m/s
最大平均風速13.1m/s風向NE(1620) 最大瞬間風速17.4m/s風向NNE(1354)
日照時間 0.0時間

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増速工事をしたのが2ヶ月前で、通信停止のは、日本時間の7/3 9:00(昭和の7/3 3:00)から日本時間の7/5 24:00(昭和の7/5 18:00)まで(インテルサットの一時停止)でした。
実際には、7-8時間ほど早く復旧しました
そして、今回の減速工事は通信停止は、日本時間の7/4 10:00(昭和の4:00)~5日24:00(昭和の18:00)でした。
今回も実際には7時間ほど早く復旧していました。
作業そのものは、どうやら4日の14:00-23:00に行われたもよう。
作業が終わっても、すぐに通信が再開するのではなく、昭和基地での作業が他にもあるのでしょう。
2Mbpsだった期間はちょうど2ヶ月、2ヶ月分の出費はどれくらいだったのでしょうね。
この増速工事及び減速工事は、まさに南極展のライブステージのためのもの。
増減速工事だけでなく、ライブステージのときには、蓮池さんはほぼ付きっきりで、石井さんも多くの回を担当されていたと聞いています。
多くの子どもたち、そして年配の方までもホールの床に腰を下ろしライブステージを楽しんでいました。
本当に、お疲れ様でした。
そして、楽しませていただいてありがとうございました。

南極教室をやったときは回線速度が1Mbpsだったのだけれど、南極展に行ったのが1ヶ月後だったので、回線速度が倍になることでどういう変化があったのか、注意しておくのを忘れてしまいました。

さて、南極だよりを送ってもらったり、昭和基地WEBカメラ リアルタイム画像を見たり、子どもたちに南極教室をやってもらったり、今となってはほぼ欠かすことなく毎日お世話になっていて、足を向けては寝られないインテルサット。
一日つながらなくても、寂しい存在になってしまいました。
でも、インテルサットについて詳しいことは何にも知らないのでした。
先日の南極展で初めて日本側の送受信が山口県(KDDI山口衛星通信センター)で行われていることを知ったほどで、全く勉強不足です。
また、電波とか周波数とかにも疎いのです。
Cバンドといわれて、はて・・聞いたことはあるけれど、それはどういうもの?

インテルサットは「国際電気通信衛星機構」のことで、それぞれの国が管理運営する地上部分に対して、静止通信衛星と関連する施設(宇宙の部分)を提供している国際機関(1964年に11カ国が加盟した暫定組織として発足し、1973年に「インテルサットに関する協定」および「同運用協定」が発効)だそうです。
私は長いこと、インマルサットとの違いが分からずにいたのですが、インマルサットは移動衛星通信で、インテルサットは静止軌道の通信衛星を通じて常に同じ地点の間を結ぶ形態を固定衛星通信なのでした。
そして、インテルサットを使った通信には大きなアンテナが必要だということも分かりました。
昭和基地にあるインテルサットアンテナは直径が7.6mもあります。
一方、インマルサットのアンテナは「しらせ」や内陸旅行用の雪上車SM100にもつけられるほどの大きさでいいということなのですね。

日本側の送受信、KDDI山口衛星通信センターにある2基のインテルサット用アンテナは34mほどあるようです。
KDDIは茨城県にも茨城衛星通信センターを持っていますが、どうして山口県で送受信しているのでしょう?
それはどうも、インド洋上にある静止衛星でやりとりしているからみたいです。
山口県は本州の一番西にありますので、茨城県よりはインド洋上の衛星を見通せるわけですね。
それでもかなり仰角が小さいようで、webで見た写真ではアンテナはすっかり起き上がったような角度になっていました。
KDDI山口衛星通信センターは「パラボラ館」という資料館も備えているようで、一度訪れてみたいと思いました。

#南極展で展示してあったインテルサットのアンテナ情報

Cバンドについても調べ始めたら嵌ってしまったのですが、もうタイムアップ。
いずれまた、話題にできるときがあれば書こうと思います。

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