今回のIntermissionはロマンスノベルの「お約束」に関してです。
ロマンスノベルはちょっと濃厚なラブシーンはお約束ですが、このために偏見を抱かれることが多いです。女性のための官能小説だと思っている人はたくさんいます。実際は、ラブシーンのないロマンスノベルもある物と同じ数だけ存在します。どちらにしろ、ロマンスノベルの醍醐味は主人公達のロマンス(二人の関係)なので、ラブシーンはロマンスをスパイス・アップする役目を果たします。実生活でだってセックスと恋愛は切り離せないじゃないですか。
ロマンスノベルではもう一つお約束で、これも偏見の的、「Happily Ever After」ハッピーエンドがあります。お話は全部ワンパターンでしょ、と決め付ける人達がいます。 メルボルン在住のHR作家アン・グレイシーが自身のホームページで言うように、どんな分類の作品もテーマは毎回同じです。推理、ホラーなど。でも、どのようにして話が展開するのかが毎回違うのです。推理小説では毎回謎が解決されるように、ロマンスノベルでは、主人公達が色々な困難を乗り越えて最終的に幸せな結末を迎えます(Ann Gracieのホームページ)。
ハッピーエンドは現実の世界では保証されることがないと分かっているだけに、毎回読み終わると幸せな気分になれるので、ロマンスノベルは病み付きになります。現実逃避と少し幸せな気分に浸りたい時にはロマンスノベルは最適です。
内容の質に関して言えば、ロマンスノベルはエンターテイメント・フィクションであり、文学とは違います。確かに、ひどいものはたくさん出版されています。でも、本を読む目的が違うのですから双方の質を比べるのは不毛です。
いずれにしても、読者が満足する作品に仕上げるのは、作者次第です。
さらに、お話のヒーロー達が女性の理想そのものであるというのもロマンスノベルのお約束事です。ヒロインも女性自身の理想のイメージにそうようにしてあります。 このように小説の中でヒーローやヒロイン達が女性の視点から描かれるようになったのは、少なくともイギリス文学史上では18世紀にフェミニズム(女性も男性と同じだけの知性があるのよと主張する程度)の動きがあり、女性の感受性や恋愛結婚を美化した小説が出始めた頃からです(参考文献:Katharine Roders. 1982. Feminism in Eighteenth Century England. Urbana: University of Illinoi Press.)。
当時のこういった小説は、女性もNoと言うことができる、嫌な結婚には同意しなくてもいい、という新しい考えを浸透させる目的がありましたが、現代ではエンターテイメント目的のために女性のファンタシーを増長させているので、男性と女性の恋愛観のギャップを広げる働きもしています。
「こんなにも男性心理がわかるこの作家はすごい!」なんて感想をよく見かけますが、現実とのギャップに気づいたときにあまりショックを受けないよう祈るばかりです。
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