さいえんす徒然草

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フラーレンの抗アレルギー作用

2007-07-10 14:31:15 | 材料・技術
フラーレン(C60)は炭素原子60個からなるサッカーボール状のユニークな形をした分子ですが、形もさることながら様々な面白い性質が発見されており、材料分野などでの応用が期待されています。このC60には、生物に有害である活性酸素などのラジカル類を消去する作用があることも分かっていて、医薬品分野でも注目されているそうです。

 バージニア州を拠点とするナノテク関連企業 Luna Innovations の研究チームは 、C60 に特定の官能基を付加して親水性を上げることで抗アレルギー薬としての作用を向上させることができるとJournal of immunology(179:665-672)に発表したそうです。医薬品としての期待の一方で「C60は人体に対して何らかの有害性があるのではないか」という懸念があるそうですが、この改良版のフラーレンでは今のところ目に見える副作用はないそうです。

 この改良版のフラーレンを免疫応答に関わる人間のマスト細胞と一緒に培養し、いくつかのアレルゲンを与えたところ、フラーレンが無い対照区に比べヒスタミン(アレルギー反応の指標の一つ)の放出量が半減しました。またマウス個体による実験でもフラーレンの投与によりアレルゲンに対するヒスタミンの放出量がやはり激減し、アナフィラキシー反応に伴う体温の低下が抑えられたようです。

 ヒスタミン放出量だけでアレルギー反応が抑えらるかどうかは分からないという専門家の指摘もあるようですが、臨床試験の結果が非常に興味深いと期待されいてます。

 どのようなメカニズムでフラーレンがヒスタミン放出を抑えているかは今のところ分かっていません。ただ、活性酸素種の増加がヒスタミンの放出量が増加に関連しているということが知られているので、恐らくそれらの活性酸素種をフラーレンが消去することでヒスタミン放出を抑えているのではないかと研究チームは考えているようです。

<参考>
Buckyballs could help fight allergies(Nature@News)
有機化学美術館

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