さいえんす徒然草

つれづれなるまゝに、日ぐらしキーボードに向かひて

ES細胞から分化させた人工精子

2006-07-11 23:04:47 | 分子生物学・生理学
 胚性肝細胞(ES cell)は胚由来のどんな組織の細胞にも成りうる万能性を持った細胞です。基礎研究の材料として現在用いられていますが、将来的には再生医療などの応用的な利用も期待されます。反面、「受精後」の卵(この時点で人間が誕生したとみなす考え方がある)から採取するため倫理的に微妙な問題も多く含んでいます。

 ジョージ-オーガスト大学のKarim Nayerniaらは、マウスのES細胞から分化させた精源細胞から作り出された精子が、メスの卵子を受精させる能力があることを示しました。受精した卵子は実際に発生が進み、成体まで成長したそうです。この技術は配偶子形成メカニズムの基礎研究にとって大いに役立つだけでなく、不妊治療にも大きな福音となることが期待されます。

 残念なことに、生み出されたマウスは「正常」ではなく、成長の異常や呼吸障害などが見られたようでそのまま治療に応用することはまだ難しいようです。なぜ「正常」でないか?ということも非常興味深いテーマになりそうですが。


参考:
'Lab-made sperm' fertility hope (BBC)
ES細胞精子から子ども誕生 マウスで成功 (asahi.com)