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大人になると「親友」ができにくくなる本当の理由【精神科医が解説】

2024年04月23日 09時05分30秒 | メンタルヘルスのこと>心の健康
大人になると「親友」ができにくくなる本当の理由【精神科医が解説】

子どものころは自然と友達ができていた人が多いでしょう。社会人になると、なかなか新しい友達はできにくくなります。それはなぜでしょうか、精神科医が解説します。※本連載は精神科医である和田秀樹氏の著書『孤独と上手につきあう9つの習慣』(大和書房)から一部を抜粋し、再編集したものです。



12/14/2021


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「出会いの数」が少ない人の習慣

■「大人になったら親友ができない」はウソ

 みなさんにも心当たりがあるかもしれませんが、一般的に「親友」と言ったとき、社会に出る前に培った友人関係を指すことが多いようです。 大人になってからは仕事関係で出会う人が多くなり、遠慮も働いてズケズケとモノを言ったりできず、なかなか親しい間柄にならない。そういう話はよく聞きます。 たしかに子ども時代の友人というのは、長い時間を共有してきているので、他に代えがたい存在かもしれません。 

でも、大人になったら親友ができない、というのはウソです。 私が見ている限りでも、介護に悩む人たちが集う場で50代、60代の人たちが仲よくなり、お互いにいろんな相談をして支え合っている姿がありますし、定年退職後に将棋クラブなどで切磋琢磨するうちに、いい飲み仲間になって楽しい時間を過ごせるという姿もあります。

 私自身、幼いころはいじめられっ子で、なかなかうまく親友と呼べる友人を作ることができませんでした。むしろ大人になってから出会った人のほうが、何でも言い合えるよい関係、尊敬できる関係を築いているように思います。 では、大人になってから親友と呼べる存在がいない人は、いったい何が問題になっているのでしょうか。 

ひとつには、「大人になってからは友達が作りにくい」「大人になってからの友達には本音を言いにくい」という思い込みが、メンタルブロックになっていること。 

もうひとつは、「現代版・会社人間」に陥っていること。 ひと昔前の「会社人間」とは、仕事に一途で、会社が生活のすべてであるという人のことを言いました。すべてが仕事優先で、趣味もなく、会社のためにプライベートを犠牲にしても厭わないという人です。モーレツサラリーマンなんていう言い方もされましたね。 

でも「現代版・会社人間」は、会社に滅私奉公をするつもりはさらさらなく、プライベートも大事にしたい。それでも会社と自宅にしか自分の世界がない、という人です。 モーレツに仕事をしたいわけでもないのに、居場所だけは会社人間とまったく同じ。 毎日が会社と自宅の往復ばかりで、そこだけにしか自分の世界がない。それが「現代版・会社人間」です。

 自宅というのは基本的にはひとり、もしくは家族など身内だけの世界ですから、社会とつながれるのは会社オンリーになってしまう。人との出会いのほとんどが会社の人間、仕事関係の人間に限られてしまう。 つまり、出会いの数が少なすぎる。出会う人全員と親友になれるわけではありませんから、出会いが少なければ、それだけ親友になれる人との出会いの可能性も少なくなってしまうのです。


1度目の緊急事態宣言で自殺が減ったワケ

■「ひとりの時間」が充実している人 コロナ禍による自粛は、人間生活に半ば強制的な孤独をもたらすものでしたが、テレワークやEラーニングでストレスが減って楽になった、という人も確かにいるようです。 2020年最終的に残念ながら自殺は増えたわけですが、1度目の緊急事態宣言の段階では、私たち精神科医の予想に反して、自殺者数はむしろ減っていました。

 最近、夏休みが終わった9月1日に、子どもの自殺が増えることが問題にされています。 それだけ学校が始まるということが、学校のわずらわしい人間関係の再開ととらえる子が多いのでしょう。 おそらく、それは会社でも同じ。 Eラーニングやテレワークのほうが「楽だ」「落ち着く」と感じる人がそれだけ多く、コロナ自粛が人間関係のストレスから逃げる好機になったのかもしれません。 人間関係というのは、ともするとわずらわしさが先に立って、「面倒だ」「ひとりのほうが気楽でいい」という発想に傾きがちです。だけどそればかりでは、新しい人間関係、新しい世界の広がりをみすみす放棄することになってしまいます。 

くり返しになりますが、 孤独が人によい作用をもたらすのは、完全な孤独のなかではありません。 人とのかかわりがあってこそ、はじめて孤独のメリットを得られるもの。 人とのかかわり合いは、私たちにさまざまな視点があることを教えてくれます。自分の発想とはまたひと味違う意見があることに気づかせてくれます。 ひとりの時間にとりとめなく考えたことでも、人に「こんなことを考えたんだ」と話すと、そこからまた思考が広がっていくというのもよくあることです。

hiとりで延々と考えていても、なかなか思考の広がりは得られません。 それに、ひとりの時間は、人とのかかわり合いがあってこそ貴重なものになるのです。 ずっとひとりで過ごしていたら、なんとなくネットをしてみたり、ゲームをしてみたり、時間潰しのようなことばかりになってしまうでしょう。 私たちはひとりの時間を大切にするためにも、人とのコミュニケーションが必要です。そしてそのコミュニケーションにも、より広がりを持たせていかなくてはならないのです。


会社と自宅以外に自分の居場所を作る

■「カウンター席のある飲み屋」の効果 

テレワークになってからほとんど会社の人とはプライベートなコミュニケーションをとらなくなってしまった人や、それ以前から会社と自宅の往復ばかりになっている人は新しい世界を求めて行動を起こしてみましょう。 コロナ自粛で、確かにボランティア活動は減っているし、スポーツクラブも疎遠になりましたが、それほど感染が広まっていない地域であれば、必要以上に恐れることはなく、心や体の健康を守るという姿勢も大切です。 またSNSなどを通せば、疎遠になっている昔の友達や同級生に連絡がしやすくなっているし、同じ趣味の人間の輪に入りやすくなっています。 もちろん特別「人と出会わなきゃ!」と思う必要はありません。何か行動を起こしているうちに、新しい人間関係が生まれてきたりするものです。 私がコロナ禍でいちばん危険だと思っていることは、自粛は感染予防のためのものなのに、本来の会食や人との接触がいけないことのような雰囲気が生じてしまったことです。

 本連載書でも問題にしてきたように、気の合わない人と無理につきあう必要はありませんが、気の合う人を見つけて、遠慮のいらないコミュニケーションをとることはメンタルヘルスにとてもいいことです。 だから、コロナの感染が収束に向かい、ワクチン接種によって、それほど怖い病気でなくなったら、その後、どんなことをしてみようと想像するのも大切なことです。 私のおすすめは、カウンター席のある飲み屋です。 こうしたお店ではマスターや他のお客さんとちらほら会話を交わすこともたまにあるので、普段知り合うきっかけのあまりない人と意気投合するというラッキーに遭遇することがあります。 新しいお店に行くと、なにか催し物のお知らせを発見したりすることもあります。私はワインが好きなので、ワイン会のお知らせなどを目にするとかなり興味を惹かれます。ワイン会にはもともとワイン好きが集まるのですから、話が弾む確率も高まるでしょう。 

こんなふうにして、会社と自宅、それ以外にもう1つか2つ、自分の居場所を増やしてみる。 もし会社と自宅にしかあなたの居場所がないとしたら、会社で人間関係がうまくいかなくなったとき、他の逃げ場がないということになってしまいます。会社でランチを食べる相手がいなくても、別の場所でランチを食べる相手がいれば、少しは気持ちがやすらぐでしょう。 人とかかわることを「面倒だな」と避けてばかりいないこと。

「うまくいけば仲よくなれるかも」くらいの気分で、気楽にかかわってみるのがポイントです。 気が合う人がいなければ、もっと気の合う人を求めて次の場所に移ればいい。「好かれよう」「嫌われたくない」と過剰に思う必要もない。 フットワークを軽くして人とかかわっていれば、そのうち自分が「面白いな」と思える人にも出会えて、人生で大切な時間を過ごせるはずです。 和田 秀樹 和田秀樹こころと体のクリニック 院長


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