神田沙也加さん、突然の訃報 報道を見てつらい人の心の対処法
写真はイメージです。(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
俳優で歌手の神田沙也加さんの突然の訃報という報道は多くの人に衝撃を与えました。ショックで気持ちが落ち込んだという声を多く聞きます。テレビや映画で見聞きしていた神田さんの笑顔や歌声を思い出してつらいとおっしゃる方もいます。
身近な人の突然の死は大きな衝撃ですが、実際に面識がなくても普段テレビで見てファンになったり、身近に感じている人の死も大きな衝撃になります。そこで身近な人や身近に感じている方の死という衝撃を受けたとき、どのように自分の心を癒すか、について考えてみたいと思います。
面識がないが身近な人の死
実際に面識がなくても身近に感じている人が急死した場合、気がかりなのが「ネガティブな同一化」です。自死の可能性もあるという報道を見て、自分もゆううつになったという方はこうしたネガティブな同一化に陥っているリスクがあります。身近な方の死により、身体的不調をきたしたり、自分も死にたくなったりすることが多くなることがあります。これがネガティブな同一化です。
特に同じような年代の方にとっては衝撃は大きく、今現在つらい環境で過ごしている方は「神田さんのように華やかに活躍している人が急に亡くなるということは、自分などはうまくいくわけがない」というように感じてネガティブな同一化を起こしてしまうリスクがあります。
どう対処すればいい?
まずは「言語化」をお勧めします。言葉にしてつらい気持ちや悲しい思いを表現することが大事な癒しへの一歩になります。「実際には知らないけれど身近に感じている人がなくなるとつらいね」というように、つらさを表現することは大事です。
同じ思いをしている方は多いと思います。ただしSNSに投稿する際に注意していただきたいことは、周囲の人に対する非難や憶測は絶対にしてはならないということです。そのうえでつらい気持ちを表現し、同じつらさを感じている方と語り合い支えあう場を築くということが大事でしょう。
自分の気分をチェックしよう
また、ご自分の気分のチェックをしてください。10が最高に精神的に元気、1が最低としたとき、毎日のほとんどが3以下という状態が10日以上続く場合は、心療内科などを受診してください。そこまでひどくはないが5程度が続いている場合は、以下の対策をとってください。
1.テレビや新聞、インターネット上の関連ニュースをしばらく遮断する
2.深呼吸とストレッチを朝、昼、夜の決まった時間に5~6分ずつ行う
3.朝窓を開けて太陽の光を浴びる
4.散歩したり運動したりする時間を毎日20分ほど作る
5.自分の好きな音楽に合わせて身体を動かす
6.料理づくりなどに集中したりしてみる
7.自分の気持ちを受け止めてくれる人と話をする
つらい感情を言葉だけでなく身体を通して表現すること、またネガティブな感情が入り込めないように集中することなどは、心の回復に有効です。ネガティブな感情に引きずり込まれてその波に入らない時間を作ることをなさってください。
12/21/2021
海原純子博士(医学)・心療内科医・日本医科大学特任教授
東京慈恵会医科大学卒業。同大講師を経て、1986年東京で日本初の女性クリニックを開設。2007年厚生労働省健康大使(~2017年)。2008-2010年、ハーバード大学大学院ヘルスコミュニケーション研究室客員研究員。2013年より日本医科大学医学教育センター特任教授。2018年昭和女子大学特命教授。復興庁心の健康サポート事業統括責任者(~2014年)。被災地調査論文で2016年日本ストレス学会賞受賞。日本生活習慣病予防協会理事。日本ポジティブサイコロジー医学会理事。医学生時代父親の病気のため歌手活動で生活費を捻出しテレビドラマの主題歌など歌う。医師となり中止していたジャズライブを近年再開。