>兄さんは、この世に居ないような気がするのだが?
“爆破女”の裏で正恩氏“沈黙”の重大異変! 「与正談話」援護射撃で妹の実績アピールか 7・7金日成氏命日の行事に注目
脱北者団体による体制批判ビラ散布をきっかけに北朝鮮が韓国への攻勢をエスカレートさせている。気になるのが韓国への罵倒の限りを尽くす金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の存在が前面に出る一方で、兄の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働委員長が沈黙を守っていることだ。正恩氏はどこにいて、何をもくろんでいるのか。
◇ 17日の聯合ニュース(日本語電子版)は、正恩氏の国内視察用専用機が首都の平壌(ピョンヤン)近郊から、東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)方面に飛行したと報じた。同機には正恩氏が乗っていた可能性が高いという。
正恩氏が、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)3基を搭載できる新型潜水艦を建造中の造船所がある新浦(シンポ)に向かったとの見方も出ている。
与正氏は今月4日に、脱北者を「ゴミ」と呼び、南北軍事合意の破棄などを警告する談話を発表した。13日の談話では開城(ケソン)の南北共同連絡事務所の破壊や軍事的措置に言及、「わが軍隊が人民の怒りを多少なりとも鎮められる何かを決心して断行するだろうと信じる」として、予告通りに16日、爆破を実行した。
そして17日の談話では韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を「名ばかり大統領」「主人(米国)の顔色ばかりうかがっている」とののしるなど、こわもてぶりを定着させた。正恩氏とともに金日成(キム・イルソン)主席の直系「白頭の血統」である事実上のナンバー2としての位置付けが定着しつつある。 与正氏が表舞台に出る一方で、正恩氏は今月7日に党政治局会議に出席したという様子が朝鮮中央通信に報じられたが、脱北者団体によるビラ散布についての正恩氏の談話は確認されていない。
ただ、苛烈きわまる「与正談話」の背後には、正恩氏の存在があるというのが専門家の見方だ。 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「正恩氏が最終的に決定したシナリオに与正氏が乗っているもので、兄の手を離れていることはないだろう」と語る。
「これまで米朝首脳会談や平昌(ピョンチャン)冬季五輪などでも与正氏が正恩氏に付き添い、秘書的な役割を果たしてきたが、2人で表に出れば、妹の実績にならない。与正氏をアピールをするためのパフォーマンスではないか」
英BBC(日本語電子版)も、一連の北朝鮮の挑発行為について、「与正氏の正統性を補強しようという、北朝鮮国内の動きに関係するのかもしれない」などとする識者の分析を掲載した。
正恩氏の動静をめぐっては、今年4月11日の党政治局会議出席が伝えられた後、20日間公に姿を見せなかったこともさまざまな憶測を呼んだ。
海外メディアは、正恩氏が心血管系の手術を受け、現在も療養中だと伝えたほか、米CNNなどが「重病説」を報じた。 正恩氏はメーデーの5月1日には西部・平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)の肥料工場の完工式に出席し、テープカットを行ったと党機関紙などが大々的に報じ、健在ぶりを誇示した。
ネット上では一部で根拠不明ながら「影武者説」も流れるほか、健康不安説も根強い。
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長の高英起(コウ・ヨンギ)氏は、「正恩氏は、南北問題は与正氏に任せている。心疾患の後遺症で無理をできない状況にあるのかもしれないが、有事があったわけではないだろう。7月7日は金日成氏の命日であり、可能であれば、ふさわしい行事に出てくるのではないか」とみている。
北朝鮮の朝鮮労働党統一戦線部は20日付の報道官談話で、南北間の合意が「いまや紙くずになった」と主張、文大統領を非難するビラの散布を決行する立場を表明した。党機関紙の労働新聞は、文氏の顔写真を印刷したビラの上に、たばこの吸い殻をばらまいた写真を掲載した。
韓国の脱北者団体がコメを入れたペットボトルを北朝鮮に流す計画は中止となったが、別の団体は25日前後に再びビラ100万枚を北朝鮮へ飛ばすと予告している。
与正氏の新たな罵倒談話や軍の施設爆破などが出てくる場面もありそうだ。