「イーロンは間違っている」「リストラが続くやり方では絶対にうまくいかない」元Twitterジャパン社長が語った「アメリカ型経営の限界」 (msn.com)
〈 「自分には能力がなかった」どれだけ助言をしてもイーロン・マスクは聞く耳持たず…元Twitterジャパン社長が語った「退職の真相」 〉から続く
8/14/2024
「経営者と現場の乖離があまりにも大きすぎる。この20年ぐらいで特にアメリカで進んでいる状況ですが、これは問題だと思います」
「経営者と現場の乖離があまりにも大きすぎる。この20年ぐらいで特にアメリカで進んでいる状況ですが、これは問題だと思います」
――元Twitterジャパン社長が、世界的経営者イーロン・マスク氏と働いて感じた「アメリカ型経営の限界」とは? 新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 前編を読む )
元Twitterジャパン社長が語る「イーロンの問題」とは? ©文藝春秋(左)、Getty(右)
元Twitterジャパン社長が語る「イーロンの問題」とは? ©文藝春秋(左)、Getty(右)
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イーロンの周辺が気を使ってくれた
イーロンのまわりの人たちは、実はけっこう私に気を使ってくれました。評価してくれていたのかはわかりませんが「もう一度イーロンと話してみたら?」と提案してくれたんです。「イーロンは決断を変えることがあるから『残ってくれ』という話になるかもしれないよ」と。
でも私は、一度決めたら前に進むしかないと思いました。後ろを振り向くのが嫌だから、イーロンに撤回を頼みたくはなかった。そうしてしまうと「イーロン教」に入ったことになる。洗礼を受けてしまうことになる。だから私の中では、すごく偉そうに言うと「イーロンにゴマをする必要はないな」と思ったのです。
もしイーロンが私を必要として「どうしてもやってほしい」ということだったら喜んでやります。でも、今のイーロンのやり方では絶対にうまくいかないと思っていました。だから私は抜けてしまった。
仮にTwitterにいたところで、何もできないと思うのです。「こうやるべきだ」という彼の価値観と、私の考え方は相反している。
どういう人を残して、どういう人は辞めてもらったほうがいいのか。そういう細かい話を彼はしたくない。そういうスタンスです。ならば、誰に辞めてもらうのか、選ぶのは任せてほしいとも思っていましたが、そこは任せられないという。
意味のわからないリストラが続く状態では、誰もうまくやっていける人間はいないわけです。大本を直さないと、絶対に直らない。同じことを繰り返していくだけです。
みんなのボーナスや、報酬内容も相当変わってしまいました。
そこに対してイーロンは「未来に期待してね。今は耐えてね」と社員に言い続けるのですが、それは都合が良すぎると思いました。
売り上げが大きく落ちた責任はイーロンにあるわけです。もしくは彼の周囲にある。それはシリコンバレーの経営者、みんなに言えることだと思っています。
たとえばマーク・ザッカーバーグも「メタバースだ」とぶち上げたのに、ぜんぜんうまくいっていない。そのため大きなリストラを繰り返していますが、やはりおかしい。
経営者と現場の乖離があまりにも大きすぎる。この20年ぐらいで特にアメリカで進んでいる状況ですが、これは問題だと思います。
「イーロンは間違っている」
いまになって、その歪みがいろんなところで噴出している。大本である経営陣が姿勢を正さないと、いくら現場で頑張っても改善できないと思うのです。
そう考えると、短期的には従業員を守る「昭和型の経営」がドライブしていくかもしれませんが、状況はまたすぐに変わっていくでしょう。
たとえば、AIを中心に産業が盛り上がっていけば、すぐにTwitterの社員は自分から辞めていくかもしれない。
そうなるまでに、いまのTwitterが人を必要としない自動化されたプラットフォームになっていればいいですが、さすがのイーロンでも1年やそこらでそれを達成するのは難しいように思います。ましてや、今のエンジニアの数では到底無理。
私はやっぱり間違っていると思うのです。
(笹本 裕/ノンフィクション出版)