“裏金派閥パーティー”の元凶は小選挙区制だった…自民党ご意見番は「政党交付金の制度もおかしい。まず党、次に派閥がピンハネ、最後に…」(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
“裏金派閥パーティー”の元凶は小選挙区制だった…自民党ご意見番は「政党交付金の制度もおかしい。まず党、次に派閥がピンハネ、最後に…」
12/12(火) 6:20配信
デイリー新潮
松野博一官房長官
12/12(火) 6:20配信
デイリー新潮
松野博一官房長官
「中選挙区制は候補者同士、つまり人と人との戦いです。自民党の新人議員が中選挙区制で立候補する場合、まずは自民党のライバル議員と戦うことになります。出馬前から政策を練り、支援者と意思疎通を密にし、勉強を重ねることで鍛えられました。一方、小選挙区制は党と党の戦いです。自民党の公認さえ得られれば勝てる選挙区もあります。そのため政治家として精進する必要性は乏しくなります。閣僚の不祥事が起きると『なぜ首相はあんな議員を抜擢したのか』という疑問の声が上がりますが、あれは順番が逆です。自民党でもそういうレベルの議員が増えており、そうした議員を起用せざるを得ないというのが実情です」(同・深谷氏)
1988年の「リクルート事件」級の“疑獄”に発展するという声も出てきたが、本当だろうか。FNNプライムニュースオンラインは12月7日、「【独自】岸田首相が岸田派会長を退く意向固める 政治資金問題受け『会長を続けたままで信頼回復できるのか』批判も」との記事を配信し、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。
【写真】パー券を大量に売り捌き「9000万円裏金」を作っていたとして名前が上がっている「安倍派4回生議員」 収入を過少申告していた各派の長たちも
***
この日は共同通信も「安倍派『裏金』9千万円超議員も 特捜部、還流の経緯捜査」との記事を配信し、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。担当記者が言う。
「自民党の各派閥は、政治資金パーティーを開きます。その際、所属議員はパーティー券を売りさばくよう命じられ、ノルマも科せられます。ところが、ノルマを超えた売上は議員にキックバック。おまけに政治資金収支報告書には記載せず、裏金にしているという実態が明らかになってきました。刑事告発も行われ、東京地検特捜部が捜査を始めています」
国民の強い批判の声を受け、岸田文雄首相が自身の派閥の会長を退任すると報じたのがFNNの記事。安倍派全体での裏金は5年間で1億超、派の中には5年間で9000万年の裏金を作った議員がいる、と関係者の取材を元に報じたのが共同の記事だった。
この問題で安倍派の塩谷立座長は、11月30日、キックバックについて「あったと思う」と発言。すぐに撤回したものの、かえって信憑性が増してしまった。
「塩谷さんは1990年初当選のベテラン議員です。記者との受け答えの様子を動画で確認すると、普通に本当のことを喋ってしまったと見るのが自然でしょう。実際、キックバックの手法などを考えると、昨日今日に始まった“裏ワザ”とは思えません。塩谷さんのようなベテラン議員にとっては、見慣れた光景という可能性があります」(同・記者)
中選挙区と小選挙区
そこで“自民党のご意見番”として知られる元衆議院議員の深谷隆司氏に取材を依頼した。深谷氏は1935年生まれで、現在は88歳。1972年に初当選し、郵政大臣、自治大臣、通商産業大臣を歴任した大物議員だったが、2009年の衆議院選挙で落選。12年に引退を表明した。
政治資金パーティーによる裏金作りをどう見ているのか、深谷氏は「中選挙区制と小選挙区制の違いが如実に表れました」と言う。
「私たち一家は旧満州のハルピンから無一文で引き揚げ、都営住宅で生活を再スタートさせました。親父は靴職人だったので、私には政治家としての地盤もカバンも看板もありません。それでも国会議員になれたのは、必死で票とブレーンを集め、資金援助をしてくれる企業を見つけたからです。当時は企業の政治家個人に対する政治献金が認められていました。中選挙区時代の私の選挙区は旧東京8区で、中央区、文京区、台東区。ここで数百社の企業から支援を受け、月に2万円の会費を負担してもらいました。年間にすると数千万円の政治資金を自前で確保していましたから、パーティー券を苦労して売ったことはありません」
現在のように政治資金パーティーが盛んに開かれるようになったのは、1994年に小選挙区となり、政党交付金制度が95年に始まったことが要因だという。
1988年の「リクルート事件」級の“疑獄”に発展するという声も出てきたが、本当だろうか。FNNプライムニュースオンラインは12月7日、「【独自】岸田首相が岸田派会長を退く意向固める 政治資金問題受け『会長を続けたままで信頼回復できるのか』批判も」との記事を配信し、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。
【写真】パー券を大量に売り捌き「9000万円裏金」を作っていたとして名前が上がっている「安倍派4回生議員」 収入を過少申告していた各派の長たちも
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この日は共同通信も「安倍派『裏金』9千万円超議員も 特捜部、還流の経緯捜査」との記事を配信し、YAHOO! ニュースのトピックスに転載された。担当記者が言う。
「自民党の各派閥は、政治資金パーティーを開きます。その際、所属議員はパーティー券を売りさばくよう命じられ、ノルマも科せられます。ところが、ノルマを超えた売上は議員にキックバック。おまけに政治資金収支報告書には記載せず、裏金にしているという実態が明らかになってきました。刑事告発も行われ、東京地検特捜部が捜査を始めています」
国民の強い批判の声を受け、岸田文雄首相が自身の派閥の会長を退任すると報じたのがFNNの記事。安倍派全体での裏金は5年間で1億超、派の中には5年間で9000万年の裏金を作った議員がいる、と関係者の取材を元に報じたのが共同の記事だった。
この問題で安倍派の塩谷立座長は、11月30日、キックバックについて「あったと思う」と発言。すぐに撤回したものの、かえって信憑性が増してしまった。
「塩谷さんは1990年初当選のベテラン議員です。記者との受け答えの様子を動画で確認すると、普通に本当のことを喋ってしまったと見るのが自然でしょう。実際、キックバックの手法などを考えると、昨日今日に始まった“裏ワザ”とは思えません。塩谷さんのようなベテラン議員にとっては、見慣れた光景という可能性があります」(同・記者)
中選挙区と小選挙区
そこで“自民党のご意見番”として知られる元衆議院議員の深谷隆司氏に取材を依頼した。深谷氏は1935年生まれで、現在は88歳。1972年に初当選し、郵政大臣、自治大臣、通商産業大臣を歴任した大物議員だったが、2009年の衆議院選挙で落選。12年に引退を表明した。
政治資金パーティーによる裏金作りをどう見ているのか、深谷氏は「中選挙区制と小選挙区制の違いが如実に表れました」と言う。
「私たち一家は旧満州のハルピンから無一文で引き揚げ、都営住宅で生活を再スタートさせました。親父は靴職人だったので、私には政治家としての地盤もカバンも看板もありません。それでも国会議員になれたのは、必死で票とブレーンを集め、資金援助をしてくれる企業を見つけたからです。当時は企業の政治家個人に対する政治献金が認められていました。中選挙区時代の私の選挙区は旧東京8区で、中央区、文京区、台東区。ここで数百社の企業から支援を受け、月に2万円の会費を負担してもらいました。年間にすると数千万円の政治資金を自前で確保していましたから、パーティー券を苦労して売ったことはありません」
現在のように政治資金パーティーが盛んに開かれるようになったのは、1994年に小選挙区となり、政党交付金制度が95年に始まったことが要因だという。
政治資金の枯渇
「私は政党交付金制度について最後まで強く反対しました。有権者には、自民党の支持者もいれば共産党の支持者もいます。ところが、課税は一緒くたですから、皆さんの税金はごちゃ混ぜになって政治家に届けられる。これはおかしいと言ったんです。共産党を支持する有権者は、自分の税金が自民党の議員に渡されるのは嫌でしょう。しかも、交付が始まると、まずは党がピンハネし、次に派閥がピンハネし、最後にようやく議員に渡されるわけです。にもかかわらず、たちまち議員だけでなく派閥も政治資金に困るようになりました。それを補填するために、パーティーが盛んになったのです」(同・深谷氏)
中選挙区制では1つの選挙区から複数の当選者が出る。そのため自民党も社会党も複数の候補者を擁立した。特に自民党の場合は、同じ選挙区で「田中派と福田派の議員が激突」することも珍しくなく、議員の帰属意識は党ではなく派閥にあった。
「党より派閥ですから、そのトップともなれば自分の派閥を運営するための資金も自分で調達するわけです。盆や暮れには、“子分”である所属議員に餅代といった名目で政治資金を渡しました。ところが、小選挙区制になると、誰もが資金の確保に汲々とするようになりました。その結果、各派閥は、料理や酒を少しでも削って利益率を上げたパーティーを開き、ノルマを課して“子分”にチケットを売らせる時代が来たのです」(同・深谷氏)
記載の必要性
政治資金が調達できなくなったのなら、“清廉潔白”な政治家を目指せばよい。だが、小選挙区制になって政治家は劣化してしまったという。
「中選挙区制は候補者同士、つまり人と人との戦いです。自民党の新人議員が中選挙区制で立候補する場合、まずは自民党のライバル議員と戦うことになります。出馬前から政策を練り、支援者と意思疎通を密にし、勉強を重ねることで鍛えられました。一方、小選挙区制は党と党の戦いです。自民党の公認さえ得られれば勝てる選挙区もあります。そのため政治家として精進する必要性は乏しくなります。閣僚の不祥事が起きると『なぜ首相はあんな議員を抜擢したのか』という疑問の声が上がりますが、あれは順番が逆です。自民党でもそういうレベルの議員が増えており、そうした議員を起用せざるを得ないというのが実情です」(同・深谷氏)
こうして深谷氏の指摘に耳を傾けると、政治資金パーティーの問題は根が深いことに気づく。確かにパーティーは小選挙区制下では必然だったかもしれない。とはいえ、そこにはいつの間にか“錬金術”の要素が加わっていた。どこの派閥でも長期間、公然と裏金作りに励んできたのだ。
「私は政治資金パーティー自体を批判しているわけではありません。裏金が問題なのです。得た収益を堂々と政治資金として記載すればいいだけの話です。そもそもパーティー券は1枚数万円くらいですし、年に何回も開かれません。やれキックバックだ、裏金だと言っても、多くの議員にとってはそれほど大きな額ではないはずです。だからこそ余計に記載しなければならなかったと思います」(同・深谷氏)
「私は政党交付金制度について最後まで強く反対しました。有権者には、自民党の支持者もいれば共産党の支持者もいます。ところが、課税は一緒くたですから、皆さんの税金はごちゃ混ぜになって政治家に届けられる。これはおかしいと言ったんです。共産党を支持する有権者は、自分の税金が自民党の議員に渡されるのは嫌でしょう。しかも、交付が始まると、まずは党がピンハネし、次に派閥がピンハネし、最後にようやく議員に渡されるわけです。にもかかわらず、たちまち議員だけでなく派閥も政治資金に困るようになりました。それを補填するために、パーティーが盛んになったのです」(同・深谷氏)
中選挙区制では1つの選挙区から複数の当選者が出る。そのため自民党も社会党も複数の候補者を擁立した。特に自民党の場合は、同じ選挙区で「田中派と福田派の議員が激突」することも珍しくなく、議員の帰属意識は党ではなく派閥にあった。
「党より派閥ですから、そのトップともなれば自分の派閥を運営するための資金も自分で調達するわけです。盆や暮れには、“子分”である所属議員に餅代といった名目で政治資金を渡しました。ところが、小選挙区制になると、誰もが資金の確保に汲々とするようになりました。その結果、各派閥は、料理や酒を少しでも削って利益率を上げたパーティーを開き、ノルマを課して“子分”にチケットを売らせる時代が来たのです」(同・深谷氏)
記載の必要性
政治資金が調達できなくなったのなら、“清廉潔白”な政治家を目指せばよい。だが、小選挙区制になって政治家は劣化してしまったという。
「中選挙区制は候補者同士、つまり人と人との戦いです。自民党の新人議員が中選挙区制で立候補する場合、まずは自民党のライバル議員と戦うことになります。出馬前から政策を練り、支援者と意思疎通を密にし、勉強を重ねることで鍛えられました。一方、小選挙区制は党と党の戦いです。自民党の公認さえ得られれば勝てる選挙区もあります。そのため政治家として精進する必要性は乏しくなります。閣僚の不祥事が起きると『なぜ首相はあんな議員を抜擢したのか』という疑問の声が上がりますが、あれは順番が逆です。自民党でもそういうレベルの議員が増えており、そうした議員を起用せざるを得ないというのが実情です」(同・深谷氏)
こうして深谷氏の指摘に耳を傾けると、政治資金パーティーの問題は根が深いことに気づく。確かにパーティーは小選挙区制下では必然だったかもしれない。とはいえ、そこにはいつの間にか“錬金術”の要素が加わっていた。どこの派閥でも長期間、公然と裏金作りに励んできたのだ。
「私は政治資金パーティー自体を批判しているわけではありません。裏金が問題なのです。得た収益を堂々と政治資金として記載すればいいだけの話です。そもそもパーティー券は1枚数万円くらいですし、年に何回も開かれません。やれキックバックだ、裏金だと言っても、多くの議員にとってはそれほど大きな額ではないはずです。だからこそ余計に記載しなければならなかったと思います」(同・深谷氏)
岸田政権への影響
記載しなかった結果、自民党には大きな逆風が吹いている。深谷氏も「今後の展開は要注目だと思います」と言う。
「東京地検特捜部が、たとえ1人でも現職の自民党議員を立件すれば、世論の反発は相当なものでしょう。場合によっては、岸田政権の屋台骨が揺らぎ、政局の火種になる可能性もあります。それだけ国民は怒り心頭です。特捜部の捜査の進展に注目するのももちろん大事ですが、岸田政権の支持率にどこまで悪影響が出るかも注視する必要があるでしょう」
デイリー新潮編集部
記載しなかった結果、自民党には大きな逆風が吹いている。深谷氏も「今後の展開は要注目だと思います」と言う。
「東京地検特捜部が、たとえ1人でも現職の自民党議員を立件すれば、世論の反発は相当なものでしょう。場合によっては、岸田政権の屋台骨が揺らぎ、政局の火種になる可能性もあります。それだけ国民は怒り心頭です。特捜部の捜査の進展に注目するのももちろん大事ですが、岸田政権の支持率にどこまで悪影響が出るかも注視する必要があるでしょう」
デイリー新潮編集部