岸田首相「決断」3度目の裏目 マイナカード“実質義務化”保険証廃止ブチ上げで霞が関大混乱
10/15(土) 9:06配信
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「聞く力」ご自慢の岸田首相、またこの“決断”で支持率下落か…(C)日刊ゲンダイ
河野デジタル相が13日、2024年秋をメドに現行の健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を記者会見して表明。実質、マイナカード義務化だ。運転免許証との一体化の時期を、従来の24年度末から前倒しする考えも示した。
「保険証廃止」ぶち上げで、保有率49%というカードの普及拡大を狙ったのは明らかだが、あまりに乱暴なやり方で既に霞が関は大混乱。
「聞く力」がご自慢の岸田首相の“決断”はまたしても裏目に出そうだ。
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岸田首相は8月の内閣改造直後からカードと保険証の一体化を進めるよう河野氏に命じていた。また、13日の会見直前、河野氏と加藤厚労相、寺田総務相を官邸に集め、岸田首相自ら関係閣僚で協力するよう指示を出したという。岸田首相が前のめりになっているのは、過去の失敗の“リベンジ”を狙っているからだそうだ
「一昨年の新型コロナ対策で政府が実施した一律10万円の給付金を巡り、自治体によって給付時期に大幅な差が生じるなど混乱を招きました。原因として、行政のデジタル化の遅れが指摘され、当時、政調会長だった岸田氏は苦々しく思っていた。あの給付金騒動では、岸田氏が主導した『減収世帯への30万円給付』がひっくり返され、そのトラウマもあるようです」(永田町関係者)
これまでは現行の保険証も残るはずだったから、早速、調整不足が露呈した。河野氏が保険証の廃止を明言した直後、加藤は、諸事情でマイナ保険証を取得しないケースも考えられるとした上で「(マイナ保険証を)持っていない人が診療を受ける際にどういう手続きをしていくのか、事情を踏まえて考えていく必要がある」と言い出したのだ。現行の保険証が廃止されるのか、残るのか。デジタル庁と厚労省の見解が食い違っている。
デジタル庁に確認すると、
「保険制度を所管している厚生労働省にお尋ねください」(広報担当者)。
厚労省は「(現行の保険証を)従来通り使えるかどうか、対応をデジタル庁、総務省と連携して検討していく」(保険局医療介護連携政策課)と回答。
まだ方向性は検討中?
河野氏の会見は一体何だったのか。
医療機関からは悲鳴が上がる。来年4月からマイナ保険証に対応したシステム導入が義務化される見通しのため、「小規模診療所ではシステムの維持管理費の負担が大きすぎる」(医療関係者)という。
さらに、大荒れ必至なのがマイナ保険証取得の窓口である市区町村だ。
「今回の方針転換を事前に知らされておらず、困惑しています。手続きは我々が引き受けることになりますから、今後、市民が窓口に殺到することが考えられる。対応できるのか不安です。国は現場の事情を分かっていないのではないか」(東京23区の自治体関係者)
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「安倍元首相の国葬といい、内閣改造時期の前倒しといい、それまで何もしなかった岸田首相が決断しだしたら、批判を招き、支持率が下落している。
よかれと思っているのでしょうが、完全に裏目に出ています。そもそも、個人情報の塊であるマイナカードは、紛失した時のリスクが高いわけですから、国民が取得に消極的になるのは当然です。慎重に進めるべきなのに『現行の保険証を廃止するから早く切り替えろ』というのは、あまりに乱暴な発想。ナンセンス過ぎます」
毎日新聞(9月17、18日)に続き、時事通信の最新の世論調査(7~10日)でも、内閣支持率が27.4%の「危険水域」に落ち込んだ。今回の一件で、さらに支持率が下落しそう。そろそろ、国民に対して「聞く力」を発揮してはどうか。