「そんな漢字だらけの言葉、覚えられへんがな」
とかナントカ思いつつ、眼前の医師が口にした疾患名を断片的に記憶した。
診察が終わり、そのキーワードをたよりに検索してみる。
「膵臓」
「乳頭」
「粘液」
すぐにヒットしたのを確認し、勘所をすべてカバーしていた自分を褒めてやる。
その名前は膵管内乳頭粘液性腫瘍。
「すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう」と読む。
略してIPMNとも呼ばれるようだ。
数分前に耳にした医師の言葉を脳内で反芻してみる。
「良性と悪性の中間のようなもの」
“どきっ“と心臓が鳴った(ような気がした)。
あのような表現をされたら誰だってそうなるだろう。
見かけによらず小心者のわたしだもの、なおさらだ。
その後の説明をよくよく聞くと、今は大丈夫だが今後「悪性」になる可能性があるという意味のようだった。
と、これまたその数分後に調べて理解したのだから、まったくもってだらしがないことこのうえないが、医者、特に男の医者にはからきし弱いわたしだ。ハイ、ハイと素直に聞けばよいというものではないと、わかっちゃいるけどこれがまたどうも。
(一般社団法人日本肝胆膵外科学会」より抜粋)
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概要
膵臓には嚢胞性腫瘍とよばれる病気がありますが、このうち最も頻度が多く、代表的なものが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)です。
嚢胞とはそもそも内部に液体を貯めた袋状のものを指します。
袋の内面が腫瘍性細胞で被われている場合は嚢胞性腫瘍と呼び、多くの場合、内容液はネバネバとした粘液です。
このような嚢胞性腫瘍は要注意です。
なぜならば、この腫瘍性細胞ががん化することがあるからです。
診断
非常にゆっくりと進行するため、ほとんどの場合、症状はありません。
ただし、粘液によって膵液の流出が妨げられたり、病変が大きくなったりすれば、腹痛や背部痛を自覚することがあります。
また、膵炎や糖尿病を併発することもあります。
さらに、がん化すれば膵臓がんと同様の症状が出現します。
進行度
IPMNには膵がんで使われているようなステージ分類は有りません。ただし、良性から悪性(すなわち、膵がん)まで色々な段階があり、ゆっくり進行すると言われています。従って、できれば進行がんになる前に治療することが重要です。
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以上は、約2週間前に書き、草稿として保存しておいたものだ。
オープンにすることをためらったわけではないが、ものごとには順序というものがある。まずは、心房細動治療の結果が出てその顛末を書いてから、そう考え、寝かせていた。
というわけで、連日の病気ネタとなった次第である。
「非常にゆっくりと進行するため、ほとんどの場合、症状はありません」という上記説明どおり、わたしの場合も、まったく自覚症状はなかった。
では、どうやってこの疾患を見つけることができたのか。
カテーテルアブレーションにより心房細動治療を行う前の一連の検査によって、偶然発見されたのだ。
ラッキーというしかない。
今後、「がん化」するかもしれない腫瘍が発見され、「ラッキー」というのもおかしな話だが、正直な思いだ。
折り重なったいろいろ様々な偶然に、少しばかりの決断を加えることで、またあらたな偶然と出会った。僥倖以外の何ものでもない。
ボチボチと付き合っていこう。
そう思っている。