入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (38)

2008-10-16 13:49:55 | 霊学って?
38.
これまでの指導原理で示された方向で、人間をその形象性において考察し、そしてそれによって現われてくる霊性を考察するに到ったなら、その次の段階として、通常は一人ひとりの心のなかに現われる「道徳性」という法則を、霊界の中に、その真実の姿において、同時に見ることになるだろう。なぜなら、道徳的な世界秩序は、霊界に属する一つの秩序が地上に写し出されたものだからである。そして、物質性と道徳性の世界秩序はともに結びついて、一つの統一性をなしているのである。(訳・入間カイ)

38. Ist man dazu gelangt, in der durch die vorigen Leitsätze angedeuteten Richtung den Menschen in seiner Bildnatur und in der dadurch sich offenbarenden Geistigkeit zu betrachten, so steht man davor, in der geistigen Welt, in der man den Menschen als Geistwesen walten schaut, auch die seelisch-moralischen Gesetze in ihrer Wirklichkeit mitzuschauen. Denn die moralische Weltordnung stellt sich dann als das irdische Abbild einer zur geistigen Welt gehörigen Ordnung dar. Und physische und moralische Weltordnung gliedern sich zur Einheit zusammen. (Rudolf Steiner)


この38項では、
シュタイナーは踏み込んで
「人体」と「道徳」の関連に触れています。

人体のなかには
イマジネーション、インスピレーション、イントゥイションが
現実に肉体を生み出し、形づくる力として働いており、
それが同時に、私たちの「認識の力」でもある、
ということを、これまでの指導原理は示してきました。

そして、そのような人体の考察の基本となるのが、
「人間をその形象性において考察する」という見方でした。

しかし、それはただ「人体を理解する」とか、
ただ「認識を獲得する」ためではなく、
私たちの肉体のなかに同時に働いている「道徳性」に触れるためだというのです。

道徳というと、
ふつうは人間の行動を規制するものとか、
「良心の声」のように、内面の心の声として、
あるいは「神様が見ている」というようなイメージとして
自分で自分を縛ったり、
管理したりするもののように受け取られるところがあります。

しかし、シュタイナーは、
道徳性というものは、
この宇宙そのものを支えている秩序の一つの側面であるというのです。
その秩序は、「霊界に属する」もの、
つまり、特定の個人や、特定の集団のなかで
勝手に、思いつきで取り決められたものではなく、
すべての人類、すべての存在に浸透している「普遍的」なものです。

それが、地上に、
つまり一人ひとりの心のなかに写しだされたものが、
私たちが心のなかで感じとる「道徳性」の感覚だというのです。

そして、それは一人ひとりが勝手に感じることではなく、
その基盤として、私たちの身体があるわけです。

この身体もまた、本来は「霊界に属するもの」、
つまり、すべての人類が共有するものです。
一人ひとりの体質の違いや、
身体的特徴の違いはあるにしても、
身体という「普遍的」な本質がそこにはあります。

その普遍的な本質に目を向けるために、
「人間をその形象性において考察する」ことが必要なのです。

すると、
身体性と道徳性は、
一つの同じ世界秩序の二つの側面であることが感じられるようになる。

そこに、
私たちの「認識」と「行為」が結びつく可能性が生じるのです。