入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (25)

2008-10-02 08:59:25 | 霊学って?
25. Die nach dem Durchgang durch die Todespforte im Astralleibe erlebte Lebensbeurteilung dauert so lange, wie die Zeit betragen hat, die während des Erdenlebens von dem Schlafe eingenommen war. (Rudolf Steiner)

25.
死の門を通り抜けた後、アストラル体のなかで体験される人生の評価は、地上生活の間に睡眠によって占められた時間と同じ長さを要する。(訳・入間カイ)


この第25節は、この一文だけで終わっています。
この内容が、アントロポゾフィーの一つの「原理」を表しているわけです。
人間の「眠り」というものを
シュタイナーがどれだけ重要視していたかが分かります。

実際に、人間は人生の3分の1を眠って過ごします。
ここで重要なのは、
「人生の評価」が、眠りとかかわっていることです。

通常、私たちは昼間、目が覚めているときに、
自分の生き方をふりかえって、
「まあ、こんなものかな」とか、
「なんで自分はこうなんだろう」とか、
あれこれと自分への評価を下すのではないでしょうか?

しかし、実際には、
私たちの人生の評価は、
眠っている間に、無意識のなかで下されているのです。
それは、私たちの地上の観点とはまったく違った、
「霊界」の観点からの評価です。

そして私たちがその評価を本当に知るのは、
死の門をくぐり抜けてからのことです。
私たちは、地上の夜の眠りを逆にさかのぼり、
眠りのなかで体験されたことを一つひとつ
丁寧に見直していきます。
その作業が、
アストラル体を脱ぎ捨てるために必要なのです。

私たちがいま、大いに捉われていること、
もしかしたら生死にかかわるくらいに重要と思っていることが、
「霊界」の観点からは、
まったく別の意味をもっていたり、
あるいは取るに足らないと思っていたことが
非常に重要であったりするかもしれません。

死後、「内と外」が逆転し、
自分の人生を広大な宇宙的展望のなかで見渡したとき、
初めて自分の人生の意味を
内からと、外からと、
あるいは地上的視点と、霊的視点と
両方の側から全体的に見ることができる。

一人ひとりの人生の価値は、
地上を生きている自分がその都度どう思おうと、
また他の人々がどう思おうと、
それだけでは決まらない。
自分の人生の価値は、死後、
自分が地上で眠って過ごしただけの時間をかけて
丁寧に見直して初めて本当に見えてくる。

そのように考えると、
僕などは、
結局は、今の自分の感覚と思考を信じて、
その時々で、できることを精一杯やるしかないのだとも思うのです。

死後、
自分の内面を「外側」から、
自分の外界に対する行動を「内側」から眺めたとき、
今の自分には、
まったく思いもかけないようなことが見えてくるに違いない。
だとすれば、
今の自分に必要なのは、
今の地上的な観点から、自分の人生に評価を下すことではなくて、
自分自身の心に忠実に生きようとすることではないのか。

そして、そのとき、
自分自身の心に耳を傾けようとするとき、
私たちが聞き取ろうとするものこそ、
自分のなかの「霊性」の呼び声なのではないか、と。