(書評)
岸本裕史『ドラえもんの学習シリーズ ドラえもんの算数おもしろ攻略 改訂版 算数まるわかり辞典 4~6年生』(小学館)
(17)平行四辺形とひし形(p150~151)
方眼紙に平行四辺形のようなものが描かれている。
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この四角形の特ちょうは? そう、上と下の辺と、右と左の辺が、それぞれ平行だってことだね。
(p150)
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上下は方眼紙の平行線の上に描かれているから、「平行だ」と思える。しかし、左右の辺は平行線の上に描かれていないから、「平行だ」とは言い切れない。
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平行四辺形のじょうけん
(1) 向かい合った2組の辺が、それぞれ平行。
(2) 向かい合った2組の辺の長さが、それぞれ等しい。
(3) 向かい合った角の角度が、それぞれ等しい。
(p150)
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この三つの「じょうけん」のどれを用いても、提示された四角形が平行四辺形であることを証明できる。ただし、そのためには、それなりの手続きが必要だ。偽ドラえもんの説明は飛躍している。
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いろいろな四角形のちがいを、表にまとめてみたよ。
(p151)
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ただの羅列だ。丸暗記は大変。
〈一般的な四角形→台形→等脚台形→平行四辺形→菱形あるいは長方形→正方形〉
こういう流れを示すべきだ。
(18)対角線(p152~153)
さらにおかしな話になる。
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どんな四角形にも、対角線は2本ある。そして、対角線が必ず垂直に交わる四角形は、ひし形と正方形なんだ。
(p152)
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「垂直に交わる」ように見えるだけのことだろう。
「いろいろな四角形の対角線」(p153)の表が出ている。これも羅列。
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偽のび太「これを知ってて、何の役に立つの?」
偽ドラえもん「対角線や、151ページの「いろいろな四角形の特ちょう」の表をしっかり頭に入れておくことが、「面積」を早く得意にするひけつなんだ。」
(p153)
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どうやって「頭に入れ」るの?
「「面積」を早く得意にする」は意味不明。
「面積」が「何の役に立つの?」
「ひけつ」だってさ。<否決>じゃないよね。
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事を行うのに最も効果が多くて、しかもめったに他人に知らせない法。
(『広辞苑』「秘訣」)
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偽ドラえもんは日本語を知らない。
いや、知っててやっているのかな。
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入社式を秘儀として行い、共通の目的を遂行するため加入者に一定の守秘義務を課す団体。
(『広辞苑』「秘密結社」
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秘密めかすと、説明不足をごまかせる。
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霊魂の不死と輪廻(りんね)を信じ、霊魂の救いのためその浄化を説いた。
(『広辞苑』「ピタゴラス学派」)
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偽ドラえもんは、ドラえもん学派を作りたいのかもしれない。
(17・18終)