漫画の思い出
花輪和一(25)
『護法童子・巻之(二)』(双葉社)
「旅之五 雷神」
雷様のことは、知っているようで、よく知らない。
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中国で天帝の属神とされ、日本では北野天神の眷属(けんぞく)神ともされる。
(『広辞苑』「雷神」)
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この程度の知識では、「雷神」は理解できない。
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天然現象を擬人化したもので、すでに密教では婆羅門教(ばらもんきょう)の神を組み込んで神格化した風天・帝釈天(たいしゃくてん)が風神・雷神の性格を持つものとされるが、おそらく中国古代の固有信仰から別の展開をとげたものであろう。すなわち中国の雷公(らいこう)・雷鼓(らいこ)・風伯(ふうはく)をインド的な裸形の鬼体としてあらわし、混然とした天神のイメージに作り上げたものと思われる。
(『仏教辞典』「風神・雷神」)
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「雷神」に登場する雷神は、俵屋宗達の有名な「風神雷神図屏風」に描かれた姿とは全く違う。護法童子は「雷獣か」と呟く。
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晴天の日には柔懦(じゅうだ)であるが、風雨にあうと勢い猛烈となり、雲に乗って飛行し、落雷と共に地上に落ち、樹木を裂き人畜を害する。形は子犬に似て灰色、頭長く喙(くちばし)黒く、尾は狐に、爪は鷲に似るという。木貂(きてん)。
(『広辞苑』「雷獣」)
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犬には似ていない。
雷獣のような何かが落下して、雷神と呼ばれる。雷神は桐壷の更衣だか何だかの体の中に住みつく。雷神は、彼女と帝の仲を裂くために落下したらしい。恋敵の弘徽殿の女御か何だかは藤原道長の末裔らしい。彼女の嫉妬を雷神は利用する。
空を平仮名の〈す〉みたいなのが滑る。梵字の「ばん」(「旅之序 大日如来の大光明」)だろうが、意味不明。
護法童子は活躍しない。作者は、護法童子を男女の性愛に関わらせたくないのだ。
(25終)