ウロシだった。
~ステテコ
『スチャラカ社員』に出ていたか、あるコメディアンが服の胸を摘まみ、小腰を屈めて肩を左右に振りながら、「いやあん、いやあん」と愚図るのだった。記憶違いかもしれないが、彼にはもう一つ芸があって、「いやあん、ばかあん、ステテコ」と喚く。
僕は、これを次のように続けていた。
「いやあん、ばかあん、ステテコンバットンカツ食べたいなにぬね鋸ギリギリギーリ」
実は、「ギリギリギーリ」は先日付け足した。散歩をしていて、このくだらない文句を思い出し、そっと口遊んでいたら、「ギリギリギーリ」と続いた。少年の僕は「鋸」の続きを思いつかず、不満だった。
やっと終ったよ、半世紀かかって。
やがて、「ステテコ」が意味不明であることに気づいた。これは、「捨てて来い」の隠し詞なのかもしれない。苛められた子が「いやあん、ばかあん」とおどけて抵抗した後、相手の雑言を「捨てて来い」と言ったつもりになりたかったのかもしれない。
(終)
モロシになりそう。
~ステテコマン
丑三つ時、公衆便所の鏡の前で、「ステテコマン、ステテコマン、ステテコマン」と三度唱えると、君の背後にステテコマンが現れる。
ステテコマンは、かんかん帽を被り、丸と四角のフレームの眼鏡を斜めにずらして掛け、ちょび髭を生やしている。上は派手なアロハ・シャツだが、下はステテコのみ。腹巻をしている。足には下駄ではなく、革靴を履いている。靴下は穿いていない。目が合うと、嫌らしい目つきで、「いやあん、いやあん」をする。
便所を出てもついて来る。ついて来させないための呪文がある。「ステテコ、ステテコ、ステテコンバットンカツ食べたいなにぬね鋸ギリギリギーリ裏切り」と唱えるのだ。すると、彼は「いやあん、いやあん」を続けながら、どこへともなく歩き去るんだとさ。
嘘だと思うなら、やってみて。
(終)