腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE19 換気口)
非常口の扉が開かない。非常事態ではないからか。非常口ではないのか。扉ではないのか。
非常口の表示を見上げる、何度も。鍵穴を見る、何度も。無駄だと思いつつ、自宅の鍵を差す。空回り。鍵穴に目を寄せる。何も見えない。向こうは暗いのか。鍵穴ではないのか。
壁に凭れ、目を閉じる。長い吐息。
地下道に鍵は落ちていないのか。ありきたりのゲームなら、落ちている。
誰かが誰かに鍵を手渡す。そんな夢を見る。あの街路樹の下?
高くない天井の穴から地上の空気が吹き込み、我に返る。騒音に声が交じる。偽廃兵の声か。掠れて汚い。人に聞かせられるような声ではない。彼は自分を眠らせるために歌っている。人に聞かれたくない。聞かれていると思うと、眠れなくなる。
「……眠ろう……眠ろう」
あなたは眠りますか。あるいは、自分のために歌いますか。
背中が壁を擦る。じりじり。膝が曲がり、腰が下がる。
排水溝に20Gが落ちている。
今は夜なのか?
(続)