腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE42 無足歩行)
あなたはおばあさんのミシンに潜り込む。体を左右に揺らすと、ミシンは浮き上がる。
海を越え、虚栄の町に近づくにつれ、ミシンは徐々に重くなり、やがてただのミシンに変わる。
ストン。
ミシンから出る。
あなたの視線は低空を舐めるように移動する。あなたに足はない。しかし、あなたは歩いている。
どこからともなく、おばあさんの声がする。
「おまえは何のために帰るのかい? 帰って、どうするのかい。あの虚栄の町にいて、許せるのかな、あの人を? あの人を許せなければ、また同じ退屈な不満だらけの日々を繰返すことになるんだよ」
許せなければ、あなたは戻ります、水曜日の昼下り、あるいは木曜日の遅い朝へ。
「あの人って?」
「さあね。私はあなたじゃないからさ」
「あの街路樹の下で私を見つけられなかった人……」
「あるいは、もう一人のあなた」
おばあさんの声は哀れむように徐々に細くなり、やがて諦めたのか、聴こえなくなる。
あなたは考える。考えるふりを続ける。
長い間。
振り向いて、誰にともなく、ゆっくりと頷くあなた。