腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE26 地下広場)
広場に人々が集まっている。がやがや。
「地上で何か起きているのか」
「何も起きてない」
「じゃあ、なぜ、私たちはここにいるの」
「知るもんか、私たちのことなんか」
「自分のことで精一杯なの」
「災害が起きているそうだ」
「災害は副次的現象だ」
「戦争やってんじゃないか」
「野蛮国が攻めてきたんだ」
「異星人の暴動だな」
「異星人なら、ここにもいるぞ」
「今来たあの女が怪しい」
「でも、頭がある」
「作り物さ」
「可愛過ぎる」
「容貌で判断するのは差別だよ」
「科学的根拠を示せ」
「首切ろう」
「本物なら血が出るよね」
「その血だって作り物さ」
「トマジュ」
「嘗めて血液型、わかる人、いますか」
がちゃがちゃ。
彼らは仮面を被っている。安っぽい反射光。ぎらぎら。正体不明。異星人と一緒。
彼らは、いつも同じことしか言わない。何度か尋ねたら、有益な情報を得られるのかもしれない。けれども、誰に何を何度尋ねたかなんて、覚えていられない。時間が惜しい。
ホップ・ステップ・アンド・ジャンプ!
人垣を跳び越え、閉鎖された改札口を軽く跳び越え、歩廊を一気に越えて線路に着地し、両手を広げる。どこからともなく拍手が送られている。
線路の右と左のどちらかが地上に通じている。地上は明るいが、危険だ。地下は安全だが、暗い。
あなたは、右と左、どちらを選びますか。
あなたのいなくなった広場で、人々が『嘘の月』を歌い始める。
(続)