『冬のソナタ』を読む
「影の国へ行った人」(上p33~59)
1 「初めて」を聴きながら
チェリンはよくやってくれるよね。
<「本当に酷い子ね。あなたに会いに行く途中で事故に遭ったらしいじゃない。なのに、あなたよく平気でいられるわね。泣くのが普通でしょ!」
チェリンがありったけの怒りをユジンにぶつけたが、ユジンは何の反応も見せなかった。ユジンは、ジュンサンが死んだことが信じられなかったのだ。
(上p36-7)>
「ジュンサンの死んだことが信じられなかった」のは「普通」かもしれない。ユジンにとって。また、チュンサンにとって。
<ユジンはそのテープをカセットプレーヤーに入れ、スタートボタンを押した。すると、ピアノが奏でるメロディーが部屋中に広がった。
以前、ジュンサンが演奏してくれた「初めて」という曲だった。
(上p38)>
何が「初めて」なのか、二人は知らなかった。「初めて」だったから。
<ユジンは「初めて」を聴きながら思い出の中のジュンサンと会っていた。
(上p38)>
さあ、「初めて」の物語が始まるよ。
<小さな家がひしめく春川(チュンチョン)のとある街並を、ひとりの女子高生が猛スピードで走り抜けて来た。
(上p39)>
誰かな。チェリンかな。ユジンかな。
誰でもいいから潜り込め、「猛スピード」で「初めて」の「思い出の中」へ。
(終)