俳句指導「ことばの花びら」

12月21日に、江東区教育委員会・学校支援課相談員を務めている元・八名川小学校校長の小山正見先生をお招きし、俳句の授業を予定しています。小山先生からは、「事前に俳句を作っておいて、選句をする授業をしよう」と指導されています。そこで、子どもたちがより良い俳句を作れるようにするために、言葉感覚を広げておく取り組みをしてみました。

題して「言葉の花びら」という授業です。


ほとんどの小学生は、俳句作りに慣れていない初心者の頃には、このようなものを作ります。


運動会 全力で走った 疲れたな

さざんかは 赤い花びら きれいだな

みんなでね ドッヂボールだ 楽しいな

クリスマス DSもらった うれしいな

こういう俳句は個性が感じられないと私は思っています。最後の五音に個性がない。「疲れたな」とか「きれいだな」という言葉が抽象的すぎるわけです。抽象度が高いと実感が伝わりにくくなります。そこで、言葉に対してそれほどこだわりのない初心者の子どもたちに対して、言葉感覚を広げると表現豊かになることを実感させる必要があります。

この指導で有効活用できるのが「マインドマップ」です。江東区の俳句指導を一身に受けて進めている小山先生からも、12月1日に行った5年生の研究授業「美しい言葉を使う5年生プロジェクト」へのご指導の中で、
「マインドマップは注目すべきツールである。このツールは俳句の指導にも大いに役立てることができるだろう。」
と太鼓判を押していただきました。

そこで、導入段階に使ってみました。

「楽しいな」「うれしいな」「おもしろい」という言葉ではなくて、この言葉からもっとイメージを広げてみようということをなげかけ、意見交流。画像のようにどんどんイメージが広がる授業となりました。

例えば、「うれしいな」という言葉から広げたイメージには、「ラッキー」「ハッピー」「ランラン」「赤い顔」「Vサイン」という、いかにも俳句で使えそうなものが出てきました。これを使うだけでも、ずいぶん違う俳句になります。例えば、プレゼントをもらった時の喜びを「うれしいな」ではなくて、「ハッピー」を使えばこんなふうになります。

朝起きて ハッピー気分の クリスマス

もし「うれしいな」を最後の五音に使ったら、たぶん「クリスマス プレゼントもらい うれしいな」なんて俳句になるでしょうね。どう考えても「朝起きて ハッピー気分の クリスマス」の方が味がある。こうした言葉感覚をどんどん拡大していくために、マインドマップを活用することが力となります。

今回の指導で、俳句指導に向けての「言葉の花びらマインドマップ学習シート」という活用方法を開拓できました。まだ実際には作っていませんが、99%アイデアは固まりました。かなり良いものになると思います。


俳句で子どもたちを鍛えれば、必ず言葉に敏感な子どもに育つことでしょう。豊かな言語感覚は豊かな人間関係を築いていける力となります。豊かな人間関係を築く力はすなわち「生きる力」となります。学習指導要領で強調されている「生きる力」にグイグイ迫っていく授業をすることができる可能性が「俳句+マインドマップ」というコラボレーションにあります。

こういう視点で、小山先生ともたくさん論議を交わしながら、江東区の教育が日本の教育をリードしていけるように、創造的な活動をしていきたい。そんな思いを深めています。


どの子もできる10分間俳句
小山 正見
学事出版


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恩方第二小学校の校内研講師を務めました

12月8日(水)に、八王子市立恩方第二小学校の校内研講師として派遣していただきました。

小学校現場の主幹教諭が講師として招かれるというのは特別なことです。
なぜ呼ばれたのかというと「マインドマップ公認フェロー」という肩書があるからです。この学校に私を紹介して下さったのが、同じ八王子のM小学校の先生でした。その先生が、ある研修会でマインドマップをかきながらメモを取っていた。それを見た恩方第二小学校の先生が関心を持ち、私につながったそうです。縁とは不思議なものです。


さて、今日の授業は2年生の国語。教育出版社の教科書にある「生き物図鑑を作る」という活動です。
マインドマップで自分の選んだ生き物についてまとめておき、その中から順番と意識して図鑑カード化していく学習です。

【授業の流れ】
(1)前時までのことをふりかえる。
・前時までに「カルタ」を使って情報を収束してある。
・伝える相手を確認する。子どもたちからは、「全校のみんな」「先生たち」「来賓の方々」「お父さん・お母さん」といった意見が出ました。

(2)文の順番を意識して書くことを、教師が作ったお手本を見せながら指導する。

(3)調べた情報の中から、自分が紹介したい項目を選び出す活動をする。

(4)選んだ情報を文章化する。
・B5サイズのカードに文章を書いていくのですが、「カルタ」に設計図が書かれているので、効果的に文章化できていました。

(5)書いた文章と「カルタ」を教師が紹介する。
・今回は教師側で紹介しましたが、できれば子ども自身が紹介する活動を入れた方が良かったと、研究協議会で意見が一致しました。そうすることによって、「話す・聞く」という活動も入るからです。


【研究協議会】
研究協議会で話題になったことを列挙しておきます。

・マインドマップの導入時に扱うテーマは、「自己紹介」「好きなもの」「リンゴ」「恩二小」「最近の3日間」など、すぐに思いだせるものの中で、とにかく楽しく取り組めそうなものが良い。

・読解指導に使う時には、「物語教材」から入るよりも「説明文教材」をマインドマップでかかせていく方がやりやすい。なぜなら、説明文教材は「始め・中・終わり」や「起承転結」といったように、小学生にも分かりやすいように文章が構成されている。言葉の裏にあるような心情を読み取るということもしなくて良いのでマップ化しやすい。

・マップ形式で考えさせていくと、発想が拡がりすぎて論理のずれが出てくることがある。こういう場合は担任の采配が大事になってくる。何をどこまで考えさせるのか、考えた中からどう取捨選択させるのか、ここはマインドマップで行う段階ではなく、授業の次の段階になる。マインドマップを使ったからといって、すべてができるといった万能なものではない。様々な方法を使って、子どもたちの能力を高める必要がある。

・今回の図鑑を作る学習の中で、文中に「気持ち」を表現している子がいたが、図鑑なので「~と思った」という表現は使わせない方が良い。こうしたことは「文型指導」「内容指導」として、別に行う必要がある。

・マインドマップには大きく分けて、「拡散型」と「収束型」の2種類の使い方がある。「拡散型」の書き方は、自己紹介や好きなものをテーマにしてかく時のような、どこまでも思考を拡げていくかき方。「収束型」は、知識として得たものを整理し、記憶していくためにまとめるかき方。読解指導の際には、この2つを場面に応じて使い分ける。内容を読み取る時には「収束型」のかき方。自分の意見を拡げる時には「拡散型」のかき方。その後の話し合いをマインドマップで板書していくと、話し合いは活性化するし、意外なところでの「気づき」が生まれることが多い。

・文章を書く時や、発表をする時に、相手意識を持たせることは、思考の方向性を決めるための重要なポイントになる。誰に伝えるのかということをイメージしているだけで、文章内容が変わるし、より良い文章を書こうというモチベーションの高まりにもつながる。


【私の講評内容】
これはレジメとして用意したものの中から、お話したものだけを載せておきます。

1、マインドマップの効果
①思考の面
・思考の拡大、促進
・思考の設計図
・思考の収束、整理
・図解は理解

②表現の面
・文字を超えるイメージの広がり
・楽しく表現、創意工夫
・スピーチを自分の言葉で

③脳活性の面
・ポジティブな学習になりやすい ⇔ 楽しむがルール
・脳神経系への刺激が強い
・脳内に思考回路が生まれる
・40~50枚かいてみると、自分の変化に気づく

2、マインドマップの可能性
①社会
・スタートはビジネスツール⇒社会のニーズがある
・自ら考えられる人材が求められている
・学社一体の教育改革を目指すきっかけにできる⇒ジャパンメソッドとして教育輸出できる

②世界
・すでに各国で活用している
・インストラクターネットワークに日本が強い影響力を発揮しはじめた
・言語を超えた理解がマインドマップだと可能である
・人類の抱える諸問題を考えることも・・・

3、指導方法
①開拓のはじまり
・どのように活用できるかは教員の創意工夫しだい
・各自の持っている指導力から判断して、効果的であれば使う



協議会終了後にも先生方の質問を受け、とても充実した研究授業になりました。
その際に興味を持っていただいたことに関する記事を下にリンクしておきます。

子どもたちを伸ばす「ゴール意識」

卒業した君たちへ その1・・・まさに「史上最高の卒業式」でした

史上最高の卒業式のイメージを創る 【マインドマップ活用授業】

マインドマップ 「卒業式の意義」 2009年バージョン

半分教師 第37回 「6年生は「『卒業式』について考えてみました」

卒業式の準備計画 マインドマップ

前向きな生き方をするための良い習慣を考える 【マインドマップ・ポジティブ思考ワーク】

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うちのクラスのAKB48

休み時間に、子どもたちがキャラクター消しゴムを並べて「AKB48」の文字を描いていました。
私・井上は今、すき間の時間があればすべて、子どもたちが宿題書いてくる「日記新聞(マイ新聞)」への添削に全力投球しているので、あまり相手にしていなかったのですが、かわいい教え子たちに、

「先生!AKBができたよ!写真に撮って!!!」

と言われると、

「何?何?」

とすぐにカメラをかまえてしまいます。
そんな心の交流は、小学校担任の醍醐味なのです。
本当に素晴らしい仕事です。小学校の教師は。


この消しゴム文字についての子どもたちのコメントです。

「これは消しゴム会社の方が、売り物にならなくなった消しゴムの元をくれたので、それを切って、並べて作りました。クラスでAKB48がはやっているので、AKB48のだれかに見てほしいなと思って作りました。見てくれたらメッセージ下さい!!!」


以上、子どものかわいさの紹介でした。


(井上推しの“SKE48”の消しゴム文字も作ってくれました。)

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保護者の思い・・・読み聞かせ 『あのときすきになったよ』

あのときすきになったよ (教育画劇みんなのえほん)
薫 くみこ
教育画劇


おしっこおもらしの「しっこちゃん」が実はやさしくて、芯の通った性格の持ち主だった。
お友達の失敗を、みんなに気づかせないようにするために、自分がわざと失敗をしてたたされてしまう。
そんな「しっこちゃん」の物語に、お話を聞いていた4年生は、笑ったり感心したり。
大いに心を動かされる本でした。
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スーパー2年生になるためのマインドマップ

2年生の廊下にこのようなマインドマップが掲示されていました。
(オッ!すごい!やってくれるなぁ、2年生!)と思い、さっそく写真に撮らせてもらいました。

ここに書かれているのは「2年生の目標」です。

目標マインドマップは、はっておいて、毎日視野に入れるだけでも効果がありますが、せっかくなので私がアファメーション文にしてあげようと思いました。

【アファメーション】

わたしたちはスーパー2年生である。
どんなことでもがんばるし、なんでもできる!

わたしたちは友だちどうしで力を合わせ、助け合い、なかよく楽しい学年である。みんなでよくあそんでいる。
つまり、2年生ぜんいんが友だちなのである。
友だちには自分からすすんで話をし、ケンカがあっても、すぐになかなおりをすることができる。

学しゅうも集中してできる。にが手なことにもちょうせんしている。
いつもやる気があって、かん字やかけ算、さかあがりをがんばっている。じゅぎょう中の発表もがんばっている。

学しゅうのルールもしっかり守る。
まず、休み時間には、つぎのじゅぎょうのじゅんびをしっかりやっている。
そして、じゅぎょうがはじまったら、しずかに集中し、先生や友だちの話をよく聴いている。

学校生活では、チャイムの合図で教室に入り、「しゃべらない」「すわる」という合図も守っている。
自分のもちものや、教室はいつも「せいりせいとん」している。
給食は早くじゅんびし、ゆっくりしっかりかんで食べている。出されたものはぜんぶ食べて、のこさない。
このように、わたしたち2年生は、1年生のお手本となっている。

2年生みんなの心はいつでも楽しい!前向きな心である。
「スーパー2年生になる!」という目ひょうに向かって、いろいろなことをがんばっている。
これからも先のことまで考え、えがおがかがやく2年生になっていく。




今、学校内で一番元気なあいさつをするのが2年生です。
どんどんこの「スーパー2年生イメージ」に近づいていっている手応えがあります。


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矢島美由希さんの話



私・井上の友人であり、「財団法人 生涯学習開発財団 認定コーチ」「米国NLP協会認定 マスタープラクティショナー」「保育士 幼稚園教諭2級」「ブザン公認マインドマップ・インストラクター」という肩書を持つ、元保育士・矢島美由希さんが、起業するまでの覚悟を語っている動画サイトを紹介します。バナーをクリックして下さい。

教育についての思いや新しい取り組みを考えるために、なんとなんと一昨年の“大晦日”のお昼に真剣に語り合ったこともあります。

保護者の皆さんにも参考になる話です。
ぜひお聴きください。
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「さびしさと愛 新美南吉の人生」(小学生用自作教材)

「ごんぎつね」を学習した後に、学年で学んだことを生かして、まとめの学習を行う小学校4年生のために、作者である「新美南吉の人生」を資料を元に書き下ろしてみました。小学校4年生の国語のまとめ学習では、「ごんぎつね新聞」を作ったり、紙芝居を作ったり、音読劇をしたりと、様々な活動が考えられますが、作者のことを知ることも物語の読解には大きな力となる。私はそう考えています。
このブログに載せることで、目にした4年生担任の先生方や4年生のお子様のいる保護者の方々にコピーしていただき、子どもの学習資料としていただける。そんなことを期待しています。

********************

(以下の文章はコピーフリーです。万が一、記述に間違えがあった場合は、お手数ですがコメント欄でご指摘下さい。)


『さびしさと愛 新美南吉の人生』 井上光広 作


 「ごんぎつね」の作者である新美南吉は、小さい頃の名前を「渡辺正八(わたなべしょうはち)」といいました。今から97年前の1913年(大正2年)、愛知県半田市のたたみ屋の父・渡辺多蔵(わたなべたぞう)と母・りゑ(りえ)の子として生まれました。りゑは正八を生んだ後、体が弱くなってしまい、入院することが多かったので、正八の世話をすることがむずかしかったのです。そして、正八が4才の時、29才でなくなってしまいました。


【2013年に新美南吉生誕100年を迎える】

 お母さんがいなくなってしまった正八は、近所の森はやみさん(小学校4年生)に子もりをしてもらいながら育ちました。6才のころ、お父さんは新しいお母さんとして、「志ん(しん)」をむかえました。そしてすぐに弟の「益吉(ますきち)」が生まれました。


【南吉の生家】

 1920年(大正9年)、正八は半田尋常(じんじょう)小学校へ入学しました。おとなしい子でしたが、勉強はとてもよくできました。小学校2年生の夏のこと。正八は、なくなったお母さん(りゑ)の生まれた家がおばあちゃん(志も)一人になってしまったため、後つぎになるために養子(ようし)にさせられました。名前は「新美正八(にいみしょうはち)」と変わりました。
 おばあさんの家は、村の一番北のさびしい場所にありました。家のうらには深い竹やぶがあり、まわりは畑ばかりで、となりに一けんの家があるだけでした。家の中はがらんとして大きく、うら口を出たところには、まっくらな井戸があり、子どもの正八には不気味(ぶきみ)なふんいきでした。おばあちゃんは、このような家でずっと一人で生きてきたためか、正八がそばによっても心の温かさを感じさせることはなかったようでした。
 正八は、あまりのさびしさからノイローゼ(心の病気)のようになってしまいました。そのため、半年後の12月にはお父さんのいる家に帰りました。


【南吉養家】

【南吉養家の井戸】

【南吉養家の庭から】

 正八は頭の良い子どもでした。小学校の成績はずっと学年トップでした。先生からは作文をほめられ、
「正八はきっとおとなになって、小説家(しょうせつか)になれるだろう。」
と言われていました。
中学生になったころから、童謡(どうよう)や俳句(はいく)などをたくさん書くようになりました。
1929年(昭和4年)、16才のころには、「新美南吉」というペンネームを使い始めました。中学校の友だちと協力して、「オリオン」という雑誌(ざっし)をつくって、童話や詩を発表していきました。南吉は日記にこのようなことを書いています。
「わたしの作品は、私の理想をふくんでいる。今から何百年、何千年たっても、私の作品がみとめられるなら、私はその時代にまた生きることができる。だから私はじつにしあわせだと言える。」

1931年(昭和6年)、18才の南吉は、先生になるための師範学校(しはんがっこう)を受けました。しかし、体が弱かったため、不合格となってしまいました。その時の気持ちを短歌にあらわしています。

体かくの 検査にわれは はいられず
      電車の火ばな 見つつ帰るも
(身体検査の結果、私は入学することができなくなり、電車が走るときに出る火花を見ながら、悲しい思いで家に帰った。)

 しかし南吉は、その年の4月、母校の半田第二尋常小学校の代用教員(正式の先生ではない)となることができました。小学校の先生になった南吉は、担任している2年生のために、次々と童話を書いていきました。6月には、自分が作った「ごんぎつね」を子どもたちに話して聞かせました。
 代用教員であったでの、半年後の8月に、小学校をやめました。


 1932年(昭和7年)、南吉が19才の年です。「赤い鳥」という童話雑誌の1月号に「ごんぎつね」がのりました。日本中に新美南吉の童話がしょうかいされたのです。この年の4月に、南吉は東京にある「東京外国語学校」に入学することができました。

 東京の学校で学んでいた時の南吉は、友だちと映画を見たり、童話について話し合ったりして、楽しくすごしました。そのころ有名だった詩人の北原白秋(はくしゅう)にもめぐりあい、文学について勉強しました。こうして新しい作品を次々と生み出していきました。その中には「手ぶくろを買いに」というきつねの母と子どもの童話も書かれています。
 ところが、このころから南吉は病気がちになっていきました。もともと体が弱かった南吉ですが、死ぬことのこわさも感じるようになっていきました。


【手ぶくろを買いにの記念碑】

 1936年(昭和11年)、23才で東京外国語学校を卒業した南吉は、東京で英語を生かした仕事につきました。しかし、病気が重くなってしまい、11月には愛知県の自宅に帰って、治療(ちりょう)しなくてはならなくなりました。

 1937年(昭和12年)、24才の南吉は、4月から河和(こうわ)小学校の代用教員になりました。子どもたちに勉強を教えることが大好きだった南吉は、その喜びを東京の知り合いへの手紙で、こう書いています。

「ぼくは、4月から河和(こうわ)という海ぞいの小さな町で、代用教員をしています。」
「ここでぼくは、かりそめのささやかな幸せを味わっています。こんなところに、こんな幸せがあろうとは、つゆ知りませんでした。生きていることは、むだばかりではないことが、これでわかりました。」
病気でなやんでいた南吉にとっては、子どもたちといっしょにすごす学校生活は、心のオアシスとなっていたようです。しかし、南吉は、代用教員であったため、7月31日で河和小学校をやめました。その後、会社につとめましたが、仕事に喜びを感じることはできなかったようです。

1938年(昭和13年)4月、25才の南吉は、正式な教員として、安城(あんじょう)高等女学校につとめられるようになりました。1年生56人の担任となり、英語や国語を教えました。南吉は作文を教えることがじょうずで、一人一人の書いた作文にていねいにアドバイスを書いていきました。生徒たちといっしょに詩集を毎月作りあげてもいきました。きっと南吉は、生徒といっしょに学んでいける「心のつながり」を大切にしていたのでしょう。


【矢勝川】

ところが、29才になった1943年(昭和18年)1月、南吉の体はとうとう病気にたえられなくなり、ねこんでしまいました。2月には大好きだった安城(あんじょう)高等女学校もやめなくてはならなくなりました。
 思い病気になった南吉は、まるで、その命の最後の灯(ひ)を強くともすようにするかのように、童話を書いていきました。そのひとつに「狐(きつね)」という童話があります。

文六ちゃんという小学3年生が、「夜に新しいげたをおろすと、キツネになってしまう」という迷信を聞いて、自分がキツネになってしまうのではないかと不安になってしまいます。その文六の不安で泣きたくなるような気持ちを、お母さんが、あたたかいふとんの中でいっしょにねながら、やさしく受け止めてあげるという童話です。
幼いころに、実の母をなくし、母の優しさを感じることができずに育った南吉。あたたかくて優しい母にあこがれ、さみしさを分かってもらいたいという強い気持ちから、「優しい母」が登場する童話を生みだしたのかもしれません。


【権現山】

【キツネのはくせい】

【南吉の出身校・岩滑(やなべ)小学校の壁画】

どんどん病気が悪くなり、死ぬことを覚悟した南吉は、知り合いにあてた手紙の中に、こんな言葉をのこしています。

「わたしは、毎日、のどの吸入をかけたりして、正午までねています。」

「のどがわるいので、いっさいのお見まいをおことわりして、ふせっています。たとい、ぼくの肉体はほろびても、君たちがぼくのことを長くおぼえていて、美しいものを愛する心を育てていってくれるなら、ぼくは、君たちのその心に、いつまでも生きていられるのです。」

「医者は、もうだめだと言いましたが、もういっぺん、よくなりたいと思います。ありがと、ありがと。」

 3月22日。部屋に太陽がさしこみ始めた午前八時。南吉は実のお父さん・多蔵と育てのお母さん・志んにみとられて、ねむるようにして短い一生を終えました。実の母・りゑが亡くなった年と同じ29才でした。


【新美南吉記念館】


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小学生のためのマインドマップで作文すらすらワーク (ドラゼミ・ドラネットブックス)
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このワークブックの最後に、新美南吉「狐」の読書感想文・書き方ワークがあります。
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新宿区の小学校で研究発表会 【マインドマップ活用授業】

12月2日(木)、新宿区立愛日小学校が開催した研究発表会に参加しました。『自らの学びを深める「かく(書く・描く)力」の育成』というテーマで、全教科にわたって研究を深められていました。



2年前、N校長先生とH研究主任の先生のお二人が、「マインドマップを活用した授業を見てみたい」ということで、私の学級まで足を運んで下さり、道徳の授業を公開させていただきました。その後、H研究主任の先生が校内の若手教員を連れて、「マインドマップ体験会」に参加してくださいました。こうした関係もあったので、発表会にはどうしても授業参観しなくてはならないと思っていたのです。

教室に行くと、かわいい2年生が「こんにちは!」とさわやかなあいさつ。
担任である研究主任のH先生から、「ポニョのマインドマップをくださった先生です。」と紹介していただきますと、子どもたちからは驚きの声。「ポニョの先生が来てくれた!」「ポニョのマインドマップありがとう。」と声をかけてもらいました。すごく嬉しいものですね。子どもたちに認識してもらえるってことは。


授業は2年生の生活科。「しゅうかくさいをしよう」という活動の中で、自分たちがやってきたことを1年生に伝えるためにどうするかを考える内容でした。

さすがH先生の授業は素晴らしい!何の授業をするにしても基本となるのは「学級経営」です。これがしっかりしていることに深く感心しました。子どもたちの学習態度が整っているのです。その中でも最も注目したのが『聴く姿勢』です。先生が話を始めると、全員がスッと前を向いて姿勢を正す。そして静かに話を聴く。強い指導でこうなっているのではなく、H先生の個性であろうと思われる優しい指導、褒める指導でこの集中した姿勢を取れる子どもたちに育っている。若手の先生方はこういう学級を見て、自分の学級経営の参考にしたら良いのだと思える“お手本”でした。

そして、授業の中でのマインドマップの活用もとても参考になりました。

授業の流れはこのようなものでした。

【前時】
本時でマインドマップをかいている時間はないので、前時で自分たちがやってきたことをふりかえるためのマインドマップをかいておく。授業の効率化と子どもたちの思考がぶれないようにするために、セントラルイメージを4本の「指定ブランチ」からふりかえらせる。

【本時】
(1)前時にかいたマインドマップやこれまで書きためてきた観察カードを見ながら、1年生に教えたいことや伝える方法を「小カード」にたくさん書く。つまり思考を広げる活動を行う。(個人作業)

(2)広げた考えの中から、一番伝えたいことを「中カード」に書く。このカードに書く内容は、文字でも絵でもかまわない。(研究テーマが「かく(書く、描く)力の育成」ですから、ここで絵に描く力が発揮されます。)

・・・・・(1)(2)の個人作業を15分間。

(3)4人グループで、みんなが意見を書いた「小カード」を分類しながら「グループカード」に貼っていき、発表の方法まで話し合って決める。この活動で学び合いが生まれる。

(4)考えたことを班長が発表する。



「マインドマップ」と「分類カード」を組み合わせ、思考の格散と収束を効果的に行わせている。これならば小学校2年生でも十分に自分の考えを整理することができます。「マインドマップ」は日本での授業活用のスタート地点に立ったばかりですから、今回のH先生の実践は、とても素晴らしい前例となって、これからの授業開発に結び付くだろうと感じます。



さて、研究発表会というのは、どこの学校でも体育館での全体発表会が行われます。そして著名な方に1時間ほどの講演をしていただくのが習わしになっています。この日の講演は、女優の冨士真奈美さんが講師でした。

冨士さんは「俳句」の楽しさについて語ってくれました。
その話の中でも、「句会」を開くことで得られる「句友」のつながりが、人生をとても豊かにしてくれることをしみじみと語ってくれました。

実は私の学校でも、つい先日、職員室内で句会が開かれたのです。
教職員全員が秋の俳句を詠み、誰が読んだか分からないようにまとめた投票用紙で、全員で選句を行い、「天」「地」「人」の三賞を選んだのです。三賞に選ばれた先生には校長先生がスポンサーとなって「校長賞」が出されることになっていたので、みんな一生懸命に考えて創っていました。

この「職員室句会」は忙しい仕事の合間に、心の潤いをくれましたねぇ。みんなの笑顔を引き出してくれました。俳句の句会は、確かに人生を豊かにしてくれると体験できました。ちなみに私の創った俳句は「地」賞に選んでいただけました。すご~く嬉しい気分でした。こんな句です。

秋の雲 高さ測れし スカイツリー

来年度から国語の教科書でも俳句が大きく取り扱われますので、学校としても「俳句指導計画」を今年度中に作り上げ、来年度から全校をあげて取り組んでいけるようにしたいと準備をしています。

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ここはどこ―時に空飛ぶ三人組 (文春文庫)
岸田 今日子,冨士 真奈美,吉行 和子
文藝春秋


わたしはだれ?―桜となって踊りけり
岸田 今日子,冨士 真奈美,吉行 和子
集英社
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美しい言葉を使う小学生プロジェクト

12月1日(水)、自校の5年生が区小研の研究授業を行いました。総合的な学習の時間を使って「美しい言葉を使う5年生プロジェクト(略してBLP5)」という、これまでまったく教育実践のない授業に挑戦したのです。

この授業を企画したのは、教員経験4年目の若手にして、私と同じ「マインドマップ公認フェロー」でもあるH教諭でした。H教諭は昨年、私と同じ学年を組んでいたので、授業力・生活指導力について徹底的に訓練をしてきました。今回、まったく「0」の地点から授業を組み立てていくだけの力を発揮してくれましたので、いよいよ教師としてひとり立ちできる力がついたと言っても良いだろうと思えます。

本人の考え方について、こちらにリンクしておきます。

「美しい言葉を使う5年生プロジェクト!」

「続・美しい言葉を使う5年生プロジェクト」

「降りてきた!!『美しい言葉リーダーへの道』案」

「すてきな言葉と出会う祭典ー「言葉の力」を東京からー@東京国際フォーラム」



この研究授業に講師としてお呼びしたのは、多くの学校を授業キャラバンし「十分間俳句」の指導を続けておられる教育委員会学校支援課相談員の小山正見先生です。小山先生は近々、俳句指導の本も出版されます。教員は一冊持っていても良いと思います。特に国語の教員には強くお薦めします。

どの子もできる10分間俳句
小山 正見
学事出版


研究協議会での小山先生のご指導を要点だけでも書き残しておきます。

・美しい言葉を使うことが縦の糸ならば、自分を見つめる視点を持てることが横の糸である。この縦横の糸がつむぎ合ってこそ、美しい言葉とは何なのかを子どもたちが理解していくだろう。

・「あったか言葉」が本当にあったかいのかを決めるのは、その言葉を話している人ではない。それを決めるのは言われる側の意識である。言われて嬉しかった体験があるからこそ「あったか言葉」とは何なのかを理解することができるのだ。

・同じ言葉を言っているのに、相手や状況が変わると「あったか言葉」に聞こえなくなる場合がある。だから聞く側の体験に基づく意識が大事になってくる。

・「あったか言葉」をあったかいと認識するためのエネルギーは、言われて嬉しかったという「思い」や「体験」が源泉となっている。

・「あったか言葉」を言われて、素敵な言葉だと認識する感受性を心に育てていかないとならない。また、教師自身もそのような感受性のアンテナを敏感にしておかなくてはならない。

・「あったか言葉」は人間の心と心をつなぐものであり、こうしたプロジェクトに取り組むことは、とても大事なことである。

・「チクチク言葉」を言わないようにするという授業はけっこうある。しかし、この「チクチク」というマイナス言葉を考えていくと、管理主義になりかねない。

・もしも、言葉を点数換算するとしたら、「あったか言葉」は加点法であり、使えば使うだけ点数がどんどん良くなっていく。200点、300点・・・と、どんどん点数が伸びていくタイプ。「チックチク言葉」は減点法であり、この言葉を使うことによって、100点からマイナス思考で点数が減っていく。自他を傷つける「チクチク言葉」を使わないことが100点であり、それ以上がない。そう考えると、「あったか言葉」がいかに大事か分かる。

・言葉というのは情報量が少ない方が、早くイメージ化することができる。イメージ化したものは共有することができる。集団の構成員がイメージを共有できれば大きな力となる。

・言葉づかいの指導も、子どもたちの日常的な動きにしたいのであれば、スローガンにして単純化した方が良い。誰もが覚えられる言葉に象徴化する。たとえば、私の校長時代には学校のスローガンとして「元気なあいさつ八名川スマイル」とし、子どもたちもみんな覚えていた。「いつでも元気なスマイル」を「いつでも」「どこでも」「何度でも」見せること。このイメージを全員が共有していた。

・ぜひ、他学年にも伝えられるように、子どもたちが「判断」し、「計画」し、「行動」していけるように指導していってほしい。


【参考のために】
私自身が言葉に視点をあてて指導した記事がありますので、リンクしておきます。
どうぞご覧ください。

「言葉をたくさん知っているとどんな大人になるか?【マインドマップ活用授業】」

「言葉に視点をあてた授業 【マインドマップ活用授業】」

「言葉を知らないとどういう大人になるだろうか? 【マインドマップ活用授業】」

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小山先生から、「マインドマップは俳句の指導にも使えるかもしれない」というお言葉をいただきました。
確かにマインドマップフェローの先生の中には、すでに俳句の指導で効果をあげている方もいます。
「作文すらすらワーク」の中には、俳句につなげる書き方は入れませんでしたが、私自身が来週の授業で実践してみる予定です。
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新美南吉を研究中

新美南吉童話の本質と世界
北 吉郎
双文社出版


ごんぎつねのふるさと―新美南吉の生涯
大石 源三
エフエー出版


今、「ごんぎつね」の指導にあたって、新美南吉の研究に没頭しています。

調べれば調べるほど、南吉の悲しい人生が心に迫ってきます。

少年時代に母親を失った体験が、南吉の心の中に障害として残った。心の中にポッカリと空いた「寂しい空洞」を埋めるために、南吉は創造力を働かせる童話の世界に「愛情」を求めた。これは神田昌典氏が書いた小説『成功者の告白』の中にある、成功とその裏にあるマイナス要素のバランス関係を想起する、「天秤の関係」に当てはまります。

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語
神田 昌典
講談社


南吉作品を読んでいく時、27歳で「死を自覚」した1月の前と後では、作風に激変を起こしていることが分かります。

死との格闘を3ヶ月間した末に、ある確信に至ったことが予想されています。そのことを書き出すと、何度も連載をしないといけないほど深い内容になってしましますので、ブログでは書かないようにします。

興味のある方は、ここに紹介した本を読んでみて下さい。



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マインドマップで作文すらすらワーク (ドラゼミ・ドラネットブックス)
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「マインドマップで作文すらすらワーク」の中には、新美南吉の晩年の作品である「狐」を例にした「読書感想文の書き方マインドマップ」が紹介されています。
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フィンランドメソッド研究

「フィンランド・メソッド」で我が子の学力を伸ばす―家庭で育てる“5つの力” (家庭人BOOKS)
河野 庸介
主婦の友社


子どもの「頭のよさ」を引き出す フィンランド式教育法
小林 朝夫
青春出版社


今年の最終四半期。「マインドマップフェロー」としての私に与えられた大きな役目があります。それは他校の校内研究のお手伝いです。その学校では校長先生の強い思いから、「フィンランドメソッド」的な教育方法を取り入れられないかとしています。

なぜ私がそのお手伝いをすることになったのかという理由は次の通りです。

フィンランドで取り組まれている「カルタ」という手法はマインドマップが元になっている。これを活用することによって、フィンランドでは「PISA型読解力」で世界をリードしている。そこで、日本ではまだまだ普及されているとはいえないけれども、その効果がジワジワと広がりつつあるマインドマップを活用したい。しかしこの道具を学校教育に活用した例がほとんどない現状がある。誰か講師はいないか?というところから、私に声をかけていただいたわけです。

とはいえ、私はフィンランド教育研究の専門家でもありませんし、国語教育の専門家でもありません。正直なところ知識量が足りません。なので、適切なアドバイスを行えるかどうか自分でも手探り状態です。そこで暇さえあれば学んでいる最中です。


これまでに把握したフィンランドメソッドの一端を自分の記憶を整理するためにも記事にします。



【フィンランドメソッドで伸ばそうとしている5つの力】

日本で紹介されているフィンランドメソッドで伸ばそうとしている能力は「発想力」「論理的思考力」「表現力」「批判的思考力」「コミュニケーション能力」である。

(1)発想力
自分の考えを広げるためのツールとして活用されているのがマインドマップの考え方を元にしている「アヤトゥス・カルタ」である。中心イメージから放射状に発想を広げていく。言葉の連想から自分の脳の中から出てくるものが何なのか、ひとつひとつの考えがどうつながっているのかを紙の上に明らかにしていく。
何も与えずに、ただ「考えてみましょう。」と指示を出すから人間は思考に苦しむのである。だから、適切なツールを身につけさせることをはじめに徹底し、「守」「破」「離」の過程を通して完全に自分のものになるまで使っていく。

(2)論理的思考力
世界的に起こっている諸問題を解決していくために必要な力として「PISA型」の思考力を伸ばすということが定着してきた。PISA型の思考過程は「情報の取り出し」⇒「解釈」⇒「熟考」⇒「評価」⇒「発信」となる。このことについての詳しい解説はしないでおく。
論理的思考力を伸ばすために必要なことは、「根拠を明らかにする」という姿勢である。そのためにフィンランドの親は、子どもが小さい頃からしつこいくらいに「なぜなら~」「どうしてかというと~」「だから~」「たとえば~」「つまり~」という思考の型を当てはめて会話をしていると紹介されている。(私が実際に見たわけではないので、ぜひフィンランドの方に直接聞けたらありがたいのだが・・・)
倫理的思考力を鍛えるためには、「常に考えている」という姿勢、モチベーションを保ち続けることが大きなパワーとなる。24時間常に何かを考えている習慣を身につけたい。歩いていても、遊んでいても、街の中や周囲の人、生き物などに新しい気づきを発見し、「なんだろう?」「なぜだろう?」と考える。こうした積み重ねがあってこそ、論理的思考力が鍛えられる。

(3)批判的思考力
この思考力について、私は自分の実践というか、自分の信念から記述したいと思います。
私は世の中に流れている情報に対して、まずはじめにこのような疑問を投げかけるようにしています。

「本当にそうなのか?」
「何のためにそういうことをするのか?」
「そのように主張している根拠は何なのか?」

ということです。
これまでの人類が体験することのなかった「情報過多の時代」になっている現在、そして未来です。従来の価値観が翌日にはひっくり返ってもおかしくはありません。私の職員室の机上には「常識を疑え!」「何のためかを常に問え」という言葉を書いてはってあります。子どもたちにも批判的に考えて、物事の本質に迫っていくような能力を鍛えておく必要はあると思います。

(4)表現力
自分の考えを表現する時に必要な意識があります。
「相手意識」「目的意識」の二つです。言いかえれば、誰に伝えるのか、何のために伝えるのかということです。

このことについて江東区の情報教育部では、昨年度から授業研究してきました。自分の思いを伝える相手が決まれば、当然、目的意識も決まってきます。つまり「相手意識」が一番大事だと考えてきました。

例えば、過去4年間、私は学校サイトの中に、「キッズブログ」を設置して、子どもたちに文章を書かせてきました。ブログに自分の文章を載せるということは「全人類」が相手である。いつどこのだれが目にするか分からない。だから恥ずかしい文章を載せるわけにはいかない。そうすると、推敲に推敲を重ねて、「これで大丈夫!」というレベルまでにしないと発表もできないということになります。

このような「相手意識」は、子どもたちの表現力を確実に向上させます。

多くの学校の2年生が取り組んでいることがあります。「生活科」での体験を1年生に伝えるという活動です。
伝える内容は、「生き物の飼い方」「植物の育て方」「学校の様子」「街の中の宝物」「楽しい遊び方」など様々ありますが、1つ年下の1年生に教えるという「相手意識」は、2年生の子どもたちを実に大きく育ててくれます。

フィンランドメソッドの中の表現力には、「型」を教えるということもあるようですが、今回の記事では、私が何年も実践してきた「相手意識」にしぼって書いてみました。

(5)コミュニケーション能力
日本の子どもたち、否、教員でさえも苦手としている課題なのでしょう。しかし、ここは簡単に書いておきます。

私は多くのコミュニケーション能力の中で一番にあげたいのは「質問力」です。効果的な質問をすることによって、相手の長所を引き出し、有意義な対話を生み出す能力のことを「質問力」としたいと思います。

ソクラテスしかし、ブッダしかり、キリストしかし、孔子しかり、マホメットしかり、偉人・賢人としてその名を歴史に刻んできた方々は皆、質問や問いかけをして弟子に考えさせる名人です。相手の機根に応じて適切な質問を発し、答えを引き出し、行動化する。また、逆に弟子が師匠に質問をし、それに答えていった名言の数々が、経典となって長い年月がたっても伝えられている。

我々の日常生活には、これほどの質問力・解答力を必要とはしないでしょうが、新しいものを生み出すエネルギーになるのは「質問力」というコミュニケーション能力だと私は感じています。



以上、5つの能力について簡単にまとめてみましたが、今回、フィンランドの教育について学んでみて、最も強く心に残ったことが他にあります。それは民衆の支持率80%以上という驚異的な信頼を勝ち取っている女性大統領、タルヤ・ハロネンさんの言葉です。

「フィンランドの子どもたちは、フィンランド国民全員で育てる」

国のリーダーが、ここまで教育に力を注げば、当然、成果はあがることでしょう。国の違いはあるので、日本ではこんなに簡単に教育スローガンはできないかもしれませんが、それでもやはり「日本の教育はこうなんだ!」というスローガン的なものがあっても良いのではないかと私は思いました。


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