耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

“遺伝子組み換え食品”をあなたは食べていませんか?

2007-10-30 08:58:56 | Weblog
 「因縁の対決」などと騒がれた過日の予算委員会における福田首相と田中真紀子議員の討論を見ていたら、このブログでもふれた(3月17日『行き先に見える“食糧難”』:http://blog.goo.ne.jp/inemotoyama/d/20070317)ことのある作物の“タネ”について、田中真紀子議員が数種類の市販商品をかかげて「これはみんな外国の“タネ”だが、首相は承知しているか」と尋ね、首相は「知りませんでした」と答えていた。花屋やホームセンターあるいは農協(JA)などはもちろん、信頼できる古い“タネ物屋”でも、田中真紀子議員が言うように“タネ”はアメリカを主とした外国産で、わが国固有の大根の“タネ”など探してもなかなか見つからない。

 予算委員会の折角の討論も、なんでこうなったかつまびらかにされず仕舞いだったが、新鮮で安全な野菜づくりに取り組んでいる当方からすれば、まず“タネ”の確保が頭痛の“タネ”なのである。しかも、この“タネ”が「遺伝子組み換え」されているのだから話はますます厄介なのだ。

 「グリーンピース・ジャパン」発行の『トゥルーフ-ド・ガイド(True Food Guide)~食べていませんか? 遺伝子組み換え食品』によれば、「遺伝子組み換え食品」を次のように説明している。

 <ひとつの生物から遺伝子を取り出し、他の生命体に導入して、今まで自然界に存在しなかった生命体を作り出すのが、遺伝子組み換え(GM:Genetic Modification)技術で、そこから作り出された生命体が遺伝子組み換え生物(GMO:Genetically Modified Organism)です。

 バクテリア、ウイルス、植物、動物などから取り出した遺伝子が、大豆、米、パパイヤ、トウモロコシ、ナタネ、綿などの遺伝子に組み込まれます。この遺伝子組み換え技術で、特定の害虫に強い性質(害虫殺虫性)を持つ作物や、特定の除草剤の影響を受けない性質(除草剤耐性)を持つ作物が作り出されています。

 こうした遺伝子組み換え作物や、その作物を原料として使っている食品が遺伝子組み換え食品です。>


 「遺伝子組み換え食品」の安全性に関しては、“科学的”な結論が出ていないといわれているが、わが国(厚生労働省)は原則的に「遺伝子組み換え作物」を否定しない立場をとっているとみていいだろう。ただ、厚労省は2001(平成13)年4月1日「食品衛生法施行規則」を改正して「遺伝子組換え食品に係る表示の基準」を「食品およびその加工品について、以下の区分により表示を行うこと。」とし、「遺伝子組換え」「遺伝子組換え不分別」「遺伝子組換えでない」ことの表示を新たに義務付けた。

 参照:「厚労省ホームページ」http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/

 『トゥルーフード・ガイド』は国のこの規制措置を批判している。

 <現在の日本の法律では、遺伝子組み換え原料を使用した商品への表示義務が非常にゆるく設定されています。そもそも、原材料の3番目までしか表示義務がなく、遺伝子組み換え原料が使われていても、そのように表示する必要がないもの(油・醤油などの食品や家畜への飼料)や、基準があっても含まれる量が5%以上でない限り表示しなくてもよいもの(大豆・トウモロコシ・ナタネを原料とした食品)があるのです。
 さらに、5%未満の基準を満たしていれば「遺伝子組み換えではありません」と表示することが可能なため、表示に頼って買い物をしても、遺伝子組み換え食品を避けることができないのが現状です。
 この日本のゆるい法規制が、多くの食品に遺伝子組み換え原料の使用を許してしまっているのです。>

 「遺伝子組換え食品」を見分けるにはどうしたらいいか、という消費者の要望からこの「ガイドブック」はつくられた。【トゥルーフード】とは何か、次の三つをあげている。

① 遺伝子組み換え原料を使っていない食品です
② 環境とわたしたちの健康をまもることにつながる食品です
③ 持続可能な農業を支援する食品です

 グリーンピースは、遺伝子組み換えでない商品をあきらかにするために、2006年5月19日から主要食品会社へ書面や電話によるアンケートを実施し、その結果を独自の評価システムにより商品を【グリーン】と【レッド】に分類、手のひらサイズの「ガイドブック」にまとめたのである。内容は「主食とおかず系」「調味料系」「嗜好品系」に分け、たとえば「調味料系」の「植物油(マーガリンを含む)」の項をみれば「ごま油、ひまわり油、オリーブオイルは遺伝子組み換えではありません」との添え書きがあって、【グリーン】2商品と【レッド】20商品があげられている。醤油や味噌、菓子類やアイスクリームなど他品目にわたって記載されているので、「安全」志向の消費者には喜ばれるだろう。

 『トゥルーフード・ガイド』については次で詳しく知ることができる。

 「グリーンピース・ジャパン」:http://www.greenpeace.or.jp/


 さて、疑問なのはいったい“だれが開発しているのか”である。この「ガイドブック」にはこう書かれている。

 <世界の遺伝子組み換え作物の90%以上はアメリカに拠点を置くモンサント社という農業化学大手企業が開発しています。

 モンサント社はアメリカ政府から多大の支援を受け、ベトナム戦争中には米軍が撒布した枯葉剤(Agent Orange)を生産したり、1976年に使用禁止になった有害なPCB(ポリ塩化ビフェニル)を生産したりしていました。

 モンサント社の他には、シンジェンタ社(本社スイス)、バイエル・クロップサイエンス社(本社ドイツ)、デュポン社(本社アメリカ)などがあります。

 これらの会社は、開発した遺伝子組み換え種子の特許を保持しています。このため、遺伝子組み換え作物を育てる企業の農地から、隣接する遺伝子組み換え作物を扱っていない農家へ遺伝子組み換え種子が紛れ込み、その農家側が特許を持つ企業から訴えられるという事態が起こっています。

 遺伝子組み換えは、人類が農業を始めて以来築き上げてきた地域農業の権利を脅かし、農業を根本的に変質させ、そして環境も破壊しています。>


 「科学」が人間に多大の恩恵をもたらしたことに異論はないだろう。いま使っているこのパソコンだって、まるで「魔法」のような仕掛けを持った「代物(しろもの)」で、生活の必需品になっている。だが、「光」には「影」がある。インターネットの世界で犯罪や事件が頻発しているのも「影」の部分とみてよい。医学の先端技術である「移植」や夢のエネルギーといわれる「原子力」もいまだ不分明な部分が多すぎる。まして、健全な発育・成長に欠かせない食物の「安全」が保障されないようでは人類の危機である。少なくとも「食」の問題は生産者の論理に依拠するのではなく、消費者が主導権を持ってしっかり掌握しておくべきだろう。

 参考までに「遺伝子組み換え」に関する情報をリンクしておく。

 「遺伝子組み換え食品いらないホームページ:http://www.no-gmo.org/

 「ニュースアーカイブ」:http://wiredvision.jp/archives/200402/2004022402.html


最新の画像もっと見る