耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

伊藤千尋著『反米大陸』~米国による中南米凌辱の歴史!

2009-07-19 10:22:46 | Weblog
 7月1日の記事でもふれたホンジュラスのクーデターはまだ、解決の目途は立っていない。国連をはじめ米州機構はクーデターを一斉に非難しているが、アメリカのオバマ政権もこれに同調している。だがオバマは、セラヤ大統領の無条件復帰を強く求めるのではなく、既成事実化したクーデター臨時政府との交渉を優先する姿勢らしい。伊藤千尋著『反米大陸―中南米がアメリカにつきつけたNO!』(集英社新書)を読めば、今度の「人形劇」を裏で操っているのが誰かおよそ想像がつく。

 
 同書巻末にある次の年表をご覧いただくと、建国以来続くアメリカという国の「資質」がくっきり浮かんでくるだろう。歴史は決して「ウソ」をつかない。

【年表――アメリカと中南米の関係史】

・1823(アメリカ):モンロー主義宣言
・1833(アルゼンチン):暴動が発生し米軍がブエノスアイレスに上陸、二週間駐留
・1835(ペルー):革命に動き。アメリカの権益擁護のため米海兵隊リマ、カヤオを占領
・1836(メキシコ):テキサス共和国がメキシコから独立
・1848(メキシコ):米墨戦争に敗れたメキシコは国土の半分をアメリカに割譲
・1852(アルゼンチン):政変に際してアメリカの権益擁護のため米海兵隊が上陸、首都に駐留
・1854(ニカラグア):アメリカ外交官を侮辱した仕返しと称して米海軍が港を砲撃、破壊
・1855(ウルグアイ):政変に際してアメリカの権益擁護のため米軍が上陸
・1856(ニカラグア):アメリカ人ウォーカーが内戦に乗じて大統領に就任
   (チリ):大陸会議でアメリカの侵略に対する防衛を協議
・1858(ウルグアイ):政変に際してアメリカの権益擁護のため米軍が上陸
・1859(パラグアイ):米艦艇がパラグアイを封鎖
・1865(コロンビア):パナマに革命の動き。アメリカの市民の財産と生命を守るとして米軍が上陸
・1867(ドミニカ共和国):アメリカがドミニカの併合を図り失敗、サマナ湾を租借
・1868(ウルグアイ):暴動に際してアメリカの権益のため米軍が出動
・1873(コロンビア):パナマ地域の権益をめぐり米軍が出動
・1885(コロンビア):パナマ鉄道が運ぶアメリカ製品の免税化を要求し米軍が上陸
・1890(アルゼンチン):アメリカ領事館保護のため米海兵隊が上陸
・1891(ハイチ):米海軍艦艇がハイチ沿岸を封鎖、湾の譲渡を迫る
   (チリ):暴動に際して公使館保護のため米軍が出動
・1894(ブラジル):通商とアメリカの船舶を守ると称して米海軍がリオ・デ・ジャネイロに上陸
   (ニカラグア):革命に際してアメリカの権益擁護のため米軍が出動
・1895(コロンビア):武装集団の襲撃に対してアメリカの権益擁護のため米軍が出動
・1986(ニカラグア):政変に際してアメリカの権益擁護のために米軍が出動
・1898(キューバ):アメリカとスペインの間で米西戦争勃発
   (プエルトリコ):米海軍が占領
・1899(ニカラグア):米英海軍がカリブ海沿岸に上陸、一ヵ月駐留
・1900(プエルトリコ):アメリカがプエルトリコをアメリカの領土に編入
・1901(キューバ):アメリカがキューバ憲法にプラット修正を盛り込ませる
・1903(コロンビア):パナマ政権成立の動きに際して米軍が出動
   (ホンジュラス):政変に際してアメリカの権益擁護のため米海兵隊上陸
   (ドミニカ共和国):政変に際してアメリカの権益擁護のため米海兵隊が上陸
   (パナマ):独立。運河地帯の永久租借権獲得めざし米海兵隊が出動
・1904(ドミニカ共和国):革命の動きに米軍が出動
   (パナマ):叛乱の動きに米軍が出動
・1906(キューバ):革命の動きに米軍が出動、三年間占領
・1907(ホンジュラス):ニカラグアと戦争。米軍が出動し要地を占領
・1909(ニカラグア):ニカラグア左派の伸びを警戒して米海兵隊が上陸
・1910(ニカラグア):内戦に際してアメリカの権益擁護のために米軍が出動
・1911(ホンジュラス):内戦に際してアメリカの権益擁護のために米軍が出動
・1912(キューバ):アメリカの権益擁護のため米海兵隊が出動
   (ニカラグア):内戦の発生で米海兵隊がニカラグアを占領
   (ホンジュラス):アメリカの権益擁護のため米海兵隊が上陸
・1914(ハイチ):暴動に際して米軍が出動
   (ドミニカ共和国):反乱の動きに米海軍出動
   (メキシコ):米海兵隊がベラクルスを占領
・1915(ハイチ):米海兵隊が占領支配。1934年まで
・1916(ドミニカ共和国):反乱の動きに米軍が出動、24年まで駐留
・1917(キューバ):アメリカの権益擁護のため米軍が出動、22年まで駐留
・1919(ホンジュラス):革命の動きにアメリカの権益擁護のため米軍が出動
・1920(グアテマラ):内乱に際してアメリカの権益擁護のため米軍が出動
・1925(パナマ):ストに際して米軍が出動、多くの都市を占拠
・1926(ニカラグア):反政府暴動への弾圧を援助するため米海兵隊が上陸
・1933(ニカラグア):米海兵隊が上陸しサンディーノの革命運動を鎮圧
・1950(グアテマラ):アメリカに対抗するアルベンス政権が成立
・1954(グアテマラ):アルベンス政権がアメリカ支援の反政府軍侵攻で崩壊
・1959(キューバ):革命が成功
・1960(アメリカ):キューバへの禁輸を発表
・1961(キューバ):キューバとアメリカが国交断絶、ピッグス湾事件
   (ドミニカ共和国):アメリカがドミニカに経済制裁
   (アメリカ):ケネディ大統領が「進歩のための同盟」を提唱
・1962(キューバ):ミサイル危機。アメリカはキューバを海上封鎖
・1964(パナマ):反米暴動。パナマ政府がアメリカに運河条約の改定を要求し断交
・1965(ドミニカ共和国):革命の動きに際して米海兵隊4万人が出動、占領
・1968(グアテマラ):内戦の中、アメリカ大使が射殺される
・1969(南米諸国):各国で反米デモが続発
          ペルー、ボリビア政府はアメリカ系石油会社を接収
・1970(チリ):選挙により社会党のアジェンデ政権が誕生
   (ウルグアイ):都市ゲリラがアメリカ外交官を誘拐し射殺
・1973(チリ):クーデターでアジェンデ政権崩壊
・1977(アメリカ):カーター政権が発足。人権外交を展開
   (キューバ):アメリカとの緊張緩和。相互に代表部を設置
   (パナマ):アメリカと新運河条約に調印、運河返還が決まる
・1979(ニカラグア):サンディニスタ革命が成功
・1981(アメリカ):レーガン政権が発足
   (ニカラグア):アメリカが支援する反政府右派ゲリラにより内戦開始
・1982(アルゼンチン):フォークランド戦争。アメリカはアルゼンチンに経済制裁
・1983(グレナダ):米軍が侵攻
・1989(パナマ):米軍が侵攻。ノリエガ将軍を拉致
・1990(ニカラグア):内戦が終了。アメリカが経済制裁を解除
・1994(メキシコ):北米自由貿易協定(NAFTA)発効
          サバティスタ民族解放軍が武装蜂起
   (ハイチ):無秩序状態となりアメリカの権益擁護のため米軍が出動
・1996(キューバ):アメリカが制裁を強化するヘルムズ・バートン法を制定
・1998(ベネズエラ):チャベスが大統領選に勝利
・1999(パナマ):運河がアメリカからパナマに返還される
・2002(ブラジル):左派のルーラが大統領に当選
・2003(アルゼンチン):左派のキルチネルが大統領に当選
・2005(ウルグアイ):左派政権誕生
・2006(南米各地):チリ、ボリビア、ペルーで左派系政権誕生


 いまアメリカは、アフガニスタン、イラクを泥沼に陥れ、無辜の人民を大量虐殺している。かつての太平洋戦争は日本帝国の覇権主義が大きな要因であったにしろ、東京大空襲をはじめ主要都市の壊滅的な破壊と原爆投下による大量無差別虐殺も、上記年表が示す米国の伝統的「資質」と無関係ではあるまい。

 
 ホンジュラスのクーデター発生直後、キューバのフィデル・カストロが興味深い一文を記しているのが目に止まったので、ここに『禍福無門唯人所召』さんのブログをリンクさせていただいた。(無断引用をご了解ください)

 「クーデターに関するフィデルの考察」:http://memos-odawara.blog.so-net.ne.jp/2009-07-01


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