耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

“犯罪”は誰が取り締まるのか?

2007-10-28 10:55:34 | Weblog
 国の機能は錆び付いてしまって作動しなくなったのではないか。そう疑われても仕方がないような不始末が頻発している。酷いのは「薬害C型肝炎」被害である。「薬害エイズ」の教訓が全く生かされず、またも“不作為”の殺人・障害事件を起こしたのだ。「感染リスト隠蔽」当時の厚生労働大臣は公明党の坂口力。

 厚生労働省は社会保険庁のデタラメをはじめ、トヨタ、キャノンなど大手企業の「偽装請負」黙認などまるで“犯罪集団”の観さえある。農林水産省の「緑のオーナー制度」や国土交通省の「偽装建築」も“サギ”そのものだろう。しかも、いま話題の防衛省では「給油量」を隠蔽して過少報告し、余剰国費を米国に上納(?)。「ぼやき漫才」の人生幸朗が生きていたら「責任者出て来い!」で済まさないだろう。

 
 国の犯罪は目も当てられない状況だが、犯罪を「取り締まる」元締めの警察が組織ぐるみの犯罪を犯しているのだから開いた口がふさがらない。警察・検察によるでっち上げ逮捕の続発や「裏金」問題は組織犯罪というべきおぞましいものだ。

 警察の「裏金」作りは1984年に、警視監だった松橋忠光氏(故人)が自著『わが罪はつねにわが前にあり』(オリジン出版センター)で明らかにしたのが最初で、1990年代には、警視庁や熊本県、長崎県などで断片的に報道されていたという。2003年11月から約二年にわたって「裏金」報道を続けた北海道新聞は、警察の「犯罪」に始めて光を当てたものだった。

 参照:http://www5.hokkaido-np.co.jp/syakai/housyouhi/document/

 北海道の場合、告発人はすべて退職者OBだったが、愛媛県警の仙波敏郎氏は現職でありながら「裏金」の存在を告発し、組織的な嫌がらせを受けてきた。仙波敏郎氏について若干紹介しよう。

 仙波氏は58歳、2年前に告発にふみ切ったが、消防署長を刺殺し服役中の消防士の長男を刑務所に訪ね、「告発したら、もう面会に来れなくなるかも知れないが、いいか」と聞く。長男は「親父が最後まで自分の意志を貫き通すことを支援する。そのために、親父が面会に来れなくなってもかまわない」と言った。次男、三男も了承してくれた。刑務所の長男のことを最後まで気にかけてガンで逝った妻の墓前にも報告した。3歳の時に父をなくし、現在83歳の母がいるが、告発の翌日に生まれてはじめて母は携帯電話を買い、今でも毎朝電話がかかってくる。
 「生きとるか? 朝ごはんは食べとるか?」

 参照:JanJanニュース「警察の真実」http://www.news.janjan.jp/living/0710/0710274647/1.php
 
 これだけで、仙波敏郎という人物が彷彿とするだろう。
 
 やむを得ず、仙波敏郎氏は告発記者会見直後に「配転」などの処分を受けたのは不当だとして、愛媛県・愛媛県警本部を相手取って損害賠償請求訴訟(国賠訴訟)を松山地裁に起こした。その判決が去る9月11日に松山地裁であり、請求どおり100万円の損害賠償を認める原告全面勝訴をかちとったのである。

 参照:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/sosahi_fusei/ren127200709121679.html

  ところが、県はこの判決を不服として高松高裁に控訴する議案を県議会に提出、定数48のうち38を占める自民・公明・新政クラブの圧倒的多数で可決した。民主・社民は反対にまわったがこれはポーズだけで、一貫して追及の姿勢を崩さなかったのは共産・環境市民の二人だけだった。二人の主張のほんの一部を引く。

 佐々木泉(共産)=仙波巡査部長の配置転換処分を取り消した県人事委員会裁決、県警の再審請求の却下、さらに今回の敗訴と三連敗を喫したとして、「県警は裁判に熱中するのではなく、信頼回復と本来業務に邁進すべきだ。」

 阿部悦子(環境市民)=「県議会は県警の主張は繰り返し聞いているが、仙波巡査部長の話は聞いていない。県と県議会は機能不全に陥っている。判決は大方の県民が支持しており、政治不信の時代に県民の期待を裏切らないためにも控訴を取り止めるべきだ」

 参照:http://www.ehime-np.co.jp/rensai/sosahi_fusei/ren127200709221864.html

 なお、「仙波さんを支える会」のホームページを見れば、愛媛県政の歪んだ歴史を詳しく知ることができる。

 「仙波さんを支える会通信:http://ww7.enjoy.ne.jp/~j.depp.seven/
 
前にも引いたことがあるが、「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する」(イギリス歴史学者ジョン・アクトン)という有名な言葉がある。わが国において、これまで国家機関が犯した罪過が国民の前に包み隠さず明示され、真摯に反省と謝罪がなされ、責任者が特定されて断罪されたことがあっただろうか。個人のちまちました犯罪と違って、組織犯罪は「権力の腐敗」を象徴するものだ。この現状を放置しておいていいはずはなかろう。われわれは小さな声でもいいから、「非を非とする」声をあげ続けなければならない。


 
 『菜根譚』(洪自誠著/講談社学術文庫)第49「罪は必ず露見する」

 <肝、病を受くれば、則(すなわ)ち目視ること能(あた)わず。腎、病を受くれば、則ち耳聴くこと能わず。病は人の見ざる所に受けて、必ず人の共に見る所に発(あら)わる。故に君子は、罪を昭昭に得ることなからんと欲さば、先ず罪を冥冥に得ることなかれ。
 
 現代訳=肝臓が病気になると目が見えなくなるし、腎臓が病気になると耳が聞こえなくなる。このように病気というものは、先ず人に見えない身体の内部に起こり、そして必ずだれにでも見える身体の外部にあらわれてくる。
 だから、君子たるものは、人目につく所でわざわいを受けないようにしたいと思ったら、まず人目につかない所で罪を犯さないように心がけるべきである。>


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