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「グルジア」が「ジョージア」になったのは、日本にとってよいことなのか

2015年04月24日 05時47分35秒 | 時事放談: 海外編

グルジアの呼称が「ジョージア」に変更されました。

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グルジア:ジョージアに変更 日本も法施行「露離れ支援」
毎日新聞 2015年04月23日 20時53分(最終更新 04月23日 22時14分)

 日本政府は22日施行の法律で、旧ソ連のグルジアの国名を「ジョージア」に変えた。従来の呼び方はロシア語読みで、ジョージア側は近年の対露関係悪化から英語呼称への変更を求め、日本も同国の「ロシア離れ」を支援した形だ。ただ、当面は混乱も予想され、定着には時間がかかりそうだ。

 ジョージアのツィンツァゼ駐日大使は22日、東京都内の日本記者クラブで開いた自国映画の上映会に先立ち、「(名称を変えた)安倍晋三首相の決定を高く評価したい」とあいさつした。在日大使館は入り口のプレートをジョージア表記のものに付け替え、日本外務省も公式サイトの表記を一新した。

 ジョージアは自国語で「サカルトベロ」と呼ぶが、なじみがなく、1991年に旧ソ連から独立後、英語読みのジョージアで国連に登録した。日本や旧ソ連諸国など20カ国前後でグルジアと呼ばれてきたが、2008年に起きたロシアとの軍事衝突を受け、ロシア語の呼び方を嫌うジョージアは呼称の変更を要請。韓国が10年にジョージアを採用するなど動きが広がっていた。

 日本政府も数年にわたり検討の末、変更が妥当と判断。法案は国会で特に是非が審議されないまま成立した。ロシアからは抗議を受けていないという。日本では89年にビルマの国名をミャンマーに変えた例がある。

 ジョージアの使用に強制力はないが、地図を出版する昭文社は「次の改訂版の際に、新旧名を併記するかどうかを含め、読者の声を聞きながら決めていく」と説明する。一方、東京都にある米国南部ジョージア州の商務代表部は「同名になることで、混同されるかもしれない」と懸念する。日本でジョージアといえば缶コーヒーの銘柄を思い浮かべる人も多い。またジョージアはワインの産地として知られるが、ある輸入業者は「グルジアワインの方が響きが良かったのだが、国の決定だから仕方がない」と話す。【大前仁】

 【ことば】ジョージア

 南カフカス地域の黒海沿いにあり、1991年にソ連から独立。90年代初頭に領内のアブハジアと南オセチアで民族紛争が起き、両地域は事実上の独立状態にある。2003年の民主化運動(バラ革命)でシェワルナゼ大統領(元ソ連外相)が辞任に追い込まれ、親欧米のサーカシビリ氏が大統領に就任。08年8月に南オセチアをめぐりロシアと軍事衝突した。旧ソ連の独裁者スターリンの出身地でもある。人口約432万人。

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と、何やらめでたい変更のようですが、専門家は違った見方をしています。半年前の記事ですが、記録しておきましょう。

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ジョージアと呼ばれたいグルジアの気まぐれ
Georgia or Georgia?
要衝をにらむ地球儀外交を振り回すのは日本の官僚主義か外国のご都合主義か
河東哲夫(元外交官・外交アナリスト)
Newsweek 2014年10月31日(金)12時43分 

 先週、グルジアのマルグベラシビリ大統領が来日した際、安倍首相は日本政府がグルジアを「ジョージア」に改称することに応じる意向を示したという。

 名は体を表す。「グルジア」という言葉はロシア語に由来するので、ソ連から独立した後の95年、自らジョージアと名乗った。グルジア語では「サカルトベロ」と言うのだが、あえて英語名を名乗ることで、国際社会の主流に仲間入りしたかったのだろう。これまでロシアや中国と同じくこの国をグルジアと呼んできた日本が今になって改称に応ずるというからには何か深い訳がある? と思うのが人情だ。だが日本側の事情はわりと散文的なものだろう。

 相手が国名を変えたいならば、日本もすんなり応じればいいようなものだが、そう簡単な話ではない「在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律」など、グルジアという国名が出てくる法律を全部改正し、それに倣ってメディアも表記を統一するなど、手間が半端でない。なぜ変えなければならないのか、政府は内閣法制局に事細かに説明し、法改正を国会で通すために審議の時間も取らねばならない。法案が立て込んでいれば審議未了で終わってしまう。

 日本が専制国家ならば、首相の鶴の一声で法律や規則は簡単に変えられる。僕もロシアや中央アジアで勤務していたときは、これらの国の役人に散々言われた。「なんで、そんな簡単なことを日本はやってくれないのか。政治家が決めれば簡単にできるだろう。できないのは、政治家がうちを重視していないからだ」と。僕は、「いや日本は民主主義で、議会での審議が......」などと反論するのだが、すると相手から「そんなのは民主主義ではない。官僚主義だ」と言われ、突き詰めて考えると案外そうかも、と思ってしまったりもした。

振り回される日本外交

 日本の外交は難しい。本来は戦略に基づいてやるべきものだが、他国の名称を変えるのもままならない。外国から賓客をたくさん呼びたくても、こちらの時間と予算に制約される。首相や外相が外国へ行くのも国会審議に縛られて窮屈──というように、手続き上のもろもろのことが日本の「外交」や、日本が相手に与える印象を結構左右してしまう。日本は安倍首相の「地球儀を俯瞰する」戦略にのっとって、ロシアと中近東のはざまにある「戦略的要衝グルジア」に駒を進めようとしているのだろうが、またもや国名変更という「手続き」に振り回されてしまうかもしれない。

 外国は変わり身が早いグルジアもNATO、EU、ロシアの間をふらふらしている気味がある。また「グルジア」にする、いや本来の「サカルトベロ」がいい、と言い出すかもしれない

 いまグルジアに院政を敷いている実業家、イワニシビリ前首相はサーカシビリ前大統領の反ロ路線を批判して権力を握った人物だ。16年に行われる総選挙では、国名をグルジアに戻してプーチンが旗を振る「ユーラシア連合」に入ろうと主張する政党が出てこないとも限らない。

 面白い話を紹介しよう。08年8月、CNNはグルジアとロシアの軍事衝突を興奮交じりに伝えていた。「たった今、ロシア軍が『ジョージア』に侵入しました。兵火は......に迫っています」。するとCNN本社(ジョージア州アトランタ)の電話がけたたましく鳴った。地元ジョージア州の老婦人が息せき切って言う。「ロシア兵がジョージアに入ってきたって?! で、どこまで攻めてきているの?」

 国や人の名は、むやみに変えるものではない。ひょっとして、日本の民主主義(官僚主義)は、いい防波堤になっているのかもしれない。

[2014年11月 4日号掲載]

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元外務官僚らしい分析ですが、ポイントを衝いた発言です。外交たるもの、相手に振り回されるのではなく、自分の立ち位置をしっかりと維持することも大切ですから。

ただし、今回の変更は、ある意味では反ロシアというよりも、「グルジア」の呼称をまだ使っている中国や東欧と同列視されたくないという安倍政権の発想かもしれません(それを筆者は、「散文的」と呼ぶのかもしれませんが)。ともあれ、ジョージアとの友好関係の深化が、日本の国益の向上につながることを願いたいものです。

それにしても、1991年にジョージアが独立宣言を行った際に呼称を英語では「Republic of Georgia」と表記すると決めたとき、どうして日本は「ジョージア共和国」とせずに、「グルジア共和国」としたのでしょう。その辺のアヤを知りたいものです。それまでの「グルジア・ソビエト社会主義共和国」という呼称を引き継いだだけだというのでしょうが、これこそ官僚主義的決定に思えます。


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