「脚本家 桂志穂 血と薔薇は暗闇の映画」
「蔵の中」1981年 角川春樹事務所 監督:高林陽一 原作:横溝正史 脚本:桂千穂
雨の中、傘に落ちてくる蛇。そこから現実と虚構、男と女を行き来する幻想的な世界へ迷い込む。姉と弟の禁断の行為はシスコンの表出か。遠眼鏡で覗き込んだ先がに見える姿に刺激されみずからの世界が歪んでいく桂版「裏窓」
昭和初期、雑誌編集者の磯貝(中尾彬)のもとに、笛二と名乗る少年が強引に原稿を持ち込んできた。その中身『蔵の中』には、耳が不自由で肺を患っている姉・小雪(松原留美子)と笛二の不可思議なやりとりが記されていた……。
横溝正史原作の桂千穂脚本による耽美作品。
小雪(ニューハーフ松原留美子)は幼い頃の中耳炎が元で聾者に。台詞無い設定は彼女の演技を助けるためなのかも知れないが代わりに読心術使う笛二(山中康仁)の台詞回しが拙いので効果出ず。
この読心術が映画的演出でほとんど超能力。
遠眼鏡で覗く情事の様子をアフレコするのはかえって拙い口調が面白い。
蔵の中での姉弟の前半は辛いが、裏窓的な遠眼鏡からサイコ的結末への捻りは流石。中尾彬と吉行和子のドロドロ。
入れこ構造の現実と妄想の錯綜を切り裂くようなエンディングカットに震えた。
原作の良さなのか、脚本の良さなのか、原作未読だけれど恐らく後者と推察。原作も短編らしいので読んでみてもいいかも。
2021年5月
ラピュタ阿佐ヶ谷
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます