この3日間というもの、ほとんど横になって暮らした。
高血圧による頭のもやもやに加え、脊椎のずれによる神経圧迫痛、さらには胃腸障害の3重苦で、なんだか人生が嫌になっちゃったのである。
外に出たのは、生まれたばかりの牛の赤ちゃんの様子を見に行くくらい(額に白い紋様のある愛らしいメス。これで、わが家の牛は10頭の大所帯になった)。
野山を歩いているときにはすこぶる気分がいいのであるが、家に着くと途端に気分が重くなり、背中の痛みや胃の不調が始まる。
そこで、ハンモックに横たわり、山からの風を受けながら再び力なく目を閉じるのである。
*
すでに、煙草はやめた。
酒も、呑んでいない。
嫁が料理に気を使い、降圧に利くという生にんにくも欠かさない。
連日のスコールで山から引いた水道に濁りが入り出したので、飲み水も市販品に切り替えた。
*
朝には知り合いのモーピー(霊媒師)がやってきて、丸めた手のひらに呪文のようなものを吹き込みながら、荒々しいマッサージをしてくれる。
ついでに、胸や腹をさすって「痛いの痛いの飛んでけ~」みたいな仕草をするから、体の中から痛みや毒素を取り払ってくれているのだろう。
夕べにはクリスチャンの老婆がやってきて、私の背中にふれながら「あ、これは骨が痛んでいる」というご託宣。
老婆とは思えない力強さで、背中、両腕、両足をマッサージしてくれた。
*
それでも、なかなか気分はすぐれない。
背中の痛みは、去らない。
下痢は治まらず、以前のような食欲も戻らない。
*
はたと気づいたのは、家にいると絶え間なく押し寄せるストレスの存在であった。
まずは、嫁の過剰なる“心配症”である。
とにかく、日本人のように「黙って様子をみる」ということができない。
私が横になっていると、「すぐにチェンマイの病院に行こう」「入院したほうがいい」とうるさくて仕方がない。
「いまはチェンマイに出る元気はない。しばらく様子をみたいから、静かに寝かせてほしい」といっても、頭や腹や背中にタイガーバームを塗り付け、病人に対するにしては強すぎるマッサージをし、頬や額をさすり、「大丈夫?ああ、心配で食事も咽喉を通らない。ああ、私も病気になってしまう」と、本当にガリガリに痩せてしまうのだから、おちおち病気もできないのである。
次に、絶え間なくやってくる客人たちである。
朝、眠り足りない気分で目覚めると、男衆の大声がする。
顔を洗いに起きていくと、くだんのモーピーや隣家の息子、親戚などがすでに焼酎を飲んで酔っ払っている。
わが村では、客人がくると「まずは焼酎を振る舞う」というのが歓迎の鉄則であるから、主人が病気しようが不機嫌であろうが、嫁はかまわずに焼酎を買いに走る。
その後は、大盆を囲んでの賑やかな食事である。
体調がいいときはともかく、食欲もないこちらとしては「こいつら、いったい何を考えているんだ?」という怒りにつながり、当然血圧にはすこぶるよろしくない。
昨日は、この朝からの献杯が水タンクやビール瓶を鐘や太鼓代わりに打ち鳴らしての大宴会に発展し、「私から病気が移った」はずの嫁も親戚や甥っ子たちが歌う伝統音楽にのって楽しそうに踊り始めてしまった。
こうなると私も内心は唖然としながら、ただニコニコとその様子を眺めるしかない。
お開きになってベッドに倒れ込むと、再び嫁の「大丈夫?」攻勢である。
夏休みで雲霞のごとく押し寄せる子供たちのうるささは、以前にも書いたとおりだ。
ここには「プライバシー」の概念などはなく、すべてが開けっ広げで、長き年月にわたり亡きカミさんと共に静かな暮らしを営んできたこの身にとって、村の日常のすべてが過重な“ストレス”となっていることに改めて気がついたという次第である。
*
いまの一番の特効薬は“静けさ”なのだろうが、村の生活にこの特効薬を求めるのは不可能に近い。
夕べも、嫁と共に静かな川べりの散歩を楽しんだあとに家に戻ると、隣家で大喧嘩が始まり、私もその仲裁に駆り出されてしまった。
騒ぎが収まってハンモックに横たわると、玄関口で甥っ子のポーが私が入院したときに作ってくれた「魚のお守り」が風にひらひらと揺れている。
それを眺めているうちに、気分がすっと軽くなった。
ポーの将来の夢は、「医者になって阿片やアルコールに溺れがちなプルーたちを手術すること」だという。
ポーよ、将来といわず、今すぐうるさいプルー(カレン語でバカ)どもを手術してくれないか?
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高血圧による頭のもやもやに加え、脊椎のずれによる神経圧迫痛、さらには胃腸障害の3重苦で、なんだか人生が嫌になっちゃったのである。
外に出たのは、生まれたばかりの牛の赤ちゃんの様子を見に行くくらい(額に白い紋様のある愛らしいメス。これで、わが家の牛は10頭の大所帯になった)。
野山を歩いているときにはすこぶる気分がいいのであるが、家に着くと途端に気分が重くなり、背中の痛みや胃の不調が始まる。
そこで、ハンモックに横たわり、山からの風を受けながら再び力なく目を閉じるのである。
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すでに、煙草はやめた。
酒も、呑んでいない。
嫁が料理に気を使い、降圧に利くという生にんにくも欠かさない。
連日のスコールで山から引いた水道に濁りが入り出したので、飲み水も市販品に切り替えた。
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朝には知り合いのモーピー(霊媒師)がやってきて、丸めた手のひらに呪文のようなものを吹き込みながら、荒々しいマッサージをしてくれる。
ついでに、胸や腹をさすって「痛いの痛いの飛んでけ~」みたいな仕草をするから、体の中から痛みや毒素を取り払ってくれているのだろう。
夕べにはクリスチャンの老婆がやってきて、私の背中にふれながら「あ、これは骨が痛んでいる」というご託宣。
老婆とは思えない力強さで、背中、両腕、両足をマッサージしてくれた。
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それでも、なかなか気分はすぐれない。
背中の痛みは、去らない。
下痢は治まらず、以前のような食欲も戻らない。
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はたと気づいたのは、家にいると絶え間なく押し寄せるストレスの存在であった。
まずは、嫁の過剰なる“心配症”である。
とにかく、日本人のように「黙って様子をみる」ということができない。
私が横になっていると、「すぐにチェンマイの病院に行こう」「入院したほうがいい」とうるさくて仕方がない。
「いまはチェンマイに出る元気はない。しばらく様子をみたいから、静かに寝かせてほしい」といっても、頭や腹や背中にタイガーバームを塗り付け、病人に対するにしては強すぎるマッサージをし、頬や額をさすり、「大丈夫?ああ、心配で食事も咽喉を通らない。ああ、私も病気になってしまう」と、本当にガリガリに痩せてしまうのだから、おちおち病気もできないのである。
次に、絶え間なくやってくる客人たちである。
朝、眠り足りない気分で目覚めると、男衆の大声がする。
顔を洗いに起きていくと、くだんのモーピーや隣家の息子、親戚などがすでに焼酎を飲んで酔っ払っている。
わが村では、客人がくると「まずは焼酎を振る舞う」というのが歓迎の鉄則であるから、主人が病気しようが不機嫌であろうが、嫁はかまわずに焼酎を買いに走る。
その後は、大盆を囲んでの賑やかな食事である。
体調がいいときはともかく、食欲もないこちらとしては「こいつら、いったい何を考えているんだ?」という怒りにつながり、当然血圧にはすこぶるよろしくない。
昨日は、この朝からの献杯が水タンクやビール瓶を鐘や太鼓代わりに打ち鳴らしての大宴会に発展し、「私から病気が移った」はずの嫁も親戚や甥っ子たちが歌う伝統音楽にのって楽しそうに踊り始めてしまった。
こうなると私も内心は唖然としながら、ただニコニコとその様子を眺めるしかない。
お開きになってベッドに倒れ込むと、再び嫁の「大丈夫?」攻勢である。
夏休みで雲霞のごとく押し寄せる子供たちのうるささは、以前にも書いたとおりだ。
ここには「プライバシー」の概念などはなく、すべてが開けっ広げで、長き年月にわたり亡きカミさんと共に静かな暮らしを営んできたこの身にとって、村の日常のすべてが過重な“ストレス”となっていることに改めて気がついたという次第である。
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いまの一番の特効薬は“静けさ”なのだろうが、村の生活にこの特効薬を求めるのは不可能に近い。
夕べも、嫁と共に静かな川べりの散歩を楽しんだあとに家に戻ると、隣家で大喧嘩が始まり、私もその仲裁に駆り出されてしまった。
騒ぎが収まってハンモックに横たわると、玄関口で甥っ子のポーが私が入院したときに作ってくれた「魚のお守り」が風にひらひらと揺れている。
それを眺めているうちに、気分がすっと軽くなった。
ポーの将来の夢は、「医者になって阿片やアルコールに溺れがちなプルーたちを手術すること」だという。
ポーよ、将来といわず、今すぐうるさいプルー(カレン語でバカ)どもを手術してくれないか?
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私は背中が痛くなったことがあります。
いろいろ考えて、ホントいろいろ考えて、はたと気が付きました。
ボンボンベッドです。
真ん中で折りたためてベッド。
背中が曲がってゆったり気持ちがいい。
ハンモックはからだが沈んでしまうのでは、まったく素人考えですが・・・・
こんな記事を読みました。
チェンマイ県オムコイ郡50周年行事開催
チェンマイ県オムコイ郡は今年2008年が郡創立50周年となり、それを祝って今年2月からオムコイ・ミニマラソンなどの様々な記念行事を行なっている。そして5月4日には「第1回オムコイ・マウンテンバイク大会」を開催。その後、5月から6月にかけてはタイ国内では唯一となっている「象が田んぼを耕す」観光イベントが行なわれる。7月にはモエタイ大会、11月8日~12日はローイクラトン祭りなどを50周年行事として盛大に行なうことになっている。
チェンマイ・田舎・新明天庵だより チェンマイ県オムコイ郡50周年行事開催
http://chaocnx.seesaa.net/article/94841201.html#more
「象が田んぼを耕すイベント」は、私もぜひ見てみたいと思っています。