ルアンプラバーンの町を歩いていると、「一緒に川を下る人、求む」という英語の文字が目に飛び込んできた。
そこは旅行会社の店先で、カヤックツアーを企画したのだけれど頭数が揃わないらしい。
話を聞いてみると、2つのコースがあって、ひとつは渓谷に分け入ってレベル2~3(かなりの大波あり)に挑むもの、ひとつはレベル1~2の初級者コースということだった。
もちろん、レベル3の大波に食指が動いたが、カヌーを漕ぐのはおそらく1年ぶりだ。
しかも、パーイのコテージでラーと取っ組み合いをしたときに傷めたらしい右胸の痛みが、まだかなり激しい。
沈(沈没)したときに眼鏡の流失を防ぐ眼鏡止めもなく、ここは大人しく初級者コースで体慣らしをするのが妥当だと考えた。
*
下るのは、メコン川に流れ込む支流である。
だが、車で1時間近くもさかのぼったというのに、川幅は広く流れはゆったりとしている。
しかも、川の水は真っ赤、使う船はガイドと共有のタンデム(2人艇)である。
川下りの醍醐味には欠けるが、ここはラオス、止むを得まい。
もう1艇のオランダ娘たちと共に流れに乗ると、意外に流れは早いことが分かった。
大河らしく、ところどころに強い渦巻きもあり、なかなかあなどれない。
前に座ったガイドの漕ぎっぷりは半ば素人で、これでオランダ娘たちが沈したらレスキューには手間取るだろうな、とため息が出た。
まわりの風景は、スローボートで下ってきたメコン川とほとんど変わりがない。
見えるのは、空と雲と山と川だけである。
午前中に、1箇所だけレベル3に近い大きな落ち込みに遭遇した。
落ち込んだ途端波に喰われてカヤックが傾くと、なんとガイドが漕ぐ手を止めて「沈脱」の構えに入っている。
呆れて「漕げ、漕げ」と怒鳴るが固まったままなので、やむなくひとりで漕ぎぬけた。
怒りよりも、笑いがこみ上げてくる。
オランダ娘たちが沈したら、本当にどうする気だったのだろう。
以降は凡庸な流れが続いたが、昼食のために立ち寄った川辺の村は、伝統的な家の構えや暮らしぶりがそのまま残っており、とても興味深かった。
放し飼いの鶏やあひる、岸辺の傾斜を利用した厨房や豚舎、果樹畑、そして水辺で歓声をあげる?川ガキ?たち・・・。
そこには、日本の?川の民?たちが忘れてしまった何かが、今も着実に息づいていた。
川ガキたちの歓声に誘われて、私も真っ赤な水の中に泳ぎだした。
午後は1時間ほど漕いだところで、目前に寧猛な雨雲が迫ってきたので、ガイドがツアーの中止を宣言した。
岸辺に寄せると、5人の川ガキたちがカヌーを取り囲んだ。
?サバイディー(こんにちは)?
タイ語の「機嫌がいい、元気だ」という言葉が、ここでは挨拶語だ。
川下りのあとには、とてもふさわしい。
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そこは旅行会社の店先で、カヤックツアーを企画したのだけれど頭数が揃わないらしい。
話を聞いてみると、2つのコースがあって、ひとつは渓谷に分け入ってレベル2~3(かなりの大波あり)に挑むもの、ひとつはレベル1~2の初級者コースということだった。
もちろん、レベル3の大波に食指が動いたが、カヌーを漕ぐのはおそらく1年ぶりだ。
しかも、パーイのコテージでラーと取っ組み合いをしたときに傷めたらしい右胸の痛みが、まだかなり激しい。
沈(沈没)したときに眼鏡の流失を防ぐ眼鏡止めもなく、ここは大人しく初級者コースで体慣らしをするのが妥当だと考えた。
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下るのは、メコン川に流れ込む支流である。
だが、車で1時間近くもさかのぼったというのに、川幅は広く流れはゆったりとしている。
しかも、川の水は真っ赤、使う船はガイドと共有のタンデム(2人艇)である。
川下りの醍醐味には欠けるが、ここはラオス、止むを得まい。
もう1艇のオランダ娘たちと共に流れに乗ると、意外に流れは早いことが分かった。
大河らしく、ところどころに強い渦巻きもあり、なかなかあなどれない。
前に座ったガイドの漕ぎっぷりは半ば素人で、これでオランダ娘たちが沈したらレスキューには手間取るだろうな、とため息が出た。
まわりの風景は、スローボートで下ってきたメコン川とほとんど変わりがない。
見えるのは、空と雲と山と川だけである。
午前中に、1箇所だけレベル3に近い大きな落ち込みに遭遇した。
落ち込んだ途端波に喰われてカヤックが傾くと、なんとガイドが漕ぐ手を止めて「沈脱」の構えに入っている。
呆れて「漕げ、漕げ」と怒鳴るが固まったままなので、やむなくひとりで漕ぎぬけた。
怒りよりも、笑いがこみ上げてくる。
オランダ娘たちが沈したら、本当にどうする気だったのだろう。
以降は凡庸な流れが続いたが、昼食のために立ち寄った川辺の村は、伝統的な家の構えや暮らしぶりがそのまま残っており、とても興味深かった。
放し飼いの鶏やあひる、岸辺の傾斜を利用した厨房や豚舎、果樹畑、そして水辺で歓声をあげる?川ガキ?たち・・・。
そこには、日本の?川の民?たちが忘れてしまった何かが、今も着実に息づいていた。
川ガキたちの歓声に誘われて、私も真っ赤な水の中に泳ぎだした。
午後は1時間ほど漕いだところで、目前に寧猛な雨雲が迫ってきたので、ガイドがツアーの中止を宣言した。
岸辺に寄せると、5人の川ガキたちがカヌーを取り囲んだ。
?サバイディー(こんにちは)?
タイ語の「機嫌がいい、元気だ」という言葉が、ここでは挨拶語だ。
川下りのあとには、とてもふさわしい。
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