2階のベランダから庭を眺め回して、のけぞるほど驚いた。
垣根のそばに、巨大な孟宗竹がにょっきりとそそり立っているではないか。
高さは隣家の2階の屋根をはるかに越え、しかも隣家の方にかなり傾いている。
車庫の向うに広がる竹やぶを仰ぐと、林立する竹の高さとほとんど変わらない。
つまり、完全に伸び切ってしまったのである。
これは、迂闊だった。
紅葉や棕櫚の木の陰に隠れて伸びてきたからでもあろうが、私自身がこのところ庭に目をやることがなかった。
いつもうつむき加減に歩いて、空を振り仰ぐこともなかったのである。
*
ノコギリを手に庭に出ると、改めてその太さと高さに圧倒される。
このまま根元を切ってしまえば、竹は確実に隣家の屋根や雨どいやテレビ用アンテナを直撃するだろう。
“なんとか、隣家に迷惑をかけずに切り倒す方法はないものだろうか?”
そう考えつつ、ためつすがめつしたものの、これはとても一人では手に負えそうもない。
煙草の吸い殻だけが、無駄に増えていった。
*
ふと思いついて、カヌー牽引用の細引きロープを引っ張り出した。
脚立を伸ばして立て掛け、かろうじて一番下の枝に引っかけることができた。
このロープを力の限り引っ張り、できるだけわが家の方に竹を呼び戻して紅葉の木に固定する。
そこまでは良かったのだが、ひとりの力ではここまでが限界だ。
さて、どうしたものかと思案投げ首していると、思わぬところから救世主が現れた。
当の隣家のご主人が、様子見にやってきたのである。
事情を話すと、彼も気にしていたのであろう、垣根を越えてさっそく助け船を出してくれた。
「私がロープを引っ張るから、あなたは根元にノコギリを入れてください」
だが、紅葉の枝が邪魔をしてなかなか竹をこちらに呼び戻せない。
そこで、再び脚立を伸ばし、紅葉の枝にノコギリを入れる。
「いい枝ぶりなのに、勿体ないねえ」
庭いじりの好きなご主人の言葉に、ホッと救われる思いだ。
再び彼にロープを引っ張ってもらい、太い竹の根元にノコギリを入れると、竹はもんどりうって草ぼうぼうのわが家の庭に倒れ落ちた。
「やあ、広い庭だねえ。こんなに広いとは知らなかった。だけど、勿体ないねえ、たまにしか帰ってこないなんて・・・。でも、タイに住んでるんなら仕方ないか・・・。おや、いい松もあるじゃない」
彼は、惨憺たるわが家の庭を眺めやり、いかにも惜しいという表情でひとりごちている。
*
ノコギリを手にしたついでに、生い茂った庭の木を次々に切り倒していった。
白梅、山茶花(さざんか)、木瓜(ぼけ)、臘梅(ろうばい)、藤、肥後椿・・・。
びっしりと足下を埋め尽くしたドクダミも、ノコギリで乱暴に刈り払う。
頭にあるのは、この夏にさらに繁殖する枝や蔓が三方を囲む隣家に迷惑をかけぬようにということだけである。
冬になれば、この旺盛な生命力もしばし眠りについてくれるだろう。
だが、車庫の脇に横たわる巨大な竹の姿を眺めていると、その楽観的な見通しも次第に萎えてくる。
いやはや。
嫁のラーの報告によれば、オムコイの家の庭でも再び雑草軍団が猛威をふるい始めたらしい。
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垣根のそばに、巨大な孟宗竹がにょっきりとそそり立っているではないか。
高さは隣家の2階の屋根をはるかに越え、しかも隣家の方にかなり傾いている。
車庫の向うに広がる竹やぶを仰ぐと、林立する竹の高さとほとんど変わらない。
つまり、完全に伸び切ってしまったのである。
これは、迂闊だった。
紅葉や棕櫚の木の陰に隠れて伸びてきたからでもあろうが、私自身がこのところ庭に目をやることがなかった。
いつもうつむき加減に歩いて、空を振り仰ぐこともなかったのである。
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ノコギリを手に庭に出ると、改めてその太さと高さに圧倒される。
このまま根元を切ってしまえば、竹は確実に隣家の屋根や雨どいやテレビ用アンテナを直撃するだろう。
“なんとか、隣家に迷惑をかけずに切り倒す方法はないものだろうか?”
そう考えつつ、ためつすがめつしたものの、これはとても一人では手に負えそうもない。
煙草の吸い殻だけが、無駄に増えていった。
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ふと思いついて、カヌー牽引用の細引きロープを引っ張り出した。
脚立を伸ばして立て掛け、かろうじて一番下の枝に引っかけることができた。
このロープを力の限り引っ張り、できるだけわが家の方に竹を呼び戻して紅葉の木に固定する。
そこまでは良かったのだが、ひとりの力ではここまでが限界だ。
さて、どうしたものかと思案投げ首していると、思わぬところから救世主が現れた。
当の隣家のご主人が、様子見にやってきたのである。
事情を話すと、彼も気にしていたのであろう、垣根を越えてさっそく助け船を出してくれた。
「私がロープを引っ張るから、あなたは根元にノコギリを入れてください」
だが、紅葉の枝が邪魔をしてなかなか竹をこちらに呼び戻せない。
そこで、再び脚立を伸ばし、紅葉の枝にノコギリを入れる。
「いい枝ぶりなのに、勿体ないねえ」
庭いじりの好きなご主人の言葉に、ホッと救われる思いだ。
再び彼にロープを引っ張ってもらい、太い竹の根元にノコギリを入れると、竹はもんどりうって草ぼうぼうのわが家の庭に倒れ落ちた。
「やあ、広い庭だねえ。こんなに広いとは知らなかった。だけど、勿体ないねえ、たまにしか帰ってこないなんて・・・。でも、タイに住んでるんなら仕方ないか・・・。おや、いい松もあるじゃない」
彼は、惨憺たるわが家の庭を眺めやり、いかにも惜しいという表情でひとりごちている。
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ノコギリを手にしたついでに、生い茂った庭の木を次々に切り倒していった。
白梅、山茶花(さざんか)、木瓜(ぼけ)、臘梅(ろうばい)、藤、肥後椿・・・。
びっしりと足下を埋め尽くしたドクダミも、ノコギリで乱暴に刈り払う。
頭にあるのは、この夏にさらに繁殖する枝や蔓が三方を囲む隣家に迷惑をかけぬようにということだけである。
冬になれば、この旺盛な生命力もしばし眠りについてくれるだろう。
だが、車庫の脇に横たわる巨大な竹の姿を眺めていると、その楽観的な見通しも次第に萎えてくる。
いやはや。
嫁のラーの報告によれば、オムコイの家の庭でも再び雑草軍団が猛威をふるい始めたらしい。
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