室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

スーパーウーマン

2006-07-18 00:27:51 | Weblog
 ロシア語通訳で、エッセイスト、小説家の米原万里著「必笑小咄のテクニック」を読んでいる。2002年から2003年にかけて「青春と読書」誌に連載されたエッセイに加筆して2005年に発刊されたものだ。様々な世界の小咄を特徴別に分類し、分析し、例題を作って、読み手にも手ほどきをしている。そして、合間に小泉首相の、何か変だな・・と思いながらも笑わされて、すり抜けられてしまう「レトリックを反転させるテクニック」を見事に指摘、分析して見せ、まるで、それが一番云いたくてこの本を書いたのでは?と思わされる程だ。
 殆ど移動中の電車内でしか本を読まない私には、笑いをこらえるのに大変苦労するのだが、そんな中から、世界各地を評論するのに最適の小咄をひとつ紹介したい。
~国連が加盟各国の国民に対してアンケート調査をした。「他の国が食糧不足に苦しんでいるという状況について、あなたのご意見をお聞かせください」という、一見単純きわまりない質問なのだが、世界各国で人々が回答不能に陥るという事態が発生した。その理由は以下の通り。アフリカの多くの国々では、「食糧」という概念を理解できない者が続出した。西欧諸国では、「不足」という概念を理解できない者が、とくに若い世代で多かった。社会主義諸国では、「意見」という概念を理解できない者が大半を占めた。そして、アメリカ合衆国では、ほとんどの国民が、「他の国の人々」という概念を理解できないということが判明した~
 つい、数週間前に、米原万里さんの早すぎる訃報を聞いて、とてもショックだった。1億人に一人しかいない才能の持ち主だったのに、残念だ。自分の運命を予感していたであろう最中に、こんな「笑いの本」の再編集をしていた程の、スケールの大きいスーパーウーマンだった。もう彼女の新しい本が生まれないのかと思うと、本当に残念だ。

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