白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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棋士の採用について・その3

2019年02月04日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
<本日の一言>
花粉の季節がやって来ました。
既に目の調子がおかしい気がします・・・。
しっかり対策して乗り切りたいですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
ずいぶん間が空いてしまいましたが、本日は棋士の採用シリーズの第3回です。
なお、第1回はこちら、第2回はこちらです。

<外国籍特別採用>
文字通り、外国籍の棋士が特例で入段できる制度ですね。
採用基準はその時々で変わってきたと思いますが、制度自体は昔からあったはずです。
現在の基準は、一言で言えば長期間院生Aクラスに定着できるぐらい、ということになるでしょう。

この制度の目的は、もちろん諸外国への囲碁の普及です。
よって、中国や韓国、台湾といった、既に囲碁が盛んな国の出身者は対象外です。
最近ではフィンランド出身のアンティトルマネン初段がこの制度で入段しましたね。
彼は兵役でしばらく祖国に帰っていましたが、最近復帰したようなので、今後の活躍が期待されます。

<英才特別採用推薦>
前回ご紹介した女流特別採用推薦と同様に、新しくできた制度ですね。
小学生の超有望株を、特別に入段させるというものです。
小学4年生の仲邑菫新初段は、この制度によって入段が決まりました。

この制度には色々と疑問の声もあるようです。
例えば「それだけ有望なら、一般枠で入段すれば良いのでは?」というものですね。
確かに、強い人が入段することは道理ではあります。

しかし、入段レースは熾烈な争いです。
例えば、東京本院の冬季棋士採用試験で、入段できる可能性が少しでもある人は10人を超えるでしょう。
その中での争いとなればどうしても運が絡んでくるので、実力1位、2位の人が入段枠を勝ち取れる保証は全くありません。
実際、10代半ばから入段候補と目されながらも5年、10年と入段を果たせず、ついに入段レースから脱落してしまうような人も少なくないのです。

もちろん、仲邑新初段の場合は才能が飛び抜けているので、1~2年あれば入段する可能性は高かったです。
ましてや、最終的に入段できない可能性は極めて低かったと言えるでしょう。
しかし、3年や5年足踏みしてしまうことは十分あり得ます。
そうなると仲邑新初段の棋力向上にブレーキがかかり、世界一という夢へのハードルも高くなってしまうことになります。
プロ入りが早い方が棋力向上に有利ということは、多くの棋士の共通見解です。

特定のプロ志望者を優遇すること、またごく一部の棋士がそれを決定していることには疑問の声もあって然るべきだと思います。
ただ、世の中理想論だけで回らないことも事実です。
このまま日本が世界の争いに加われず、世界一になるのが中国や韓国ばかりになってしまっては、日本だけでなく世界の囲碁界もつまらないものになってしまうでしょう。
数で勝負することは不可能ですから、天才の育成に力を入れることは有効な手段だと思います。


さて、今回で棋士の採用について一通り説明しました。
次回は正棋士と特別採用棋士の違いについて説明したいと思います。
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