白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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3子の布石

2016年08月10日 22時30分03秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は3子局の布石を題材にします(高段者向けかもしれません)。
置碁の布石は非常に重要です。
30手も行かないうちにもう黒が勝てない・・・というのは大袈裟ですが、かなり勝ちにくい碁になってしまうケースは多々あります。
同じぐらいの棋力の方の中でも置碁の勝率が大きく違う事がありますが、その原因の一つのに布石が挙げられます。

では3子局では何を重視して打ったら良いのでしょうか?
それはスピードです。
空き隅を与える3子局では、白に主導権を握られてしまうケースが多々あります。
狭い所に何手もかけている間に白にどんどん大場に先行され、いつの間にか碁盤全体が白石だらけ・・・。
誰しもそんな経験があるでしょう。
そうならないよう、広い所を積極的に押さえて行かなければいけません。
碁盤全体を眺めた時に常に黒石が多く見える、そんな展開が理想です。
それでは実戦例を見て行きましょう。



左上のカカリから定石でスタートしました。
全く問題はありません。





白1から上辺に根を下ろし、左下に先行・・・





そして白10までと進行しました。
これで黒は相当勝ちにくい碁になった、と言ったら驚かれるでしょうか?
しかしお互い特に弱い石はありませんし、地も大体釣り合っている事が分かります。
計算に入れていない右下隅があるので形勢はもちろん黒が有利ですが、3子置いたはずなのに
圧倒的に有利という感じがしませんね。
変な手は打っていないのに、何が原因なのでしょうか?





その答えは左上隅にありました。
形はそのままに手順を変えて見てみましょう。
いわゆる「手割り」という手法で、石の効率の判断法です。

白8までの形はお互いさほど不満が無いでしょう。
しかし黒9はどうでしょうか?
しっかり戸締りした形をさらに守った事になっています。
内側からノゾいた白10も悪手ですが、一手遅れた黒9よりは遥かに罪が軽いです。





では具体的にどうすれば良いかというと、2番目の図黒6では黒1などと大場に先行します。
白2、4と連絡されますが、2線の手なので気にする事はありません。
ここでまた先手になるので・・・





黒1など、さらに大場に先行します。
白2と連絡されてもまた2線の手、幾らも地は増えていません。
左上黒もAやBで眼を作る余地があって弱い石ではありません。
(もしこの判断が出来ていないと、スピード違反という事になってしまいます)
黒3とさらに大場に先行してしまいましょう。
こうなっては勝負あったという雰囲気です。
皆さんの碁には色々な事が起こるので、絶対勝てるとは限りませんが・・・





下辺がこんなに広大になっては、白はどこかに入らなければいけません。
しかし3子で打てる方が5子置いているようなものなので、どう転んでも黒が有利です。
一例として白1からの図を挙げておきますが、白の苦戦は明らかです。


如何でしたか?
3子の碁は30目確保していると考えるのでは無く、大場に3つ先行していると考えましょう。
そのリードを保つ事が出来れば、最後まで主導権を握って打てるでしょう。