白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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幽玄の間

2016年08月11日 23時51分12秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
木曜日は棋士の対局日です。
幽玄の間で中継された対局をご紹介しましょう。



鶴田和志三段(黒)対溝上知親九段戦です。

黒△と打ち込んで白△を狙った場面です。
白はどういう方針で行きますか?





「一間飛びに悪手無し」と言うように、白1は素直な手で形も良いのですが、状況を考えなければいけません。
周囲には黒石が多く、白の逃げ道がありません。
このような苦しい戦いは避けるべきです。





正面から戦うのが厳しい状況では、サバキを考えます。
「サバキはツケから」の格言通り、実戦は白1、3と「ツケ切り」ました。
サバキたい時の常套手段です。
この場合は白△が役に立ってくるのがポイントです。
既存の石を活用するのもサバキのコツです。





「切り違い一方を伸びよ」で黒1なら白2で黒1子を取ります。
黒3から白△の1子を取られるかもしれませんが、白は右側で楽に生きる事が出来ます。
白Aの狙いも残り、周囲が真っ黒の状況からすれば十分な成果です。





実戦は白を生かさないよう、黒1の伸び(下がり)でした。
ここで白はどうしますか?





白1と1子助けるのはいけません。
最初の図とほとんど同じ展開になってしまいます。
あくまで白の方針はサバキで、楽をしたい所です。





実戦は白1とツケました。
形だけ見ると、この手は黒AやBとハネ出されてバラバラになるので良くないとされています。
しかしこの場合はサバキの手筋になります。
右側でツケ切りを打っておいたのが手品の種です。





左側をハネ出して来れば白2の切りから一本道で進みます。
白8となって・・・おや?
黒△の石が邪魔になって来ましたね。





黒1と逃げるしかありませんが、一本道で白10まで進んで白のサバキは成功です。
白は難なく全体が連絡した上、中央に厚みを築く事が出来ました。





実戦は黒1と白2を交換してから黒3と右側をハネ出しました。
それには白4の引きが冷静な応手です。
次に黒Aと繋がれると白バラバラになりそうに見えますが・・・





白2、4が「例の筋」です。
白10まで、やはり綺麗に繋がる事が出来ます。
これも白成功です。





実戦は中央を厚くされるのを避け、黒1、3で白2を譲りました。
しかし白4に回り、左辺が大きくなっています。
黒は入って行きましたが、白の勢力圏での戦いです。
今度は白が正面から戦い、ポイントを挙げて押し切りました。


戦上手になるためには、状況に応じた戦い方が出来るようにならなければいけません。
本局は良いお手本になるでしょう。